その1
私はまた夢を見た・。それとも今白昼夢から起きたこの光景が現実で、自分が無力さを噛み締めた西部の死闘が夢だったのか、私にはわからない。
私が居た場所は自宅の地下、研究用のラボとリー。
私は何をやろうとしてたか一瞬わからなかったが、すぐに思い出す。
私は幾つかの機械を作っていた、不毛な殺し合いを終わらせる機械を。
低所得者を奴隷として戦わせる殺人ショー、悪趣味な実況中継が空気を充満させた戦場に日幹渡る戦争ショー、それが夢の中の私の見た戦争の光景だ。
私は戦いの中、彼らの居住船に入り込み、彼らと話をして知った。
彼らは過酷な宇宙で搾取され、この不毛な戦争ショーの駒として使われ、そして消費される。
アカシャ粒子……特定の言語で書かれた文字列と、ほんの僅かな空気の振動や電気の刺激などで、周囲の事象を変換するエフェクトを発動させる粒子。
ダークマターとも、アキシオンとも、ダストとも言われる粒子。
それにより物質社会から解放された時間を経ても、搾取する者とされる者が居た。
彼らは私が地球に居た時代に比べると、アカシャ粒子を用いた技術は非常に衰退していた。
何故そうなったかはわからない、地球に居た時代から、何万年も経過したのだろうかと私は考える。
そして私は宇宙に浮かぶ彼らの船に忍び込み、彼らに地道に聞いた。
こんな戦いは終わらせてほしいかと。
終わってほしいと、2つの勢力の人たちは言った。
私は彼らに対してのネットワークを作った。
彼らの支配者に気づかれないよう、エフェクトによる、テレパシーを用いて会話するネットワークを築き上げた。
互いの勢力の人々をテレパシーのラインで繋ぎ、彼らの意思を聞く。
そしてどうすべきか、どうすればいいのかを話し合った。
時間がなかった、かなり急いで計画を立てた。
そして私はすぐに行動に出る。
まず地上地下を掘り進め、マントル付近まで向かった。
私が着込んだ鎧はマントルの熱にも負けず、体を守り、そして私の鎧のガントレットは局地的だけど量子を弄繰り回し、どんな物質も用意し、私はすぐに作業にかかった。
MAOSの力で神経の反応速度を何百倍にも設定し、ガンガンと装置の1台目を作る。
装置を解析し、MAOSのシミュレート機能を使い、本当に動くかを確認。
動作は良好、現実で動くかどうかの実験をやると、宇宙全体に知られわたる可能性があるためできないのが悲しいけど、科学者としての私はまだ萎えてない事に自信を持つ。
そしてその機械を量子情報としてMAOSに取り込み、各地の地下にてコピーし、最後に自分の家のある、蒼い月に戻った。
そこでも戦場はあった、まだ戦いは続いていた。
だから私はすぐに地下にもぐって、もうひとつの装置を作った。
これは本来は巨大な装置にするつもりだけど、巨大な装置にするべき機能はまだいらない、問題がなくなったら増設するつもりだった。
そして2つの装置を作り終えた後、私はどうにかして沈静化させようとするが戦争はさらに激化した。
惑星全体をまるで環のように、GRSや攻撃用宇宙船の残骸が漂い、星を覆い尽くすように戦火が拡大する。
テレパシーの中で、計画の主導権を握る存在も反乱分子として彼らの上司により、殺されるものも出た。
人の死が、残留思念が私には見え、聞こえた。
私はすぐに、第一の装置を起動した。
第一の装置は人を地上に降ろし、行き過ぎた兵器を沈める装置。
どんどんと環になった残骸や、周囲で戦う人たちが地球にゆっくりと、だけど緩やかに突入していく。
大気圏摩擦なども起きないように設定され、すべてが終わればそこには無力化された人しか居なくなる。
当初の構想では彼らの記憶を消すことも考えた。
だが、この戦い、この悲劇を教訓として得てこそ自分たち前に進めると彼らは主張したため、私は取りやめた。
兵器は地下にもくぐり眠り、人だけが地上に残される。
そして私はそれを見届けた後、第二の装置を起動する。
惑星間の転移を不可能にし、そしてこの星の位置を隠す装置だ。
戦争の兵員の補充、それは空間転移で行われる、そんな技術があるのに戦争をするというのが訳がわからない。
けど、起動した後この星の座標は消失し、外からは見えなくなる。
こうなればもう、このきれいな星を使って争いを起こそうという外の勢力はいなくなるだろう。
全ては終わった、人は何箇所かに別れ、それぞれの生活を営む。
彼らが住むための施設も作ってある、何をすれば良いかも示してある。
何か問題があれば、私が出向いて調停を行うこととなっている。
私は月面に、万が一凶悪な外宇宙の所謂、邪神だのの類が来ても撃墜できるように、第二の装置の上に巨大な砲台を作った。
邪神の類とされる存在とも私は戦った事があるけど、言われるほど見ても狂わないし、強くもない。
少なくとも宇宙全体を支配するとかその手の連中は誇大妄想であり、実態はただのアカシャ粒子を大量に含有した超生物だ。
それでもやっぱり、危険な侵略者には変わりはない。
今回の戦争にしたって、彼らの中で悪知恵がある存在がかかわったのかもしれない。
非効率的かつ悪趣味な殺人ショーの表向きは惑星を取り合っているという話しだけど、終わりはなかったから、そういう邪悪な存在が政権をのっとったのかもしれない。
そうして私も、やる事をひとまず終えると降下船を作り地上に降り立った。
着陸した船の中で私は鎧を脱いで服を着替え、そして鎧と船、どちらも第一の装置が認識するようにスイッチを押した後、地下に埋めた。
地下に埋まった兵器を確認し、私は海岸を眺めていた。
綺麗な夕陽に、さざなみの音がする。
まだ夏なのか暖かく、鎧越しでは解らない感覚があった。
そうして、海岸に移った私の顔を見る……
そこに移ったのは、褐色の肌に金色の髪の少女だった。
……あれ?私の顔って──?
<肉体の修復完了、周辺の敵対勢力なし、仮死状態プログラム停止>
<エラーチェック開始……問題なし、起動します……完了>
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