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蒸気ロボット仮想戦史 ゴールドラッシュ&ゴールデンエイジ  作者: 白金桜花
第四章:いざ荒野!さよなら東部アメリカ!
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その2

病院を出ると来夏が車に乗に乗り待っていた、運転手は彼女が行い、万が一緊急の任務が来た場合、すぐに連絡する役割を持っている。


「友達、どうでした?」

助手席に座ると、来夏が心配そうに声をかける。

「大丈夫だったわよ、少なくとも表面的には」

私がそう言ったすぐ後に車のエンジンがかかり、車は車道に戻る。

「そう、なら退院は速そうですね」

「そうね……」

「学校かぁ……私、色々修羅場潜ってたから、そういうのちょっと、うらやましいかな」

そう言った来夏の顔は、どこか楽しげに見える。

「隣の芝は青い、別に良い所じゃないわよ?」

来夏の過去は結構大変だというのは解る、けど、私にはうらやましい、というのがよく解らなかった。

友達なら軍に居ても作れるし、同年代の仲間が欲しければ町のスポーツ同好会にでも行けばいいだけだと私は思った。


「うーん……何か平穏な生活、みたいなのは憧れてしまって……だから最初にこの隊に来た時、規模の小さい任務とかそういうのばかりやる日々は、凄い落ち着いたんですよね」

「私にはよく解らないわね……」

「隊長には解らないと思います、なんていうか……怒らないでくださいね?」

「ええ」

化け物とでも言うつもりなのかしら?大体あってるのが泣けるけど。


「何か隊長って、他の人と違う感じなんですよ、こう、戦いの神が宿ってるような……そんな、恐ろしく、強く、逞しい雰囲気があるんです」

「雰囲気ね……」

長い夢のあと、機械の体になったからから、どこか頭のネジが外れたのかしら?そう考えてしまう。


「私にとって毎回の戦いは怖いものだけど、隊長にとっては何ていうか……あまりに勇敢すぎて、恐怖は感じられない様に思えました」

「え?私実は戦ってる時かなり怖いわよ!?」

流石に誤解と妄想が入って来ている、私はきちんと誤解を解くべく来夏の言葉を否定する……って、なんで怖くないように感じたの!?


「だけど恐怖は感じても、冷静さはあるじゃないですか……怖いぐらいに冷静で、慢心せず、的確に敵を殺すなんて普通出来ませんよ」

「買い被りすぎよ、パパなんてこのぐらい余裕でやったから……みんなして私を過大評価しすぎよ、本当に……」

そしてその過大評価の結果が部隊への新規人員がまだ来ないという話になると、喜べない事よね本当に。


「うーん……やっぱり、感覚ズレてますよ隊長」

「そうかもしれないわね」

私は特に否定しない、ただ、周りからここまで異質に見られるのは、慣れてなくて嬉しいと言うより、少しぎこちなかった。



その後も多少の談笑をしながら、車を目的地まで進める。

あれだけの戦闘がアメリカ国内であったのか、たまに反ジパング的な集会演説を行う人間がちらほらと見えた。


「何がしたいんでしょうね、逆卍党とジパング政府は関係ないというのに、ドイツ人まで差別するんですよああいうの」

来夏がむすっとした顔で言う。

「さぁ、暇なんじゃないかしら」

私はすぐに答える。パパは昔、政治的な集会で差別意識丸出しの演説をする人間なんてのは、大抵生活も貧しくて心が貧しい人間だと言っていた。

「そんなものですよね、やっぱり……愛国心は飢えた心を満たす酒、そんなものですね」

来夏はむすっとした顔から、上機嫌な顔に戻り、しゃれた言葉を吐いた。


その後何分か車は走り続けるとようやく目的地に着き、来夏が車を止める。

「着きましたよ」

「ありがとう」

私はそう礼を述べ、車から降りる。


目的地は繁華街の路地裏の入り口、あの日、MAOSをもらった場所だ。

「路地裏は危ないですからね、私もついて行きますよ」

来夏はそう言うと車から降り、オートマチック拳銃を取り出す。

私もパパの形見のリボルバー拳銃を、腰につけている事を確認した。

大丈夫、何かあったらキャリバーで戦った時と同じ感覚でいけばいい、そう私は考え、足を進める。

普通の路地裏を歩くというのに、あの日襲われた事を思い出すと、恐怖感が少し再起する。

あの時は長く感じたけど、店のあった場所にはすぐたどり着けた。

けど……


「……閉店、してますね」

店の前には、経営困難になったため閉店すると書かれた書置きが置いてあるだけだった。

それを見て私は子供の頃に見た妖精が、大人になったら見えなくなる、そういう昔話を思い出す。

あんなものを恋人の形見として持ってるなんて、一体何だったのかしら……


「魔法店って看板があるけど……なんでこんな所に?」

「えーと、ここでMAOSをもらったのよね……ここの店長さんから……」

「……それ、魔女とか妖怪なんじゃないですか?」

来夏はぞっとした顔で言う、魔女……確かに、あの店長さんはそれっぽいけど……実際、どうなのかは分からないわね。


「そうかもしれないわね」

でも、そっちの方が楽しそうだから、私は笑いながら来夏に相槌を打つ、妖怪でも魔女でも、結局MAOSが無ければ私はあの時撃たれて死んでた、なら命の恩人に違いなかった。

謎は多い人だったけど、まぁまた会えるだろうと、私はその時、何故かそう自信を持っていた。


だいぶ更新停滞してた……やっと再度投稿、待ってた人すみませんでした。

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