その3
病院はフェニックス州の病院であり、そこを出た私達はすぐにあの日の夜に来た酒場に向かう事になった。
酒場のムードは相変わらず陽気な感じで、疲れに聞く陽気な音楽がジュークボックスから流れていた。
「おーいジント。こっちだこっち、早くそっちの子達もつれて座ってくれ」
店内に入ると早速、大人数用のでかいテーブルを占拠するジパング系の男たちが私たちに向けて手を振って招いてくる。
数は10人ぐらい、彼らがジントの上司、なのかしら……?
きちんと西欧語で言ってきてるあたり、律儀ね……
「あれが僕たちの部隊。で、こっちに座って来いとさ」
ジントが説明する。
まだ座れる椅子もあるし、私達も同じテーブルを囲むように座る。
旨く言いくるめれば彼らに支払わせる事もできるかしら……?
「うー……博士、図りましたね?」
私の隣で来夏が震えてる。
独逸系とジパング系って結構仲悪いんだったわねそう言えば……
「何の事だ?たまたま来た店にジント君の上司がいただけじゃないか」
けど、独逸系の博士はまったく動じない、人それぞれって事かしら?
「ハハハ怖がらなくていいぞ嬢ちゃん、なぁ?」
ジパング人の中で一番老けた隊長格の男の人が笑いながら言う。
脂ぎった顔に少年のような瞳、いかにも激戦を切り抜けた感じね……
「隊長が言ったら逆に怖がりますって!ほら独逸系であって独逸人じゃないなら怒らないって!」
今度は細身のジントと同年代の男が言った。
「えーと……た、たいちょー……」
ちょっと男たちの豪快な態度にドン引きした来夏が私に泣きつく。
というかこのぐらいで泣きつくの?本当にCIAの元エージェントなのこの子……
「……テンション上げすぎよ、この子ちょっと引いちゃってるわ……」
私は冷やかな視線をジパング出身の男たちに向けた。
すると、げらげら笑ってた男たちの表情が引き締まる。
「すみませんでした、ついウチらは女火照りでこう、ちょっと興奮しちまってねぇ」
隊長格の男が頭を掻きながら言う……ま、確かに女っ気ゼロよね……
「そうですわね、紳士たるものこういう場ではきちんとした態度ぐら見せて欲しいですわ」
リチェットも私に便乗して怒る。
「リチェットの意見は兎も角、大体口説くのなら最初は隊長の私が礼儀でしょう?」
でも、ちょっと空気が固くなるのも嫌よね、そう思った私は、冗談の一つでも言った。
瞬間、周囲が沈黙する。
「……怒らないから正直に私の印象を答えなさい、ちなみにわかりやすい嘘は無意味よ」
もう慣れたけど、この空気を放置するのもダメよね……
「何ていうか、うちのボスと同じぐらいに怖い人っすかねー?」
数秒の間の後、調子のよさそうな男が照れながら言った。
「うーん、やっぱりこんな機械の体は怖い?」
「いや、そっちは凄い美人に見えるんですって」
細身の青年が次に言った。
「うんうん」
「いや、美少女だよそりゃ、機械の間接部とかエロいし」
「見かけは本当にいいんですよ」
他のジパング部隊のメンバー、ジント以外もそれに同意する。
「うーん……じゃあ一体、どこら辺が問題だった?」
「え、戦績」
調子物の男が言う、またそこなのかと、私は深い悲しみに襲われた。
「これでも俺らジパングって英国のブタども相手に飛空艇を落としまくって蒸機鎧相手にも無双なんっすよねー。で、逆卍党の連中ってうちらの過激派のアホが一杯いて、そいつらに近接戦闘を挑んで圧倒って報告が来てる時点で何か質の悪い冗談そのものっすよ。ぶっちゃけちゃえば見かけふくめて妖怪じみてますよ妖怪」
調子のよさそうな男はぶっちゃける、化け物扱いには怒りたくなるけど……我慢ね我慢。
怒らないから話しなさいって言った以上怒らない怒らない。
