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蒸気ロボット仮想戦史 ゴールドラッシュ&ゴールデンエイジ  作者: 白金桜花
第六章:大逆境!それでも私はくじけない!
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その8

飛空艇を使い、予定通りの陣形で奇襲や待ち伏せを警戒しながら私は目的地まで近づいていく。

キャリバーの視界からは2機の戦艦が見え、私は逆卍党の大型飛空艇の方を見ると、岩壁に凭れかかるようになっていた……多分、さっきの揺れで止めていたのが倒れたのでしょうね……

だとすると、逆卍党の目的は戦艦の奪取、アレン側としての目的は戦艦の機能掌握といった所かしら……浮上させるだけ浮上


逆卍党の蒸機鎧は敵防衛を突破し、どんどんとアレンの戦艦内に侵入して行く姿が観測できた。

私達の砲撃が来ないとタカを潜ってるのか、一目散に突破した場所に突っ込んで行っている。

「各機に告ぐ、弾幕を貼り、逆卍党の機体を一機でも多く落とすわよ」

ならこちらも、甘い想定をしたことを後悔させてやるわ。

私はそう部下に対し指令を下し、120mm機関砲を構える。

「了解!」そう、仲間達は威勢よく私の指令を受け入れた。

隣には同じ飛空艇に乗ったリチェットが、長柄の120mm狙撃砲を構えている。

そして次の瞬間、弾幕が飛ぶ、120mm、75mm、多種多様な砲弾、私も左腕から弾を出すとイメージし、機関砲を敵艦入口に向け何度も放つ。

タン、タン、タン、タン、そんな間隔で左腕から120mm砲が放たれ、左腕の銃身がブレる……連射速度は低下して、やっぱり前みたいに弾幕を徹底して貼れないわね。

弾数も大分減少したし、無理に連射して使うものじゃないわ。

そう考えながら敵を狙い撃ち抜き、死の雨を叩きつけ、逆卍党の残存兵を落としていく。

彼らは大部分が敵艦内に突入しており、応戦は不可能だったため、一目散に突入しようとしていく。

「きゃあっ!」

敵が牽制で撃った45mm砲が飛空艇に当たり、爆ぜり、船体が揺れ、リチェットが叫ぶ。

墜落するほどの損傷でないものの、リチェットの機体は転倒しそうになり、慌てて私は右手でリチェットの機体の左腕をつかみ、転倒を防ぐ。

「大丈夫?」

「え、ええ……ありがとう、助かりましたわ」

そう言いながらリチェットは自分の機体の体制をすぐに立て直す。

転倒状態からの復帰って結構きついのよね……

「来夏、損害は?」

リチェットが立て直した事を確認したら、私は来夏に次は状況を確認させながら、また機関砲の狙いをつけ、砲撃を続ける。

「大丈夫です、砲撃継続させてください」

「継続してるわよ……」

来夏の無事を確認すると私は言い返す。

弾幕に敵はやられ、何機かの敵の蒸機鎧が私達の方に接近しようとするけど、上空に陣取ったジパングの蒸機鎧が瞬く間に手に持った90mm砲でバラバラにする。

航空戦において大口径の兵器を使えるというアドバンテージを惜しみなく発揮し、尚且つ見事な連携、敵に回したら厄介ね……彼らが味方で良かったと、私はつくづく思う。

「露払いは助かりますわ……」

そう言いながらリチェットは淡々と砲撃を続ける。

敵の飛空艇が何隻も的確にジャイロを狙った砲撃で落ちてくのが解るけど、ひょっとしてリチェットの砲撃かしら……


そうして砲撃戦は続き、外に居た敵軍との戦闘は射程に勝る私達が、逃げる敵を掃討するといういささか圧倒的で、出だしとしては順調な勝利で終わった。

だけど大部分が船内に進入した訳であって、彼らの本隊が待ち構えてるでしょうね……

「さてと……リチェット、損害の確認をお願い」

私はリチェットに指示する、こういう仕事は私より彼女の方が適任よね……経験の面から置いても。

「ふむ……損害は軽微、蒸機鎧が1機流れ弾で右腕を吹っ飛んだ程度ですわ」

1分ぐらい間を置いて、リチェットから通信が来た。

「なるほど、なら大丈夫そうね」

私はその言葉に、少しほっとした。

アレンが浮上させた空中戦艦の甲板には、残骸の山が転げまわるのが目につく。

一歩間違えてたら私達がこうなったかもしれないと考えると、ちょっとぞっとする。

「各機この戦闘の勝利で慢心しないよう、警戒しつつ進むわよ」

