その4
翌日の朝、母への近状の手紙を書き、ポストに入れる。
母に会おうとすれば会える、けど、いまいち気分が乗らない為私は手紙と仕送りだけに留めている。少なくとも、アレンを殺したら私は家に帰ろうと考えていた。
母と居ると迷いが生まれ、そしてそれが死につながりそうだったから。
その後キャリバーの状態を確認、手足を動かし、まともに動くことを確認した私は飛空艇に補給資材の入った何個かのコンテナを乗せ、その後機体も載せ座らせる。
コンテナはかなり大きく、予備パーツは相当あるだろうとみて解った。
「隊長に博士……これだけ乗せたらこの子のスピード下がりますよ?」
来夏が心配げな顔で言う。
「問題ないわ、基地まで持って行くだけだもの」
「はぁ……空賊が来たらきちんと撃墜して下さいよ?」
「よっこらしょ……なぁに空族など隊長のキャリバーでは役不足、ワシのガバメントで十分じゃろう、安心せぃ」
ガバメントを甲板に持ってきて座り込ませたビルが、機体の中から声を出す。
「役不足ってビル准尉の機体の方がスペック下じゃないですか?」
来夏がビルの言葉に反論する、でも役不足の意味って……
「ふむ?役不足ってのは『その能力でその役割は過剰すぎる』という意味じゃが」
うん、そういう意味よね……よかった、合ってたわ。
「う……」
恥ずかしそうに来夏は顔を赤らめ、目を逸らす、最初見た感じだと落ち着いた印象があったけど、こうして付き合っていると齢相応って感じの部分が多いわね。
その後飛空艇の再度のチェックを全員で行い、目的地へのルートをブリーフィングし決定。
補給ルートを2つ通り、休憩を挟む事で万が一パイロットが倒れ込んだ場合の事態に備える方向になった。
数時間休息の後、飛空艇で私達は出発する。
飛空艇の中は操縦室と何個かの個室があり、食事は食堂で出来るようになっている。
私は操縦室の助手席に座り、来夏の様子を見ていた。
操縦室の計器は蒸気鎧の計器とはまた違い、色々なものがある。
そして壁は二重の対弾ガラスになっていて、ここからだと見渡しは非常に良く、下には白い雲海が見え、何かこう開放感みたいなものを感じるわね。
「それにしても商船の陰も見当たらないわね……」
「通常の商船なら雲の下を通るものですからね……あと、通商用の航路は避けてますから」
「通商用の航路……ああ、そういうのもあったわね、そこ通らないの?」
「当たり前です、その航路に沿って合衆国の保安官は巡回してるんですよ?そんな所通ったらすぐに職務質問されて面倒ごとが増えるだけです」
「うわ、忙しそう……」
「尤も、規模が小さいからアレンの一味のような数で物を言わせる連中相手じゃ、少し部が悪いみたいですけど……多くて中隊規模ですし」
「だから軍隊まで出る事になったって事ね……」
しかし私の部隊の規模も今は小隊規模よね……遭遇したらまずいんじゃないかしら……
「まぁ変なの来たら、キャリバーの機関砲でも撃てば大抵は逃げますよ、ええ……敵の船乗り込んで暴れるなんてしませんよね?」
来夏は私に本当にやりそうだと心配そうな顔を浮かべる。
「やらないわよ」
そう、私は苦笑しながら来夏に返した。