「……なるほどね……まぁいいわ、おばちゃん、ビーフステーキ5人前追加でお願い、私と来夏はライスで!」
まぁ、理由が解ったなら後はご飯を食べるだけ。そうしようと思い、私は注文した。
そしてその後、ジパングの方の部隊と様々な話をする。
彼らのうち、リーダーの男はフジオカ、細身の男はイチモンジ、調子のいい男の名前はカザミと言う名前だった。
ジパングはどんな国か、機体はどうなっているか、食事はどういう印象か、そんな話を交わす。
「やっぱり、独逸料理と結構変わらないですね」
「まぁ天主が逃げた後の文化は停滞期に入ったからなぁ……」
フジオカ隊長が来夏の質問に答える。
「そうなんですか……」
「しかしそっちの部隊女性ばっかっすねー、そこら編プロパガンダ的な意味合いあるんっすか?」
「偶然ですわ」
少し怒った顔をリチェットは浮かべる……まぁ、あの戦いで生き残ったから引き抜かれたのにプロパガンダ扱いされたらたまったもんじゃないわね。l
「ええ、たまたまよたまたま、まぁ、写真集とかも取ってる事は撮ってるけど」
「ふむふむ、そりゃ来夏ちゃんのは確保しないといけないなぁ」
「あはは、できれば10冊ぐらい買ってもらえれば印税一杯入って嬉しいかも
」来夏は笑顔で細身の男に返す……気づけば凄い馴染んでるわね……
というかあの笑顔……男を手玉に取ってる魔性を感じるわ……でもまぁ、プロパガンダ用の写真集なら来夏の方が売り上げ上なのよね……
正統派美少女忍者娘、恐るべし……本業でアイドルできるレベルじゃないあれ……
全く、私の方が文句言いたくなるわこのちっさい完璧超人。
「写真集とか……出さなきゃいけないのですか?」
リチェットが心配そうに私に聞いてくる。
「え、問題があったら私に話せば隊長権限で揉み潰すわ」
「ふむ……それはそれでちょっと残念な気がしますわね……」
「リチェットさんはむ……げふんげふん、綺麗っすからねー」
今胸がでかいって言おうとしたわね……でも、確かに来夏もリチェットも私よりスタイルは良いわね……
来夏は胸周りは小さいけど越し回りはかなり肉付きがいい。
リチェットに至ってはアメリカンナイスバディ、そして私は……ロボなのはいいとして、普通……
メガネもそばかすも無くなったのけど、私の外見なんて金髪のストレートセミロング。
背は来夏よりも少し上だけど小さめ、胸は貧相、腰の肉付きは普通、顔は人形みたいというかそもそもロボだし……
なんていうか、2人について考えると女としての自信が無くなってくるわ……
そう私が考えていると、スイングドアが開く音がする。
私がドアの方を向くと、ガラの悪そうな男が30人程入ってくる……
「……常連かしら?リチェット知ってる?」
「確かここら辺の傭兵達ですわね……全く、列車が通過した後来るなんて要領が悪すぎですわ」
リチェットが悪態をつく、確かに数だけは居るわね……
傭兵達のうち何名かが私の近くに近づき、強引に……私たちのテーブルをつかむ。
「どきな、てめぇみたいな黄色人種と馴れ合う負け犬が来る所じゃねぇ。ここは俺たちが貸し切るんだ」
そう、男の一人が睨みながら私に言った。
ジパング軍の人たちが、彼らに睨みを利かせ、机を抑える。
けど、彼らは動じず私たちを囲む。
数の暴力のつもりかしら、全く、困ったものね。
「負け犬ね……そこまで言えるなら、南軍残党とジパングのテロ政党相手に15機程度で生き残れる力はあるのかしら?相手の戦力比はざっと7倍程度、真作鎧もある、できるわよね?」
少し意地悪な事を言ったかもしれないと私は思う、さて、どう出るかしら?
「いやそれ無理だろそれ」
脅していた男は急に普通の反応になる……うわ、そこで根性出さないの?
