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蒸気ロボット仮想戦史 ゴールドラッシュ&ゴールデンエイジ  作者: 白金桜花
第六章:大逆境!それでも私はくじけない!
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その2

目を開くと、どこかの病院の中だった。

私は起き上がり、両手を見る……あの夢の手と違う、機械が剥き出しになった白く塗装された手、私の手だ。

あれはやっぱり夢だった、そう私は知覚し、上半身を起き上がらせる。

けど……でも、何か夢と言うにはあまりにも鮮明で、あの時に見た夢の中の私って……


「あ、隊長!やっと起きました?4日も寝てたんですよ?」

盆雑な思考の中にノイズが入るように来夏の声がしたので声の方を向くと、来夏と、あとリチェットも病室の中に居た。

2人とも椅子に座って心配した顔を浮かべてるけど、ちょっと懐かしい気分になるわね……

「……はぁ、全く、駆けつけてみれば残骸の山と一緒に倒れてるなんて……敵も甘くて助かりましたわ」

リチェットは呆れた顔で言う。

確かに普通ならトドメの一発ぐらい撃たれてるわよね……本当に運がいいわ。

「本当ね……それで、被害状況は?」

でも、そんな談笑をしてる場合じゃなかった。

負けたのなら敗戦処理をしないと、被害状況の確認をしないと……

「……あの戦場で生き延びたのは私たちぐらいですよ」

来夏が、深刻な顔を浮かべながら言った……でも、それって……

「……ビルは?」


ビルはどうなの、まさか隣のベッドにいないの?


周囲を見回す。


けど、この病室は私一人しか居なかった。


来夏が、悲しそうな顔を浮かべ目を逸らす。


その行動でわかった。


彼は戦死したのだと。


「あの後、ジパングの人たちと一緒に合流して、列車の方に駆けつけたんですけど……その時に運よく居た、逃げそびれた敵兵曰く、最後まで暴れに暴れ援軍が来る時間を稼ごうとして死んだみたいです……」

