その2
「おっと、フェニックス基地の皆さん、私がこの列車の責任者のココペリ・ラインフォードです」
巨大な列車に対し不釣合いな程小さな駅のプラットホームに列車の責任者が降り立ち、私たちに挨拶する。
がっしりした体格の南米系の髭面のおじさまね……表情はちょっと情けないけど。
「はい、フェニックス基地からのモールス信号、受け取ってますわね……私はリチェット・アープ、後ろの方々は東部の特殊部隊の方と、私の部下達ですわ」
私は後ろを見る、そこにはフェニックス基地の蒸機鎧乗り2名もやっとたどり着いたみたいだ。
1人は痩せた大男、もう一人は……何かおばちゃんね、太ったおばちゃん。
「なるほど……それで、貴方はキャロル・ホリディですね?」
「ええ、名前は知られてます?」
「もちろん、東部のニュースぐらい我が社で色々仕入れてますので」
にこっとラインフォードさんは笑う……何かちょっと、敵にしたくないタイプの人の笑みだ。
目が笑ってない、作り笑いをしていて、内面は冷淡、そんな印象を受けた。
「……それで、そちらの方の被害状況は?」
挨拶を終え、リチェットが話を切り出す。
「……結構厳しいですね、飛空艇14隻で護衛をしてもらってましたが、その7割が壊滅しました」
「……それは最悪ですね」
ラインフォードさんが語る状況に来夏が後ろでどん引きする。
確かに私が見た随伴してる飛空艇の数は4隻……丁度そのぐらいよね……
「ええ、ですのでそちら側の補充に期待してましたが……大分荒らされたとは……」
ラインフォードさんは困った顔を浮かべ、頭を抱える。
「……ただ、相手の被害も尋常ではないぐらいは出しましたわ、仲間の死も無駄ではないでしょう」
リチェットが暗い顔を浮かべる。
確かに、基地の負傷者は酷いものだったわね……地獄と形容するのが相応しいもの、あれは……
「それに、ここに居るキャロル大尉とビル准尉の2名は東部で腕を馳せた兵2人、彼らは一騎当千の実力を持つ、優れた蒸気鎧乗りと聞きますわ」
初めて私の事を持ち上げられた気がする……まぁ、護衛対象の前で不安を煽る言葉を使うよりはいいけど。
「ふむ……まぁ烏合の衆よりは頼りになるでしょう。とりあえず現状を把握するためにも一旦車内に入りましょうか、ついて来てください」
ラインフォードさんはそう言った後、列車の中に入って行く。
そして私達もその後に続く形となった。
列車の中はオイルランプが中を照らし、薄暗く、そして結構広く感じた。
荷物を運ぶ車両は蒸気鎧が何機か入れるぐらいの広さはあり、その広い空間の中に大量のコンテナが積まれている。
また、武装車両は戦車の側面の機体を落とす為の120mmオートマチック砲が備え付けられていた。
そして医療車両は病院みたいになってて……ここも満杯ね、怪我人重傷者の治療で精いっぱい、大変な事になってるわ。
「どこも彼処も怪我だらけね」
「ええ」
私のつぶやいた言葉にリチェットが反応する。
「いてぇ……いてぇよ……」
「うう……こんな事なら保安官になるんじゃなかった……」
無念の声や苦しみが悪趣味な不協和音のように鳴り響き、嫌な気分になっていく。
「早く行きましょうよ隊長、彼らも次の駅まで守り通せば本格的な治療が出来るはずですよ」
来夏が急かす、彼女の顔も暗く、悲しんでいた。
「ええ、そうね……ここに居ても看護師さんの迷惑にしかならないわ、行きましょう」
そう言って私達は足を進め、医療車両を立ち去った。
何個かの車両を通貨した後、「鍵」がある車両にたどり着く。
「鍵」はどうなっているかはわからないけど、巨大なコンテナが車両の中心に溶接され固定されている異質な空間になって居たわ。
「中身は見れないのかしら?」
「そうですね、確認しますか?」
そう言ってインフォードさんは鍵を取り出し、コンテナを開ける。
コンテナを開けてもまだ中は暗く見えないから、ラインフォードさんがカンテラに明かりを点す。
明かりで照らされたその中には、またコンテナと溶接されたテーブルがあり、その上に拘束し固定されたガラスのような箱の中に入った「鍵」があった。
「鍵」はあの時、パパを殺した後アレンが手に持っていたカードのようなものに似ていた。
アレンはこれを集めている……何かの兵器の起動のための「鍵」なのか、私は考える。
「これが鍵ですか……カード型……ということはどこかの扉の鍵か、施設の起動装置かな?」
「見た所は扉のカードキーでは無いな、おそらく先史文明の起動に関わるものだろう」
来夏が疑問に思った所に、博士が解説をする。
「見た感じ?よくわかるわね?」
「先史文明文字はアクセスキーその2と書かれているからな」
博士の言った言葉を聴き、私も文字を見る。
その文字はMAOSから視界に表示される文字とはまた、別の形態のシンプルで記号化された文字に見えた。
大体の内部の状況を把握し終え、私達は蒸機鎧を配置しにまた、外の飛空艇乗り場に戻る。
「本当に要塞ね……これ」
「まぁ、このぐらいしないと野盗にナメられますので」
だからってこれだけの代物……維持とかお金大丈夫なのかしら……ま、余計な心配よね。
「それで蒸機鎧の配置はどうします?飛空艇に乗り迎撃を行うのは私の基地の2名とビル准尉、キャロル大尉と私は列車の屋根の上に待機し、迎撃をしてもらいたいですが」
リチェットはそう、私に提案する。
確かにキャリバーは列車の前の方に座って機関砲を撃って待ち伏せする敵を蹴散らすのが一番よね……
リチェットの機体は確か……あの茶色いピースメーカーのカスタム型だったわよね、名前はえっと……バントラインとか言って、基地から機体を乗せる時も自慢げにどんだけカスタムしたかとか語ってたわね……まぁ、いい機体だと思うけど。
「私は問題ないけど、ビルはどう?」
「ふむ……できればワシの方が列車の上に載って戦いたいものじゃが……まぁ、来夏も見張っておかんと不安じゃな、問題はない」
何か少し、不満そうな言い方をするけど……私の戦い方は結構危ういからかしら……
「ありがとう、来夏の事と飛燕号の事任せたわ」
「うむ、隊長こそ深追いしすぎるんじゃないぞ」
ビルは私に釘を刺す、多分、私がアレンに出会って我を失うことを恐れているのだろう。
私も、彼を目の前にして今までみたいに冷静でいられるかは解らなかった。
「ええ、解っているわよ」
でも、それについて私はわからないとは答えない。
既に作戦は始まっている。だから私はやれるだけの事を尽くし、冷静になろうと心がけるしか出来ることはなかった。
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