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その1

自由と正義を賭けた南北戦争も既に終結して5年。

アメリカも戦火から復興して、破壊された蒸気列車の車両網は徐々に修復されてきている。

私たちの住むニューヨークも徴兵騒ぎとかあって昔は一人で散歩ができないぐらい危なかったけど、今はもうその面影も残さない程に平和になった。


私の名前はキャロル・ホリディ、パパはあの北軍の英雄にして最強の蒸気仕掛けの5mの有人鉄巨人である蒸機鎧スチーム・アーマーの使い手とされるジョン・ホリディ大佐。

私自身も民生品の蒸機鎧を用いたレース……スチームレーサーの東海岸グランプリにて去年全国一位を取るぐらいの……ま、見事なまでの蒸機鎧乗りのサラブレッドって所ね。

そんな私が通うのはニューヨークのマンハッタンにあるアイアンハート高校、まぁ、本当にお嬢様高校って名前じゃないわよね……

実際お嬢様学校じゃなくてごく普通、レベルも普通の学校だけど、これは単に、パパがたたき上げで若い頃は士官学校で猛勉強して指揮官になってそれで更に蒸機鎧を駆って前線で英雄と言うべき活躍をした……要するに努力の人だから華やかなお嬢様学校なんて見学したらその後に家で吐いてしまってそして私にこう言ったのよ。

「あんな所に居たらキャロル、お前の性根も腐ってしまう、高校はせめて普通の学校に行ってくれ」

真顔でそう言われた時は当然私は反発したわ、ママもちょっと文句の一つ二つ言ったけどパパは譲らない様子で学費はビタ一文出さないとまで言いだしたから仕方が無く、こんな普通の高校暮らしなのよね……ま、退屈じゃないからいいけど。


そんな私は今日もいつも通り朝起きてゆっくり食事を食べて、そうしていたらママに「もう行かないの?」って言われて時計を見て、いつも通り結構きつい時間だったから慌てて茶色のブレザーとチェックのスカートが可愛い制服に着替えて顔を洗い、鏡できちんと金色のウェーブヘアーに青いくりっとした瞳、そばかすがチャームポイントの眼鏡の美少女が居るのを確認する。

その後家の庭にある蒸機バイクに乗り、エンジンの鍵を入れた。

蒸機エンジンが水蒸気をマフラーから吹き出し、もわっとした感覚になりつつも、私はバイクでの通学を開始した。


道路を走って居れば蒸機も風に流され、逆に風があたっていい気分になる。

ヘルメットが暑苦しいのを除けばバイク通学は悪くない。

バイクはまだ世の中に出たばっかりで、一種のお金持ちのステータスみたいな所があるから珍しがるクラスメートはいいとしても盗もうとする子まで来るのが困りものなのよね……ま、そんなのは私の自慢のアイキドーでぎったんばったんにねじ伏せたけど。


 そうして私はすぐに学校にたどり着く。

徒歩で行けば結構な時間はかかるけど、バイクで行けば案外すぐたどり着くものというのはいいわね。

「あ、キャロル姫今日も遅刻寸前?」

学校の自転車置き場にバイクを置くと、陽気な女の子の声が後ろから返ってくる。

声の主はリン・ファオン、チャイナって所からの移民みたいで黒い髪が凄い神秘的な雰囲気の子ね。

「ええ、何時もギリギリ、でもギリギリでも遅れなきゃ問題ないでしょう?」

私はにっこり笑って彼女の冗談に返す。

「あはは、さっすがお嬢様だ……大物だねぇ」

リンは頷きながら苦笑いを浮かべる。

「大物は私のパパよ、私は割りと普通の高校生、でしょう?」

リンにそう返し、私はすたすたと教室まで向かう。

懐中時計を見ると、残り時間はあと5分、走ればいける、そう考えた私はすぐに校内に入る。


既に教室内に生徒たちは入っているのか、廊下に人の気配はない。


ヤバい、そう私は感じ全力で走り抜ける、行き先は1年のAクラス、ドンドンと足を進め、進め、進め、そして階段を駆け上がりその看板が見え、そこに入る扉の前を通り過ぎそうになり急停止、転びそうになるけどバランスを保ちそして扉をガッと開いて──


その瞬間、黒板消しがガッと目前に飛んできた。


「あうっ……」

黒板消しは私の顔面にクリーンヒットし、体制を崩した私はそのまま前屈みに倒れた。

とっさに受身をとったけど、少し背中が痛い。

「遅いぞキャロル!10分オーバーだ!」

きつい男の声……私の担任、ジーク先生のの声が聞こえる。


10分オーバー、その言葉が意味することはただ一つ。


セットしてあった目覚まし懐中時計の時間が、思いっきりズレていたということだった。

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