そう私は指示を与えながら、待ち伏せを警戒しつつ、私達は空中戦艦の真上にたどり着く。

望遠視で見たときもそうだけど、やっぱり生で見るとものすごく巨大なのがわかって、少し緊張する。

「もう敵機はいないな……船の中にドンパチの場面を移したか、どう思う隊長さん?」

傭兵の一人、リチェットの知り合いのベイルが通信チャンネルを開き、私に問いかける。

「当たり前じゃない、一旦飛空艇を降下させ、船から降りてから突入するわよ」

「……隊長、少し提案がありますわ」

リチェットが通信に入ってくる。

「何かいい手段あるの?」

「ええ、現在視認が可能な入口は4つある。そして中は恐らく狭い道になっていて、数で攻める戦術が使いづらい場所ですわ」

「要するに、戦力を分散させろと言う事?」

「そうですわね……」

「なるほどね……じゃあ、ジパングの特殊部隊はカールビンソン傭兵団とアレックス傭兵団の2つと同行し正面から見て一番左側の入口に突入。私とリチェットはその他傭兵団を率いて正面から一番右側の小さな入口に強引に突っ込む、と言った所でいい?あとは保安官隊は……まぁ、この船の前で待機して出てきた敵を潰してほしいわね?」

「ふむふむ……問題は無いな、カールビンソン、及びアレックス傭兵団の方はこちらに命を預ける気はあるか?」

そう、フジオカ隊長は2つの傭兵団に対し問いかける。

「こちらカールビンソーン、問題なんてないないさー、一緒にがんばって生き延びようよ」

「ジパングの精鋭か……任務が楽になりそうだ、当然構わんよ」

2人の傭兵団長は互いに、問題ないと答える。

「よし、じゃあお前等は飛空艇に乗ってついて来い、飛空艇に乗ってないと俺達にはついてこれないぞ?」

そうフジオカ隊長が言うと、ジパング製の飛空艇と、その周囲を飛行する蒸機鎧は2つの傭兵団の飛空艇を引き連れ、正面から見て一番左側の入口に先行し入っていった。


「先に言っちゃったわね……聞こえる?通信障害はなし?」

私はちょっと心配になり、フジオカ隊長に通信を行う。

「ああ、問題ない」連絡は大丈夫、その言葉に、私は安堵した。

「……大丈夫ね、じゃあ私も……先に入口が大丈夫か偵察するわ」

私達も目的地に接近し、私はゼロで先に飛空艇から飛び降り、スラスターで落下速度を減速をかける。

そして機関砲を構え入口に敵が潜伏していないか神経をとがらせながら入口の前に降り立った。

入口の奥には橙色の明りが充満していて、先ほどの戦闘の影響か蒸機鎧の残骸が散乱していた。

無機質な壁を照らすガスランプの明りとは全く違う……私が夢で見た、電気というものの明りよねこれって。

「……敵のアンブッシュはなし、問題ないわ」

私が報告すると、飛空艇を止め、待機させる。

「……今の少しひやっとしましたわ、いきなり指揮官が最前列で偵察とか……正気の沙汰ですの?」

「ま、120mm砲ならこのゼロの正面装甲で耐えれるわよ」

ぶっちゃけ、ピースメーカーの反応があったら右側に推力向けてしまえば大丈夫なのよね……

まぁ、それでも当たったら死ぬ可能性はあるし正気の沙汰じゃない、というのは会っているかもしれないかしら?

「ああ、ゼロの正面装甲は前よりも分厚くしてある……尤も、背面装甲は75mmを防げるかだが」

博士からの通信だ……そういう仕様は先に話してほしかったわよ……まぁ、背面なんてとられたら負けたも同然でしょうけど。

そうして安全を確認した後は飛空艇を降下させ、ドンドンと蒸機鎧が降りてくる。

「よし、俺達は準備完了したぞ」

そう、傭兵たちのまとめ役をやっていたベイルが言う。

彼の機体はウィンチェスター、リチェットと同じく長距離砲撃に適したタイプよね。

「古代の遺産か……出来れば壊さないで欲しい所だが……まぁ、そう言っては居られないな、いざとなったら動力炉を探して壊せ、そうすれば大抵は沈む。検討を祈るぞ」

「ありがと博士……さてと、これで終わらせるわよ、皆、ついて来て」

そう私は言いながら、足を進める、これで全ての戦いが終わる。

父の仇を討ち、逆卍党の陰謀を止め、戦いを終わらせる。

緊張感と高揚感に、その時の私は包まれていた。


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