その7
作戦の準備を終え、多少の暇が出来た夜、基地が別の話題でざわめく事に気づく。
何なのかと私は来夏に聞くと、どうにも逆卍党のスパイだったジパング軍人が、戦闘の激化に伴いこの基地に駆け込んで来たと話題になっているみたいだった。
基地司令は匿う事を了承し、今逆卍党の基地に連れ込まれた人間を入れたコンテナと共に、ジパングの機体を降下させ、基地内グラウンドに着陸していると言う。
アムやリンも居るかもしれない、そう考えた私はグラウンドまで、真っ先に向かった。
ライトで照らされた黒い蒸気鎧はコンテナを持ち、座り込んでいる。
その胸部ハッチが開き、そしてその中に居た男が、両手を上げながら出てきた。
それは私がよく知っていた人物だった。
昔高校に居た時のクラスメート、ジント=タナカだった。
「え……?」
驚いて表紙抜けする、いくらなんでも自分のクラスメートと、こんな再開を下からだ。
「僕はジパング政府第4特殊部隊のジント=タナカ、階級は大尉、戦闘の激化を考慮し、ただ今彼らにより拉致された民間人を救出しそちらの基地まで送った、機体についてはそちらに受け渡す、すぐに彼らを助けてやってくれ……この長旅でかなり披露しているんだ」
苦い表情でジントは言う、相変わらずの無愛想っぷりが、少し懐かしくなる。
彼が機体から降りると、すぐに兵士2名が近くに来て、警戒をしつつ何か話をする。
話を終えた後ジントは施設の中に向かおうとする、一応同盟国の軍人だから、様々な話を交えるのだろう、だけど、特殊部隊の人間が非公式に居たというのは結構問題ごとよね。
私は彼に近づく。
「……久しぶり、無愛想さん」
「……キャロルか、驚いたか?」
「ええ、それでリンやアムは見なかった?」私は単刀直入に彼に聞く事にした。
「今連れてきた、一応2人とも、手出しはされないように匿ったさ」
私はその言葉にほっとする、少なくとも、2人は無事だとは分かったからだ。
「ありがとう、それでなんでジパング大使館に駆け寄らなかったの?」
私はジントに聞く、普通ならこういうのは自分の国の大使館に駆け込むべきだからだ。
「……大使館の人間の大部分も逆卍党の人間だ、裏切りだと解ればすぐに僕も逃げてきた人も撃ち殺されると判断して、近くにあったこの陸軍基地へ逃げた」
大使館までその手の連中に支配されるって……かなりまずいわよね。
「苦しい状況ね」
「ジパングの方はもっと酷いって話さ……済まない、助け出すのが遅くなってしまって……それじゃあ、僕はまだ司令と話すことがあるからまたゆっくりと話そう」
「ええ」
私がそう返すと、ジントはすぐに基地へ去って行った。
ジントが去ったらすぐにコンテナは開かれ、中には大量の人が入っていた。
若い女性が多く、何があったのかは私は少し考えようとしたけど、すぐに頭を振って考えるのをやめた。
衛生兵が駆けつけ、彼らを助け出そうとする。
私も彼らの邪魔にならないように近寄り、アムとリンが居ないか観察する……どんどんと人が出てきて、その中に互いに肩を持ってよろよろと歩いてくる2人が居た。
アムとリンの顔だった、逃亡で体力を使ったのかかなり疲れが見えて、体は痩せてはいないものの、リンの足は切断され義足となっていていた事に、目を覆いたくなる。
「アム!リン!?」
私は叫び、2人に駆け寄る。
「え……キャル……?」
私の事を見て、アムが気づく。
「だ、大丈夫2人とも!?リンなんて足が切れてるじゃない!」
私は驚いて2人を心配し声をかける、だけど、アムもリンも、むしろ私の方に心配げな顔を向けてた。
「……えっと、心配してくれてありがたいけど、むしろそっちこそ何やったの!?」
アムが驚いた顔を見せる。
「え?」
何か驚く事があったの?と、私は一瞬解らなかった。
「……だって蒸気出てるし軍服だし……何があったの?」
リンの方は本当に疲れた顔を浮かべている、そしてその言葉に私は気づいた。
「あ……」
そう言えば2人とも、拉致られて私がこんな体になった事、知らなかったのね。
2人はその後体制を崩し担架に運ばれる。私の体については今説明してもややこしいし、
誰かに聞いて説明を貰えるだろう、私はそう希望的観測をしながら、明日の戦いに備えた就寝の為基地に戻った。




