その3
まず博士のラボから出た途端に、ママにいきなり抱きつかれて私はびっくりした。
「キャロル……大丈夫?機械の体になってもママの事覚えてる?」
「覚えてるわよ……」
そう、私が言うとママはギュッと抱きしめ、涙を流していた。
パパが死んで、家族は私とペットの犬ぐらいしかいから、何もかもを奪われ、ただ涙を流すことしかできないやるせなさ、それは私にも、ママの抱きしめる力で痛いほどわかった。
ママの車にのって、家に帰る中、ニューヨークの町が凄く目新しく見えた、仮死状態になった時に見た夢が長すぎたから何十年ぶりに見たと言う感覚で、兎に角懐かしかった。
家につく、家には私と、ママのバイクがきちんと駐車場に置かれていた。
「バイク、また乗れるわね」
ママが私に言う。
「……ごめんなさい、勝手に使ってあんなことになっちゃって」
私はその言葉でママに、散々悲しい思いをさせてしまったと感じ、謝った。
「いいのよ、私がキャロルだったら同じことをしてたし、こんな姿でも生きていたもの」
ママは微笑んで、私を許した。
家の中に入り、カレンダーをちらっと見ると、あの日から3か月も経過していた事が解った。
長い間夢の中に居たのに、3か月しか経過してないと考えると、少しおかしな気分になる。
その日はママの作った夕ご飯を食べた。
料理はポトフにフランスパン、シンプルなメニューだったけど、おいしかった。
「味、ちゃんと感じてる?」
ママは不安がった顔を浮かべる。
「うん、味覚もちゃんと再現されてるわよ?」
私は不安にさせないように、笑顔を作った。
そうして食事を終えると、私は部屋に戻り私の体の説明書を読み始める。
大体ボディに関しては問題無く日常生活が可能だと再確認して、燃料にいい素材などを把握する。
そしてどんどんと読み進めていくと、MAOSの表示されているであろう計器類についての情報が出てくる。
その計器類は微妙に私の視界に表示される計器類と違うけど、大体体内のアカシャ粒子の貯蔵量を示すバーと、人体の状態を選択するパネルについて確認する。
また、パワーに関してもドンドン力が欲しいと考えれば力はどれぐらいでも出せる事は出せるが、今はリミッターをかけてあるから常人の二倍程度しか出せない様になっているけど、解除するやりかたも書かれていたので一応把握する。
「……明日からどうしよう」
私は大体一気にマニュアルを読み終え、テーブルに置くとベッドに大の字で倒れこむ。
窓から見える夜空は綺麗で、3つの月は全て満月だった。
その中の青い月に、私は目を移す。
夢の中で住んでいた月、ごつごつした青い岩肌の世界。
「あれ、ただの夢だったのかな……」
そう私は呟くと、目を閉じ、早く眠りたいと念じる。
眠る時間は大体午前6時30分まで、細かく考える。
<スリープモード発動、起床時間6時30分に設定されました、10秒後起動します>
MAOSから結局よくわからない文字列が視界に表示され、マニュアル通り起動した事を確認すると、私はすぐに眠りに落ちた。
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