その5
司令室はもう夕方になったのか夕陽がブラインドの隙間から差し込まれ、司令のテーブルには特に使われた痕跡のない灰皿が置かれており、その周囲は様々な書類入れが置かれていた。
全体的に家具は木製のシックな雰囲気の部屋で、絵画も壁に置かれており趣味としては悪く無かった。
司令はすぐに棚から書類を取り出し、私に渡した後に司令の椅子に座る。
資料は要約すれば、近年大規模な軍隊を動かそうにもお金が無いため小規模の精鋭部隊を作ろうという話であった。
「さてと……君にやってもらいたいのはそう、対テロリスト用の特殊部隊。その隊員となってもらう事だ」
「対テロリスト用?」
「ああ、逆卍党と言う日本の過激派武装勢力、アレン率いる南軍の残党、どれも軍隊と言うには小規模すぎ、大規模な軍を動かしても効率が非常に悪い……だからこちらも少数精鋭で対抗するために兵力が必要と言う事なのだよ。そして君は南北戦争の英雄の娘だ、君が率いるとなれば兵の士気は上がるだろう」
「……えーと、私軍隊に入って戦った経験は無いですよ?」
アレンと逆卍党と戦えるという言葉は私に魅力的だった。
パパや友達を酷い目に遭わせた組織だ、許せるわけがない。
だけど戦えるかと言われたら別だった。
あの日、アレンの早撃ちの前に私は負けた、それで今、力を手に入れたけど勝てるかと聞かれたら、勝てるわけがないと考えてしまう。
正直言えば、また戦うなんて怖い話だった。
「だが君の実力はさっきのテストで十分即戦力に成り得ると判断した。それに3か月ぐらいは訓練期間は渡す」
その言葉に少し私は楽になった、いきなり戦場に叩き出される訳ではないからだ。
「3カ月って……ないよりマシですけど、短いですね」
「通常の徴兵と同じ訓練期間だが君の体力は萎えもしないだろう。からその分技能と指揮の訓練を毎日15時間はやってもらうぞ?」
司令はニヤッと笑いながら言う、それだけ考えているなら大丈夫かと、私は思った。
だけど、決断するのはできなかった。ママに再開した時の顔を思い出す、泣いていた、私が戦場に出て、死んだらきっとママは悲しむ。
復讐はしたい、けど、私はママを悲しませる決断はできなかった。
「すいません……1週間、待ってくれていいですか?」
時間稼ぎの言葉を、私は出す。
「ああ、今ここで全部決めろというのも矢張り無茶な話だろう……済まない、私も焦り過ぎたようだ」
司令は私に謝罪の言葉を言う。
「いえ、謝る事は無いですから……すみません、心の踏ん切りがつかなくて……それでは、失礼します」私はそう言った後、司令室から去った。
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