「そんな……」

私はショックを覚える。今まで地味に私を補佐してきたビルが、死んだ……

戦場だから仕方がない事、と言えばそれまでだけど、初めて部隊内で死者を出してしまったのは、私には重たく圧し掛かる。

「……あの場面で生き延びたほうが、奇跡と思いなさい」

リチェットが私に言う。

確かにそうだけど、でも、何か釈然としなかった。

これで本当に良かったのか、最善は尽くせたのか、そう私は考えてしまうけど、答えは結局出せない。

なら考えすぎるのも体に悪いと私は判断して、思考を切り上げ、とりあえず今後についてどうするかをリチェットや来夏と相談しよう、そう考える。


その時、奥の扉が開かれ、二人の男がやってくる。

博士と、ジントの姿だった。

「やっと起きたか……しかしまぁ、本当に頑丈だな」

ジントが私の体を見て呆れた顔を浮かべながら言う。

確かにこんな機械の体に知り合いがなっている、というのは流石にドン引きよね……

「ええ、死んだ仲間がお前は行くな、って引きずり出してくれたのよ」

冗談の一つでも、現実逃避気味に叩く。

「メンタル面も大丈夫か、部隊が壊滅したと聞いてもその調子なら、問題ないな」

「まぁ、隊長ですし」

ジントの言葉に来夏は微笑みながら返す、でも来夏が言うとちょっと皮肉みたいね……

「でも、やっぱりビルが死んだのは最悪な気分よ……」

「私だって同じ気分ですよ……あの人よく、緑茶好きでしたし……悪いおじいちゃんじゃなかったです」

来夏が暗い顔を浮かべる。確かに最初に会った時も、来夏はお茶を入れてたわね……

「……悲しみに耽っても死人は生き返らない、問題なのは前に向き合うことだ」

そう、博士が私と来夏に言ってくる。

「ええ、解ってるわよ……ただ、やっぱり最悪な気分ってだけ」

「そうですね……」

「……すまない、少し出遅れてしまったせいで、君の仲間を死なせてしまった」

ジントが申し訳なさげな表情で言う。別に何も悪いことはしてないのに……学校に居た時と変わらず真面目な人ね。

「それを言ったら何時到着するかの連携が出来なかった私達にも非があるわよ……それに、貴方の方の獲物まで狙っているなんて解ってなかったから来ないものだと思ってたわ」

「ジパング側としては少数精鋭のデルタ部隊を便りにしていたのだがな……」

「過大評価よ、流石に……」

私はアレンに敗北した時を思い出す。

私は勝利を確信した、けど、油断した時に伏兵にやられた……もし私が冷静だったら、周囲を確認して背後からの攻撃を回避、敵の玉切れを誘い、ボロボロになったアレンの蒸機鎧を叩き壊せたかもしれない。

「よく言いますわね……貴方を拾った場所、そこら編に何十機も蒸機鎧の残骸の山になってましたこと」

リチェットだ、流石にこれ以上弁明してもただの嫌味にしか思われないわね……何か誤解されてる気がするけど。

「ま、隊長の悪癖ですよ、水に流してください」

来夏がフォローを入れる。

私は自分の技量にあまり自信はない、キャリバーの操縦法が独自なだけで、普通に動かしてもこれぐらい機敏に動けるとはあまり思ってはいないのに……

パパなら、ピースメーカーで同じぐらい動ける筈、だから私はまだまだなのに……

「さてと……キャロル中尉、体はきちんと動くな?」

博士だ、そう言われて気になった私は手足をちょっと動かして状況を確認する……問題は無いわね。

「ええ、きちんと動くわ。鋼の体でなきゃ半身不随の車椅子生活、引退して年金暮らしだったかしら?ありがとう博士、治療ついでに堅牢なボディにしてくれて」

気分を明るくさせるために軽口をまた言う。

「問題なしか……それならMAOSの自己修復能力にも大分助けられている、感謝をするのはMAOSの製作者にも言うべきだな」

そう博士は言った、MAOSって本当に便利よね……夢の中でも体温が変化したり、眠たくなったとき念じたら眠れたりした……

そして、あの妙に現実的な夢を見る事も、MAOSを手に入れて死に掛けたとき決まってなった……

じゃあ、あれはやっぱりMAOSの映した映像……?

「……ふむ、何か問題でもあったのかね?」

「うーん、まぁ、MAOSについて、かしら……」

「ふむ……とりあえず今は昼時だ、病院の不味い飯は嫌いだろう?話の続きは飯屋でやりたいがどうかね?」

「なら食事屋でゆっくり喋るわ。それで食事は博士のおごり?」

あの夢の内容……博士に説明するのも悪くは無いわね……

博士なら何か知ってるかもしれないわ。

「当然、君のおごりだ。階級的にも給料も君が一番上なのでな?ちなみに言っておくがリチェット女史は私の独断で引き抜いた、今の彼女の階級は中尉だ」

博士がにやつく、常に無表情な博士だが、楽しげな笑みが妙に印象に残る。

「まぁそうなると予想してたけど……って、何で保安官のリチェットを引き抜いたの!?なんで!?」

私は驚きの声をとっさに上げる。

「あはは、隊長ったらやっぱり予想したとおりのリアクションを取りますね」

「そう言う所は軍に行っても変わらず、か」

来夏とジントが笑顔でわかったような口を利く、私ってそんなにわかりやすい性格なの?

「ええ、そう言う事ですの……改めて自己紹介を……私の名前はリチェット・アープ。階級は中尉、役割は蒸機鎧乗り兼副隊長、これからもよろしくお願いしますわ」

そう言ってリチェットはぺこりとお辞儀する。

頼もしいけど、何ていうか……いびられないかと私は少し心配になった。

感想、誤字脱字報告お待ちしております。

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