その3
訓練やさまざまな雑誌の出演、割と忙しいけど、平穏な生活を行う日々が1ヶ月ぐらい続いた。
本格的な指令は発令されず、けどその日のためにさまざまな準備を進め、そして今日、私は司令に呼び出されていた。
「さてと……数時間前に上層部との会議の結果、君を西部のアリゾナに送ることに決定した」
指令は書類を確認しつつ言う。
西部……確か、アレンが活動し潜伏していると言われていた場所ね。
「アリゾナ、ですか……」
私はちょっと、苦い顔を浮かべる……アリゾナって西部の中でも結構な荒野よね……
「ああ、アレンがアリゾナ及びその周囲の州全体を荒らしまわっているのは君も分かっているだろう、だが、彼の撃退だけではない……逆卍党残党、やつらの艦を西部で見たとも聞いたのだよ」
アレンに逆卍党、どっちも私に因縁のある相手、それが同じ場所に集うって……嫌な偶然ね。
「それで、私に両勢力の討伐を?」
「うむ、君の飛空艇なら彼らに追いつけるぐらいの力はある、そして君の功績も十分確認した、君ならやれる筈だろう?上層部もとうとう踏ん切りをつけ、南部の蛮族とジパングのテロリスト崩れを根絶やしにすると決心したのだ」
「なるほど……」
「逆卍党に関しては奴らの残党を退治しにジパングの特殊部隊との合同となる、彼らとアリゾナ州のフェニックス市の陸軍基地で合流し、掃討作戦に当たってくれ」
「了解しました、ですが……」
嫌な予感がまたする、また一人で暴れてこい、そう言われる予感しかしない。
「……」
神妙な顔で、司令は黙る。
「ひょっとして米軍で出せるの、私の部隊だけじゃないですよね?」
笑顔を浮かべ、私は言った。
「……すまない、この前の戦いで被害が結構大きく、再編に時間がかかるんだ……西部には傭兵が多い、予算は好きなだけ使って良いからそれで買収してくれ」
司令は申し訳なさそうに、目を背けながら言う。
だが、私は最悪でない答えが出て、少し嬉しくなる。
傭兵を雇う許可が出て、予算はどのぐらい使ってもいい。
なら必要経費の名目で傭兵を200人ぐらい捕まえて突っ込ませることも可能なのだ。
「それぐらいで十分ですよ、司令」
私は微笑む、今回は何とか、無茶をせずに済みそうなための笑顔だ。
その日の夜、私達は部隊の仲間を集めバーで食事をとる。
「で、それが嬉しそうな顔と、気前のいいおごりの原因ですか……はぁ」
来夏が不満ありげなジト目で私に言う。よりによってまた鉄火場送りになるのかという不満ありげな顔だ。
「ええ、だって傭兵雇い放題なんて言われたのよ?なら適当に一人200ドル渡して突っ込ませれば大分いい戦力になるはずよ、ねぇ?」
「そうじゃの……じゃが、軍属だと思われたら金を跳ねあげられるぞ?」
ビルは急に、鋭い眼光を見せる……私が戦ってる時に、彼の支援を受ける時に似た、覇気のようなものだ。
西部の男をナメてはいけない、そういう警告よね?
「一筋縄ではいかない、と言う事かしら?」
「うむ、彼らは頭が切れるし腕も軍に匹敵する者ばかりじゃ、なにしろワシもその一人じゃからの」
覇気が消え、気の良い表情を浮かべながらビルは自慢気にひげを摩る。
「うーん、そこまで言うなら現地での交渉はビル、貴方ができる?」
少し不安になったため、ビルに任せた方がいいと私は判断する、西部の人間の方が西部の人と付き合いやすいわよね。
「ああ、問題ないとも、隊長さんは後で書類の計算だけすれば問題ない」
ビルは気前のいい笑みを浮かべて言った。
「ありがとう、それで博士も付いていく?」
そして次に私は博士に聞く、博士はこういう武力衝突がある可能性の作戦の場合は基地え待機だ、だけど、今回は話が別で結構な長期間、フェニックス市の駐屯地で滞在する可能性もある。
「当然だ、キャリバーの整備や資材の調達は私がする、それに西部の機体も確認したいのでな?」
「なら、問題ないわね……明日の18時には準備を済ませ行けるようにするわよ」
博士も付いてくと確認し、当面の問題は特に無い、そう私は判断した。




