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その1

市外の荒野の蒸機鎧用訓練エリアで、私達は機体の稼働訓練をしていた。


全力で私とビルの機体は走る、ビルの機体よりも私の機体はパワーが強く、地面を蹴り、スキップするように加速をつけると陸上だというのに、MAOSの視界に表示された速度計がものすごい数値を叩き出す。

中は相当揺れているだろうけど、今の私の体はこの妙に悪役臭い蒸機鎧のキャリバーだ、中でシートベルトにがっちりと固定された私がどうなっているか、そこまではわからない。


そのまま、私はキャリバーを全力でジャンプさせる、高度計が10mを越し、30mに到達すると、降下を始める。


下を見る、30mは蒸機鎧でもかなり高く感じ、ちょっと怖い。

でも私はすぐに転倒せず、着地する、MAOSの視界に表示された人間を模す図形……どうにもキャリバー、或いはこの機体とリンクしていないのなら私の身体の消耗度を視覚化しているものは、黄色や赤になって点滅などせず、緑色の人型の表示を保ち続けた。


「た、隊長殿……ちょぉっとその、老いぼれにはそんな高速機動、ついて行くのも難儀ですぞ」

後ろを見るとビルのガバメントがようやく、着地した私に追いついていた。


「そうね……キャリバーはスペックはいいけど、スペック通りのスピードを出したら単機突出になってしまうわね」


「うむ、南北戦争でも真作鎧を自費で購入した指揮官がスペックに任せ突出しすぎ、結果真作鎧は奪われ本人は頭を銃で撃ち抜かれたという事件もあったぐらいじゃしの」


「そうはなりたくないわよねぇ……あれだけ跳んで脚部に異常が見当たらないあたり、支援砲撃機としても優秀なのはいいけど」


「通常の陸軍等も動員しての戦闘であれば尖兵として一番槍を任されることはあるかもしれんが……まぁ、通常の対テロリスト任務では連携をとって戦うのが一番じゃな」


「そうね……ま、とりあえず次の訓練に移りましょう、私の機体は内蔵武器の説明がやっと来るらしいわ」

そう言って私は仲間たちが待機している場所を向く。


来夏と博士はビルが作った即席のキャンプで待機しており、様子を見ていた。


「准尉、隊長、互いに問題はないな?」

博士がモールス信号で私達に機体の調子を聞く。

軍の通信手段には3つある、ひとつはラジオの原理を利用した音声通信、これは傍受される可能性が高いが、戦闘中モールス通信を行う余裕が無い場合や、傍受されても問題ない場合に行う。

対するモールス信号は音声通信の状況が悪かったり、傍受の危険性が高い場合に使われる。

まぁ、解読しづらいだけで今じゃもっぱら音声通信が軍の主流なんだけど、それでも必要とする場面は多い。


最後の拡声機を用いた情報の伝達はまぁ、傍受も糞もないけど、いろいろと便利なのよね。


「ええ、機体の強度、パワー共に問題ないわ」

私は面倒なので拡声機を使い返す。


「うむ、優等生じゃが面白味に欠けるが……新兵が使うにはもってこいじゃの」

ビルもまた、私と同じように同じように拡声機で返した。


「そうか、なら次はキャリバーの武装の確認に移ってくれ、一旦機体とのリンクを切り、計器類の武器カテゴリのスイッチをオンにして、再リンクを頼む」


「ややこしいわね……」

そう私は呟いた後、機体とのリンクを切り、計器類の中にあるスイッチをオンにし、再度リンクをする。


<両膝部内蔵兵器、スチームパイルを発見しました>



<両腕内蔵兵器、ワイヤーダガーを発見しました>



「完了したわ」

MAOSから文字が表示される、読めないけど、大体それが機体の内蔵兵器が起動したことを示していた。


「ありがとう、次は500m程度前進を頼む、ここでは危険だ、ビルも離れた方がいい」

危険って……一体どんな凶悪兵器かと、私は考えながら、キャリバーの足を進め、ある程度仲間達が遠く見えたら、立ち止まる。


「博士、ここでいい?」


「ああ、問題ない、まずはスチームパイルからだ、これは肘の杭を蒸気の高圧力で高速射出する攻撃だ、とりあえず自分の足の杭から射出する事をイメージしてくれ」

スチームパイル……肘のこの武器ってただの隠し武器じゃないのね……そう私は思いながら、杭が飛んできても大丈夫なよう起立し、そして右足の杭が高速で射出するところをイメージする。

次の瞬間、固い鉄がぶつかる音とともに、機体の腰まで巨大な槍が一瞬にして射出された。

足が、その衝撃で少し震える。

射出された槍は少し間を置いて高速で元の膝から少し飛び出た状態に戻る。


「……揉み合いの時の格闘戦に使えそうね、動作は問題ないわ」

そう私はいいながら、もう片方も起動する事を確認する。


「ああ、次はワイヤーダガーだ、これは腕部に仕組まれたダガーを展開するものだが……通常の仕様なら射出愚痴に手が当たらない様にしつつ、手の甲の上から刃を出すのをイメージするだけでいい、その後、その刃が飛ぶのをイメージしてくれ」


恐らくこれが博士の言う危険な代物だろう、そう私は考え両手を前に伸ばし、まず刃を出す事をイメージすると、すぐに腕部から尖った分厚い刃が出てきた。

そして次に、高速で飛ばす事をイメージする、すると次の瞬間、さっきのパイル程ではないが、結構な速度で刃は直進し、段々と勢いが萎え、地面に落ちる、刃には手で持てるための柄があり、柄と機体は名前通り蒸機鎧から見れば細いワイヤーで繋がっていた。


「射出完了したわ」


「ああ、それは射出して敵を貫くためのものでなく、鎖鎌のように使うためのものだ」


「なるほどね……じゃあ、やってみるわ」

私は強引に射出した方の腕を、力いっぱい振り回す。

すると空を切る音とともに、目に見えない速度でダガーは動き、そして近くにあった岩に当てるとまるでクッキーのように軽く砕く。

ワイヤーは長く、射程として100mぐらいなら何とか射程内にあり、近距離戦闘ではこれを上手く使えば、パイルと同様かなり効果的のように私は感じた。


「なるほど、悪くないわね……」


「ああ、機体のデータはこちらでも確認できた、想定以上だ、さて……次は既存の蒸機鎧用火器が使えるかどうかのテストを頼む」


「ええ、解ったわ」

私はそう言いながら、次のテストを行う準備を始めた。


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