「……えーと……そこは嘘でも出来るって言わない?というか何しに喧嘩を売りに来た訳?」
少し相手が引いた事を確認して、私は立ち上がり、一人の男に近づき……相手が武器を構える前に首を掴み、持ち上げる。
「うがぁっ!」
「手負いの犬なら良かったわね、でもその犬は狂犬なのよ。やっとジパングから来た猟犬と合流して、猛牛を殺す算段をしてるの……リーダーは誰?」と
りあえず思いつくだけの脅し文句を言いながら、男の首を絞める……あんまりこういう事やりたくないのよね……
まぁ、ナメられてると治安悪化の原因になるし、それはそれで面倒だから仕方が無いわね。
そうすると、男たちの奥からポンチョを着込んだ、ハゲ頭の男が近づいてくる。
「ひぃっ……た、助けてくれ親分!こいつ狂ってるだ!」
「狂っているだなんてとんでもない、私は食事の邪魔をされたので正当防衛に訴えただけよ」
「くすっ、そうですわね……私達も不要な戦いを行うのは避けたいところ……」
リチェットが私に便乗して、ドスの聞いた声で喋る……流石元本職、迫力あるわ……
「嬢ちゃん、俺達もあいつらも美味い飯食わせたいんだ、地獄送りにするなよ?」
フジオカ隊長が私に言う。
解ってるわよ……大きな問題起こして出入り禁止になるのも最悪の結果の一つなのは解っているわ。
私は親分と思わしき男の出方を見る。
「あー……ここまで言われちゃ俺達も傭兵としての体面が保てねぇんだよなぁ……」
そう、ハゲ親分は私の体を嘗め回すように見た後、だらだらとした口調で言い放つ。
「じゃあ何がお望み?」
「決まってるだろ嬢ちゃん、俺とサシで決闘しようぜ、外でな、それでお前が勝てば俺らは引く、お前等が負ければ俺達は席を──」
決闘ってバカらしい、そう考えた私は、首を絞めてた男を、そのハゲ団長に向け投げつける。
「どわっ!」
投げつけられた男はそのままハゲ親分にぶつかって一緒に丸まってスイングドアに当たって外に飛び出た・
うわ、我ながら凄いナイスシュートね。
「皆、援護よろしく」
そう言うと皆それぞれ思い思いの銃を取り出す。
周囲の男たちもその光景にドン引く。私も腰のホルスターからリボルバーを取り出し、店の外に出る。
「う……ぐぅ……」
団長ともう一人の男はよろめきながら、立ち上がろうとする。
私は彼に当たらない様にリボルバー銃で地面を撃つ。
「ひいっ!」
ハゲ頭の団長が驚き体制を崩す。
私は淡々と、銃を向けながら、歩き進める。
「で、決闘だって?私が決闘に応じるメリットがあるの?貴方の部下の傭兵たちは貴方が醜態を晒してどん引きよ?」
「わ、分かった分かった」
「じゃあ何で喧嘩売ったの?」
「と、東部のエース気取りのボンボンどもが戦に負けたモンだから、つい俺らでもボコれるかなぁって……いやすみませんでしたええ」
やっぱり、私が負けてしまったから調子に乗ってただけなのね……
それであそこまで騒ぐって……ハタ迷惑な……
「……ジパングの人間が居たけど、それについて何か思うところは?」
「あー……えーと……すんません、てっきり独逸系の生き残りかと」
何ていうか……あんまりな行き当たりばったりっぷりに演技なのかしらと思えてくるわ……
無法者はいいけど、相手を選ばないとただの無知者ね……
「……はぁ……もういいわ、行きなさい。今日は貴方達を殺しても御飯がまずくなるから殺さないでおいてあげるけど、次やったら全員殺すわよ、ええ」
呆れた風に私は言う。全く、無法地帯宣言はまだしてないというのに……
「あ、ありがてぇ……お、おい!この機械仕掛けの嬢ちゃんの気が変わらないうちに帰るぞ!命あっての物種だ!逃げるぞ!」
そう親分が叫ぶと、どわぁっと数十人の荒くれどもが酒場のドアから一気に出てくる。
「す、すみませんでしたーっ!」
荒くれ達はそう叫んだ後、よろよろになりながら親分と一緒に走って逃げだした。
一体何だったの……
「はぁ……終わったわよ」
私はため息をつきながら、スイングドアを開け入る。
「お疲れさん、あんたは悪ないよ、安心しときな」
そう、店長のおばちゃんが言ってくれて少し安心する。
「何だったんだあれ……」
ジントだ、私が知りたいわよ。
「そこら編のごろつきどもだろう?長生きするぞああ言うのは」
にやにや笑いながらフジオカ隊長が言う。
「しかしやっぱり実物は怖いっすねぇ。うちの隊長顔負けの迫力があったっすよ?」
感心したようにカザミも言う。
女の子相手にそこまで言うか!と内心言いたくなるが押し留めることにするわ……
