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幕間

激戦が終わり、逆卍党の党員たちを乗せた巨大な飛空艇、品電武流具号は逃げ続け、そして朝になる。

テッカン島を占拠するのに戦力を使ったのか、追っては来ない。

だが、その損害は決して軽いものではなかった。


「生存者、及び現存する機体はどのぐらいになる?」

カグラ・タケダは甲板に上がり、被害を確認する、あの銀色の蒸気鎧の手で、かなりの痛手を負った。

甲板にも蒸機鎧の残骸が散乱し、それは激闘の惨状を物語っている。


「おおよそ140機、ですが……トシザネ様を失ったのは……」

そう、彼女の副官が深刻な顔を浮かべる、名贋作である大典太を、あの戦いで銀色の蒸機鎧を退けるため使った、確かに銀色の蒸機鎧は退けられた、だが、大典太のパイロットであるトシザネ少将は死んだ。

名贋作と名パイロットの両名、そして500機を越す損害、合流した他の船は無く、最後まで殿を務め死んだのだろう。


「悲観しないほうがいい、彼らの死は全てジパングの礎となり、彼らの魂はジパングの英霊となり英霊の住まう地に向かっただけだ」

そう、カグラは表情を変えずに言った。


その後蒸機鎧により残骸の回収を行った後、カグラは自分の部屋……指揮官用の豪勢な和室で、一人泣きじゃくっていた。


「っぐ……う……うぁぁぁぁぁっ……どうして……どうして……!」

普段は隠していた、少女である自分の部分をさらけ出し、泣き続ける。


ただ只管、幼児のように泣き続け、叫び続けていた。


カグラはトシザネに好意を持っていた、冷たい態度をとるが、常に自分の事を考えてくれた彼、自分が死んでも財閥を他の人間が動かせるようにして、負担を和らげてくれて、自分のわがままについて行った彼を好きだと言いたかった。

その好意に見えた行動の真実が彼女への憎しみだと彼が答えても、カグラは彼を受け入れただろう。

この戦いが終わったら、逆卍党の指揮官でなく、ただの少女として、彼と話をしたかった。


だが、それは全て叶わぬこと、彼が戦いで死んだと聞いた時、嘘だと思いたかった、甲板を見るまで、そんなことはありあえないと思っていた。

だが現実は無常で残酷、大典太のものと思われる爆散した機体を見て、現実を突き付けられた彼女は、それでも冷静な指揮官であろうとした。


だが、彼女は人の子だった。


いくら天才と言われようとも、13の少女だ。


恋い焦がれた男が死んだのなら、涙を流し、呻き、叫ぶしかない。


「はは…は……!」

誰が悪かったか、それは単純だ、ジント・タナカ……彼は二重スパイでなく、三重スパイだった。

彼は情報を米国やジパングに流し、そして人質を全てコンテナに入れ逃げ去った。


そしてそのすぐ後に、米国の内通者の報告通り小規模な軍艦の部隊が来た後、大規模な飛空艇団がやってきた。

応戦した、普通に考えればあの規模でも追い返せた、だがあの銀色の機体が全てを破壊した。

島の背後から強襲を仕掛け、この飛空艇まで上り詰めた悪鬼。



許せない、そうカグラは強く思う。



なら、どうする?



簡単な答えだった、決断したカグラは涙を布団で拭い去り、すぐさま船の格納庫へ向かう。

そこには大量の機体が並んでおり、そしてその中の一つ、赤い装甲の、金色の縁がついた鎧武者のような、巨大な蒸機鎧があった。


紅刃ノ孫六、タケダ家に伝わりし名贋作、孫六工房にて作られたオーダーメイドの蒸機鎧、大典太に比べパワーは無いものの、真作鎧のパーツを大量に使っており、祖先のシンゲン・タケダはそれに更に、占領した諏訪の神官などに命じ神通力発現機構を作成させ、現在でも通用する程の圧倒的な蒸気鎧を築きあげ、ケンシン・ウエスギの駆る兜砕ノ長光と死闘を繰り広げた名機である。


カグラは蒸機鎧の才能はあった、剣の腕も立ちそれだけではなく、政治経済数学ありとあらゆる学問で完璧すぎる人間であった。

逆卍党に入り、彼らを支援したのもゆくゆくは彼らが崇める総統を暗殺し、自らが頂点と立つ為である。


だが、完璧すぎるが故に剣の腕をあえて弱く見せるようになり、自らに弱みを作った。

それは自分が周囲に信頼されるためでなく、単に、完璧すぎる自分が嫌いだったからである。

そしてその、人間的な弱さの心が愛する男を殺した、そう、カグラは気づいた。


「……この孫六なら、銀色の贋作風情なんて……」そう、カグラは呟く。

復讐は復讐の連鎖を呼び、父を殺された復讐心に駆られた銀色の贋作鎧のパイロットは、自分と同じような境遇の存在を作り出す。

彼女はまだ、その事を知らない。

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