その3
午後の授業は体育が2時間連続、体育は得意な私は男子顔負けの成績をドンドンと出す。
100m走のタイムは今回は三位、一位は流石に男子に取られたけど、まぁまぁ満足のタイムを実感する。
そうして午後の授業も終了したら私はバイクで帰宅しようと、バイクにキーをかけようとする。
「あ、キャロル、ちょっといい?」
その矢先にアムが私の方に駆け寄ってきたのか、後ろから声をかけて来た。
「何?」
私はアムの方を向くと、彼女の後ろにはリンも居た。
「ん、買い物行かない?新しいグッズ店見つけたのよ」
にっと笑いながらアムは言う。
面白いものを見つけたから一緒に遊びに行かないかと誘う顔ね、悪巧みをする時の顔じゃないわ。
「新しいお店ね……いいわね、行きましょう?」
別に帰ってもやる事なんて本を読むぐらいだし、今日は蒸機鎧の訓練の日じゃない、要するに暇な日だった私はアムの誘いに乗る。
「うんうん、持つべきものは友達よねぇ」
リンが腕を組み何度も頷き、納得した様子を浮かべる。
「……生憎だけど、友達だからって私は何も買ってあげないわよ」
うん、こういう時のリンの態度はわかりやすい、何か奢ってもらうつもりだと察した私は、釘を刺す。
「う、ケチー……」
むーっと膨れるリンを気にせず、私はバイクのエンジンを切った。
街中にバイクなんて置いたら一瞬で盗まれるからである。
そうして私達は、ニューヨークの繁華街に向け足を進めた。
繁華街はいつもいろんな人が居る、この国は多種多様な移民で構成されるアメリカの首都だから当然だけど。
それでも南部の奴隷解放運動の後は黒人やアメリカの原住民であるインディアンも町でちらほら見かけるようになった。
私はどうでもいいけどテレビじゃそれに対する反感を持った、元南軍の人間が犯罪を行っている話をよく聞くのは憂鬱ね。
…
……
………
「……バイクで行けばよかったわね」
私たちはかれこれ繁華街を一時間ぐらい歩いている気がする。
いい加減バイクに乗っていけばよかったと後悔してしまうわ。
どうせ鍵を壊せる人間なんて居ないし、蒸機鎧や車を使って盗もうものなら学校前だしすぐバレるわ。
「あはは、キャロルのバイクなら荷物持ちもできるしね?」
げんなりした私の顔がおかしかったのか、リンが笑って返す。
「そうね、でもそれにしても一体いつつくの?」
「あー、こっから路地裏に曲がるわけよ」
「路地裏?」
アムの言葉に嫌な予感が脳裏を過ぎる。
路地裏は治安がかなり悪く、スラム化している場所もそれなりに聞くからだ。
男子顔負けの格闘技を使えるとは言っても、流石に銃を持った暴漢の相手なんてしたくないわよ?
「大丈夫大丈夫、スラム化してる場所は通らないって」
アムは私が心配したのを察したのか、笑って返す。
本当に大丈夫なのだろうか、そう思いつつも私達はアムの案内通り、路地裏に足を進める。
路地裏は薄暗く、ニューヨークの高層ビルの間にありまだ日は登っているというのにまるで夜のように不気味だった。
「本当に大丈夫なの?」
私は再度、アムに聞く、いくらなんでも雰囲気が悪すぎよ……
「大丈夫だって、キャロルってホント、そういう所はお嬢様なんだねぇ」
私のおびえる様が愉快なのか、にやにやとアムは笑う。
確かにホリディ家は戦争の英雄で私の家はお金持ち、良く言えばアメリカンドリームの体現者、悪く言えば成金、まぁアムにとってはどっちでもどうでもよく、私はお金持ちのお嬢様なんだけど……
「リンも言ってあげてよ……」
前を進むリンに私は声をかける。
流石に嫌な予感がする、アイキドーは確かに優れた武術だけど、絶対無敵の武術でもなんでもないわよ?
「心配しすぎだって、大体アイキドーがあるなら大丈夫でしょ?」
ダメだこれは、そう私は実感した。
何を言っても大丈夫しか返さない、危ないころには手遅れのパターンよねこれ?
こうなれば毒も食らわば皿までと私は考え、周囲を見回し警戒する。
見回すと後ろに一人、堀の深いラテン系の、小太りの体格のいい中年男性が居た。
男はコートを着込んでおり、葉巻に火をつけ、私と目をあわせたがすぐに目を逸らした。
それ以外に特に人の気配は無く、達は私は路地裏の奥に置くにと進んで行く。
進んで行く途中、空が何かに覆われたのか更に暗くな上を見上げたら、そこには巨大な8つの可動式ジャイロを側面に搭載した飛空艇がゆっくりと飛んでいた。
「凄い低空飛行だねぇ、キャロル、何処のか知ってる?」リンは私に聞いてくる。
「私の専門は蒸機鎧よ、だからどこの飛空艇かは解らないわ?」
正直に私は返す、と言うか、何で私が飛空艇について知っているって思ったのか謎だ、ひょっとして私って格闘技大好きの軍事オタクのように見られているのかしら?
そう思ったその時だった。
飛空艇が通り過ぎたのを確認すると、後ろからガサッと言う物音が聞こえた。
私は咄嗟に後ろを向く。
さっきの、小太りのトレンチコートの中年男性が居た。
彼はゴミ袋に足をぶつけ、私の視線に気づくとさっと顔を逸らし、今度は変な板みたいなものを触っていた。
尾行している?そう私の直感が告げる。だが、何が目的かはわからなかった。
「ねぇ、リン、アム……」
私は2人に声をかける、尾行されているとしたら人さらいかもしれない。
そうなったら最悪……うん、凄い考えるのも嫌な事態になっちゃう。
「何?宇宙人でも見たの?」
リンが興味津々の目線を私に向ける、危機感がまったくない目ね……
「違うわ、後ろの男の人……その……さっきから私をつけてるみたい」
「……あのおじさんが?」
リンは特に怖気づかず、後ろに居る男に指差す。危ないと思ったけど男は特に動じることなく、またあさっての方向を向き葉巻を吸っていた。
「うん、何かわからないけど人さらいかもしれないわ」
「ホント、怖がりねぇ……じゃ、こうしようか」
アムも危機感の無い、あきれた様子で語る。
私も少しその態度には怒りたくなったけど、ここで怒っても意味がないので怒りを堪える。
「全力でであたしが走るから、リンとキャロルはついてきてよ……はい!3、2、1、スタート!」
そうにこっと笑みを浮かべた後、走り始めた。
「ま、待ってよー!」
リンもそれを追っかける形になり、その様子に私はちょっと呆気にとられる。
「え……ああもう!ちょっと!」
けど、置いてけぼりになったらまずい。
私もそれに続け2人を追いかけるために走り出した。
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