「はぁ……あ、ところで博士、いいかしら?」
そう言えば私は、夢の内容について話して無かったことに気付く。
「ああ、問題は無いが」
「気絶してる間、また一度死んだ時と同じ夢を見たわ」
「夢……?」
フジオカ隊長が私の言葉に興味を示す。
ジパングの人間にも情報を与える形になるけど、まぁ、問題ないわよね……悪用のしようがないもの。
「ええ、この体になる最中にこの星に人が来る前の時代の夢を見たのよ」
「独神の時代か……」
ジントが呟く。
「ドクシンの時代?」
「ああ、この星に人が来たのはその独神と呼ばれる存在が生命の種を撒いたからという神話の話さ。その話を下地に僕の国では真作鎧はその後の時代の支配者……神とされる存在が作ったと言われてる、尤も、本当かどうかはわからない話ではあるけど」
「うーん、それとはちょっと違うかしら……まぁいいわ、あくまで夢の話だと言っておくけど……話すわよ」
そうして私は、何があったかを、最初の夢を交えて説明する。
宇宙で戦争があり、それを止めるために夢の中の私……多分、私じゃない誰かの記憶を私が追体験しているだけ、それが戦争を止めるために様々な装置を作り、武器を地の底に埋葬したこと。
記憶が妙に1度目に比べ鮮明になり、MAOSの文字もなんとなくだけどある程度読めるようになった事も私は博士達に話した。
「……という訳よ、まぁ、ただの夢にしては気になったから、ちょっと言ってみただけだけど……」
「……ただの夢じゃありません?いくらなんでも現実味が薄すぎますわ、宇宙船なんて……」
リチェットが私に大使呆れの目線を向ける。まぁ、そうよね……
「うーん、SF小説みたいで面白いけど……えっと、博士、どうなんです?」
「……我々人類が宇宙から降下した、移民船団か何かの生き残りという説は10年程前から提唱されている……大尉の説明は辻褄が合うな。棄民から逃れ兵器だけを地下に埋めて入植したか……道理で人と言う種が、特異なわけだ」
「……どういうこと?」
私は博士に問いかける、何か知っているようだったからだ。
「生物と言う存在はその環境に適応するため、様々な形に進化する……例えば狼が犬や狐に進化するようにだ、つまり生物というのは、進化前の種類が必ず存在する。絶滅淘汰されていてもその名残や、死骸などは考古学者が見つけるものだからな」
「それが……人間とどういう関係に?」
「単純な話だ、人と同じ進化の系譜の存在がこの星には居ない。進化の法則に適用するなら……存在するのが自然だろう?」
「そうか、蝦殿説か……」
ジントだ、蝦殿説って何だったかしら……
「ああ、人間だけがこの世界でなく、蝦殿と称された世界から投げ出されたと言う学説……頭の固い学者は宗教的すぎると頑なに否定したが、原生生物でなく他の星から来たとなれば辻褄が合う。そしてキャロル大尉が見た光景は恐らくMAOSが見せた前の持ち主の行動を回想させたものか」
「そして、それなら天主が何故王として過去君臨していたのかというのもつじつまが合う」
フジオカ隊長がマッドナー博士に対し相槌を打つ。
「天主、独逸の現君主にして、ジパングから追放された過去の王か」
「ああ、その天主の出自も、独神から連なる血筋があるからであり。そして独神もまた、エデン説を裏付けるように楽園から追放されたものと呼ばれている……偶然にしては出来過ぎてはいないか?」
博士が盛り上がり、ジント他何名かのジパング特務部隊の人間も、一緒におおっと盛り上がる……えーと……なんていうか、ついていけないノリが……
「……リチェット、ちょっと叔父様たちの話についてけないけど、どうしよ」
私は何か収拾のつかなくなってきた話題を見てちょっと怖くなり、リチェットに頼る。
「……好きに話させましょう、ええ、それが一番ですわ」
そう、リチェットは紅茶を飲みながら言った、優雅ねぇ……
「男の子って本当にああいう科学とかSFとか好きですよね……」
「私もSF小説を愛好してますわ……今の話題はちょっと、オカルトじみてますもの……」
リチェットは微笑みながら言うけど、なんかこう、彼女なりにSFへのこだわりがありそうね……触れたらヤバい系の。
「でも科学者があれだけ盛り上がってるって事は、オカルトじゃないと思うけど……」
そして私の予想を裏切らず、来夏が思いっきり手で触っちゃいけないものをベタベタと触るように言った。
どうしてそこらへん要領悪いの……!?
