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その2

「このように、蒸機鎧というのは過去の文明で作られた蒸気機械であり、現にイングランドの<ナイト・オブ・コルブラント>やイタリアの<セイント・オブ・アスカロン>など、古代文明により作られた蒸機鎧を改修し、軍事利用していたことは歴史を語る上で欠嬢ちゃんかせないでしょう」

 歴史の先生が蒸機鎧乗りならだれでも知っているような話を続ける、コルブラントやアスカロンなんて有名すぎてクラスの全員が知っているだろうに、と私はあくびをしながら思う。


「古代文明の蒸機鎧を改修したものを真作鎧、それらを解析し作ったものを贋作鎧と言って、近年発達した蒸気文明により大量生産が可能になってますよね、北軍を勝利に導いた<ウェスト・オブ・ピースメーカー>とか、あれも贋作鎧なんですよ」

 そんな事誰でも知っている、それこそ異世界から来た人間でもなきゃと思ってしまう。

 もっとこう、東洋の国ジパングの職人が真作鎧に負けじと魂を込め作った<サムライ・オブ・マサムネ>や<スピリット・オブ・コテツ>等のワンオフ品の名贋作鎧とか、

 コルブラントと<デスペラード・オブ・ティルヴィング>のデザインや機能の酷似性等の話題をしないのかしらと考えてしまうけど、結局高校じゃ無理よねと自己完結をしつつ、ノートに黒板の内容を書き写す。

 そんな退屈な授業が終われば昼食の時間に私は何時もの友達と一緒に学校の外にあるレストランで食事を始めた。

 あったかい野菜たっぷりのフィッシュバーガーが私の好物、肉は苦手なのよね硬くて。


「でさ、ナルとジントができてるって本当?」

リンが一緒に来ていたアム・マクスウェルに問いかける、アムは学校の情報を収集するのが趣味で、ついた綽名が地獄耳、敵に回せば怖いが、味方に回せば頼りになる奴ね。


「んー、できてるっていうかもう結婚秒読み?卒業したら一緒にジパングに行くんじゃない?」


 ジントというのはリンとは違う、極東のジパングからの留学生、堅苦しいけど誠実な男って感じで、軍人の家計みたいで成績も優秀、こんな学校になんで来たか謎なぐらいの優等生よ。


「ジパング……チャイナの方はイングランドの傘下だけど、植民地化を拒んで大反抗をしてるのよね……」

リンが色々ジパングに思う所があるのか複雑な顔を浮かべる。


 ジパングはユーラシアの国家が連合を組み、イギリス主導で開国を求めようとした、ジパング政府を収めるトクガワ家はそれを吞み、開国するかに思えた矢先、ジパングの各州でクーデターが発生、


 電撃的に政府を奪い取り、ユーラシア国家の駐留する飛空船団に蒸機鎧で襲撃をかけ撃破したというニュースはこのアメリカにも知れ渡った。

 そのニュースによる衝撃的な内容は飛空船団の壊滅に蒸機鎧が使われた所、通常蒸機鎧は跳躍しても10mしか跳べない、カノン砲を持てば撃墜できるけど、このニュースでは写真つきではっきりと蒸機鎧が「飛んでいた」のが問題だったの。

 飛行可能な蒸機鎧は真作鎧なら何機かある、だけど写真にははっきりと普通の贋作鎧とおぼしき機体がカタナと言われる刀剣で破壊しているところを捉えており、それはそう、ジパングの蒸機鎧技術がアメリカやユーラシアよりも進んでいるという事でもあった。


 つまり、軍事力に関しては上と言って良いほどの連中にユーラシアは喧嘩を売ったわけね、結果ジパング国内は沸き立ち、むしろ白人による支配解放を名目にフィリピンやアジア各国の白人企業に対し攻撃を始め、解放した地域の人間と意思の疎通を図り、大規模なアジア圏の武装勢力を築き上げ、今チャイナはユーラシアから来た白人たちの最期の砦と化しているって話よ……ま、お父様曰く、植民地を圧迫しすぎた自業自得らしいけど。


 実態は単に、ジパングの人間が白人になり代わってるだけなのだと私は思うわ。


 アメリカはこの戦争に参加するように要請され、南軍はそれを支持していたが北軍は拒否、結果南軍にはユーラシアから大量の支援が来たけど、それが仇となって、またユーラシアに隷属する気かと反発した南軍の人間が大量に裏切り、指揮系統が崩れた所を叩かれ南軍は潤沢な補給があったにもかかわらず劣勢になり、南北戦争は終結した。


 当然、圧勝ってわけにもいかず戦費を使いすぎた私達北側はそれを口実に参戦拒否、噂だけどアメリカの自由と尊厳を守る精神に乗っ取り、ジパングに大量の軍事支援をしてる話まであるわ……パパに聞いたら鼻で笑われた、その程度の話だけど。


「さながらアジア大戦ね……」

私はこの状況を形容するに相応しいと思った言葉を言う。


「ま、アメリカは中立って言ってんだしジントもスパイで捕まってない、別によくね?」

そうアムはあっさりした感じで言う、確かにどうでもいい、外国同士の戦いでアメリカは参戦する気は無いから。

 私が興味あるとしたら、ジパング製の蒸機鎧に凄い乗ってみたいというだけ。それも名贋作と言われたものに。

真作鎧に匹敵するスペックを持つという贋作鎧が300年前から既にあったと言われる話、私みたいな蒸機鎧大好きっ子にはたまらない話題よね。


例えるなら……ステーキ好きが極上のレアステーキが食べ放題って話題を聞くぐらいたまらない話題かしら?


 だから私はこう思う、ぶっちゃけジパングと同盟組んでジパングの蒸機鎧をとっとと輸入してほしいと。

 そうすればパパが試し乗りに買ってきたのを乗れて、このニューヨークの空を飛んで回れるかもしれないからだ。

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