その8
格納庫に足を広げ待機してあった2つの機体、それは確かに最新鋭の機体であり、どちらも<ウェスト・オブ・ピースメーカー>の曲面が多く、首元にある2本形の蒸気パイプが特徴的なデザインとはまた違ったデザインの機体であった。
1機目はは黒を基調としたカラーに橙色のラインが特徴的な、無骨で直線的なパーツが多い、工業製品的なデザインの機体。
だけどもう1機の機体は……同じく直進的なラインであるものの、もう一つの機体より一回りぐらい大きく、肩部の装甲は出っ張っており、膝の部分には格闘戦に使うと思われる杭のようなものが出ており、頭部はまるで王冠をつけた騎士のような形となってい全身のて装甲は複雑に何層も重ね着しているかのような。威圧感たっぷりの大型機であった。
その背には棺桶のような巨大なウェポンラックが取り付けられており、こんなのが敵として出てきたら大抵は怯え泣くだろうと私は考える。
なんかこう、無理やり二世代ぐらい飛び級したような機体に見えるわ……
「最新鋭機ですね、試作機ですか?」
来夏が博士に聞き込む。
「隊長機は試験生産機、ビルの機体は先行量産型だ」
そう博士は言うけど、私の機体ってこの鋼の城みたいな銀色の機体なのかと、不安になる。
「博士、私の機体はどちら?」
できれば大きい方はビルの方に乗ってもらいたいなと、正直考える。彼の方が経験豊富だし強い機体も使いこなせる筈よ。
「見てわからないのか?巨大な方だ」
「……」
だが現実は非情であった。少し何もいえず黙り込む。
「機体名は<ジャンゴ・オブ・キャリバー50>、次期米軍の主力をそちらの<パトリオット・オブ・ガバメント>と供に担う予定で私が制作した機体だ。ガバメントはシンプルかつ、ピースメーカー以上の性能と、コストパフォーマンスの良さを実現したため量産は決定した」
「ふぅむ、ワシはピースメーカーで良かったんじゃがの。まぁ機体に慣れるのも任務と言う事か」
「キャリバーには様々な新機軸が搭載されていて、これの操縦系統は部隊長専用のものを使ったタイプだ……この操作系統もおそらく今後、上手く行けば主流になるものだと考えていい」
「でも……ちょっとデザイン、悪役すぎない?」
うん、外装ぐらいなら博士に頼めば交換してくれると信じよう。
いくらなんでもあんな機体でテロリスト相手に暴れたら国民は喜ぶ所か恐怖に慄くわ。
「……そうか?来夏軍曹、どう思う?」
「え?男の子が好きそうでかっこいいと思いますけど」
いともたやすく行われるえげつない行為とはこういう事を指すのだろうかと私は考える。
この女の子は上官がこのデザインに明らかに引いているのにそんな事を考えずに、単に自分の思った感想、しかも最悪の答えを出した。
「なら問題は無いな。では隊長、機体に乗ってみてくれ。インタフェースの説明を行う」
そう言って博士は機体の操縦キーを私に手渡す、もうどうにでもなれと言う気分だ。
「……はぁ」
キーを受け取り、私はため息をつきながら座り込んであった機体のハッチを開けコックピットに入る。
コックピットの形はあの黄金鎧と似たような感じであった。
だが他の贋作鎧と同じくグラブスティックとレッグペダルがある。
この2つは蒸機鎧を動かすには必須の装置で、グラブスティックは名前とは裏腹に上からぶら下がったガントレット状の装置で、手にはめればその動きを蒸機鎧がトレースするようになっている。
この操作は結構難しく。でも数週間かければ誰でも銃を持って撃つぐらいはできるようには作られている。
レッグペダルは単純で、足にはめ込むような感じになっており、これによりパイロットの足の動きをトレースし歩くことが出来るようになる。
これも操作に癖が強く、最初に乗れば大抵のパイロットは転ぶというものね。
私は座席に座り、シートベルトを締める。
座席は固かった。
「インタフェースとしては普通に思えるけど……」
そう思いながら私は様々な計器のチェックを行い、その後少し起動する。
様々なメーターが立ち並び、MAOSの表示とだぶってちょっとうっとおしく感じた。
「何をやっている、早くプラグを耳の裏のコネクタに繋いで起動てくれ」
博士の声がしたから、私はプラグを探す……すぐにそれは見つかった、座席の両側面の上側からぶら下がっており、太いケーブルで作られており、簡単な衝撃で外れそうには見えない。
引っ張るとケーブルは収納されていたのか伸びてきて、私は両耳の裏側にあるコネクタに接続する。
カチリ、という音がしたけど特にくすぐったい感覚には襲われなかった。
「何なのこれ?」
流石に自分と機械を接続して、どうするかは私には解らない、新しい操作方法というのにちょっと不安感を覚える。
「キーを入れろ、そうすれば解る」
博士の答えはまた意地悪なものだった、ひょっとして私に本当に意地悪のつもりでやっているんじゃと思えてしまう。
けど気楽にやろうと私は決め、そして私はキーを刺し、エンジンを起動する。
<ユーザー03とのシステムリンク可能なリボルビング・ソルジャー……以下RSが1機があります……機体側とのリンクシステム選択可能、RS側からの選択要求発生、RSのチェック……問題なし、システムを選択します>
MAOSが文字列を吐き出し、次の瞬間、視界が光りに包まれた。
<システム選択終了、以後利用者にこのシステムの影響により深刻な状況が発生した場合、即座にシャットダウンします>
<弾薬数、把握、RSの状況把握>
視界の光が収まると、そこは格納庫の外だった、でも感覚が違った、腕を動かす、腕はそう、あの機体の腕だった。
「これは……」
私は驚く、自分の意識が蒸機鎧に移ったのだ。
「ああ、視界と肉体制御に関する情報を君の体から、その機体に移した。コネクタを抜けば元通りになる」
なるほどと私は思った、確かにこれなら通常のペダルとスティックを使う操作方よりも複雑な動作が可能になる、それは機体の操作の習熟時間を、相当短縮する事になる。
でもやっぱり、このシステムを使うのならもうちょっと怖くない、できればかわいい機体にしてほしかったわね……
そう思いながら私は立ち上がり、何歩か歩き、体を動かす。
格納庫の機材を壊さない様に地味に肘を稼働させたり、スクワットをしてみたり、首を動かしたりだ、首はちょっと曲がり過ぎて怖くなったけど、後ろまで見れるというのは便利かもしれないと思った。
そしてちょっとした稼働テストが終わると、また元の位置で足を広げ座る。
「えーと、システム終了するならどうすればいいの?」
だが、どうやって停止するかはわからなかった。
「もういい終われと念じろ、それだけでMAOSが終了させてくれる」
私はすぐに博士の言われた通り、このシステムが終了しろと強く念じる。
<RSとのリンクシステムの終了要求を受け取りました、視界と制御ボディを通常のボディのものに戻します>
そうMAOSの表示が出て、視界は元に戻った、エンジンはまだついているから、私はすぐに切ってハッチを開け、機体から降りた。
「凄い機体ですね……全部が実用化されたらものすごい事になりますよ!」
来夏が興奮しているのか私に声をかける、ひょっとしてああいうロボットが好きなの?
「そうね、確かにいいインタフェースね……」
「ああ、この機体をフルに使いこなせば通常のピースメーカーなら100機がかりでも問題ない、いや、真作鎧にすら匹敵するだろう」
そう自身満面の表情で博士は言う、確かにこれだけの機体なら、アレンを倒せるかもしれない……そう、私はこの時考えた。
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