「デトロイトの魔術師は技術者にして科学者ですが、オカルト狂でも有名ですわよ?それに彼は蒸機鎧が専門、全分野に精通しているように見えませんこと?第一神に等しい力を持った人間とか、企業同士の惑星争奪の戦争とか、いくら蒸気機関や真作鎧が強大でも、出来る事の限度を超えている……ニュートン誌曰く、アカシャ粒子によるエントロピーの凌駕は不可能とされてる学説を否定するかのような発言ですわよ?全く宇宙に上がって戦闘だなんてSFですらないですわ。そんな事をしたら破片が無限に加速しとんでもないことになりませんこと?大体人間だけを地上に残し兵器を埋めるなんて器用な装置を、一人で作り上げたなど荒唐無稽じゃありませんこと?聞いてます来夏軍曹にキャロル大尉?」
案の定もうSF定義論まで始めだした……紅茶じゃなくてお酒でも飲んでるの?
「うーん……まぁ、あくまで夢の話よ、夢の話、そんなに怒らないでいいじゃないの」
私は怒らせない様に、笑顔でリチェットを諭そうとする……逆効果にならなきゃいいけど。
「……申し訳ありません、少し趣味について熱狂してしまい、視野が狭くなってしまいましたわ」
リチェットはそう言って申し訳なさそうな顔をする。聞き分けがよくて助かったわ……
「……SFオタクだったんですね……そういえば大尉の趣味って何でしたっけ?」
来夏が今度は私に聞く。
私の趣味ね……
「私?蒸機鎧のレースに参加してガンガン地面蹴って走らすのと、後はアイキドーの鍛錬ぐらいよ。見たまんまよね?」
私はちょっと自嘲する。
女の子っぽい趣味がないし、学校じゃチアガールなんて全くやらなかったわね……ああいう恰好恥ずかしいし。
「本当、隊長はブレませんね……はぁ」
「全くですわね」
2人が同じような感想を言う。
まぁ、だからこそ蒸機鎧乗りとしては一応一流、みたいな扱いなのかもしれないけど。
「……で、そういう来夏の趣味って何なのよ……」
「私の趣味ですか?読書と料理ですけど……あ、読む本は恋愛小説とかジュブナイルですよ」
物凄く普通の女の子の趣味に、ちょっといじれなくて私はがっくりくる。
まぁ、腐ってもCIAの元諜報員でしょうし、そういう隙を作らないようにするのは得意よね。
「なるほど、ジパング製のワンオフタイプは発注した工房で造られ、その技術が量産機にフィードバックする形となっているか……そして蒸機鎧はその家の力を示すものとなるため、より強い鎧を職人に頼み作らせる……上手く出来た社会構造だな」
「ああ、博士さんもジパング高官向けに何機か設計したら小遣い稼ぎになるかもしれないっすよ?」
「ふむ……ジパング輸出向けの仕様か、面白そうだが……まぁ、そちらとの関係が上手く続けばそういう事も出来るだろうな」
博士達の方は私の夢を話のネタにした所から、蒸機鎧の話に移ってる……蒸機鎧の話題にならついていけるけど輸出向けって、もしかしてキャリバーとか輸出するのかしら……?
感想、誤字脱字報告お待ちしております。




