その2
機体の火器チェックの後基地に私たちは帰還し、大体の点検を済ませた後の格納庫に私達は居る。
「はぁ、私も蒸機鎧の免許取っておけばよかった」
来夏が私の隣で溜息をつく、全くだと私は思う、そうすれば蒸機鎧が乗れる人間が3人になるというのに……
「なら取ればいいじゃない、軍ならタダよ?」
「冗談ですよ、諜報担当に飛空艇の操作、これにさらに蒸機鎧の操作まで入ったら過労死しますから」
来夏は笑って返す。
「やっぱり人材欲しいわよねぇ……」
いくらキャリバーやガバメントが強くても、2人じゃ結局の所、他の小隊におまけでついて行くのと対して変わらないと私は思った。
「うむうむ、ワシの昔の友達があと20歳若ければ呼べたのじゃがなぁ」
「ま、新設したばかりだし私達も活躍すればきっと、メンバーもどんどん増えていく筈よ」
「そうですよね……中央情報局の頃よりは快適ですし」
「……早く作戦行動に出も出ないかしらね、そのための私達なのに」
つくづくそう思う、私達が対テロ部隊として上手く活躍する機会があれば、この人材不足はどうにでもなる……最低でも小隊規模まで規模を押し広げる事ができれば、それだけパパやリンやアムに酷い目を合わせた奴らに、ぎゃふんと言わせられるから。
「そうですね」
「うむ」
ビルと来夏は私の意見に同意する、でも、予算の為に戦争を望むと言うのも歪なものだとちょっと感じ、私は少し自分が嫌になった。
翌日、すぐに任務があった、私達は独立部隊であるから、大隊長でなく、軍司令部からの直接の任務となる。
任務内容は非常に簡単なものであった。
ニューヨークの市街地、周囲の車の量の多い工業地帯。
様々な工場からもくもくと黒い煙が立ち、立ち並ぶ工場はこのアメリカの工業力を物語っている。
「……」
私は蒸機鎧に乗り、建材をパズルのように組み立てはめこみ、家の骨組みをドンドンと作る。
「おー、嬢ちゃん助かるなぁ」少し遠い場所に居た工事主任が私に感謝をする、でも私はなんともどうにも言えない気分になった。
最初の任務、それは軍の工場の建築手伝い兼警護……実態はただの工事現場での工事手伝い。
対テロ部隊と言われていたけど実態は小規模の蒸機鎧持ちの庶務部隊という、どうしようもない実態に少し涙が出る。
「一応はめ込んだけど、早く接合お願い」
私が指示すると工事の人は集まってくる。
不満は言葉に出さず、私は仕事にのめり込もうとする、こんな事で文句を言ってちゃダメだし、いくらなんでも現状で最前線の投入も無理だろうという司令の計らいだと、私自身納得しようとする。
というかいかにも暴れまくるのがコンセプトみたいなキャリバーを作業機械のように使うのも一種の実験なのかしら?
「おーい、すこし手に乗せてくれないか」
工事の人何名かがそう指示するので、私は慎重に彼らを指定した場所に運ぶ。
そうすると彼らは工具を使い、はめ込まれた機材を接合する作業を始める。
そんな中私はキャリバーの首を90度動かし、ビルの方を見る。
ビルは120mmオートマチック砲を手に持ち、テロリストが無いかを警戒し続けていた。
人間が手足を動かすように動かせるキャリバーだから蒸気鎧を用いた精密な工事は可能なのであり、通常のグラブスティックで腕を動かす蒸気鎧の作業は大雑把なものしかできない。
だから工事はキャリバー、警護はビルのガバメントと分かれる形となった。
ただ、空を見ても襲ってきそうな飛空艇なんて全くない、平和な空だけど……
ここに居る工事の人が目の前で死んじゃうよりはマシよねと思い、作業を続けた。




