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仕送り十万円ですのに、なぜ生活が破綻するのですわ?  作者: 櫻木サヱ
お嬢様、働けばよろしいのですわ

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9/14

その服装、自由ではありませんの?

初出勤の日。


エレナは、鏡の前に立っていましたわ。


「……これは……」


手にしているのは、スーパーの制服。

ポロシャツに、エプロン。

色は実用一点張り。


「制服とは……個性を抑制するものですのね」


そう呟きながらも、きちんと袖を通します。


「……着ましたわ」


鏡に映る自分を、じっと見つめて。


「……不思議ですわね」


九条院家のドレスとも、学校の制服とも違う。

けれど、妙に違和感はありませんでした。


出勤。


バックヤードに入ると、山田さんがいました。


「おはようございます」


「ごきげんようですわ」


「……あ、うん。おはよう」


軽く挨拶を直される。


「今日は、品出しからお願いします」


「承知しましたわ」


台車に積まれた段ボール。


「……持ち上げる、ですの?」


「はい」


エレナは、慎重に箱を持ち上げました。


「……重たいですわ」


「無理しないで」


「ですが」


エレナは、歯を食いしばります。


「わたくし、働きに参りましたの」


よいしょ。


持ち上げ方が、妙に綺麗でした。


「……姿勢、いいな」


「育ちですわ」


品出し。


棚に並べる。


「こちらが……三十八円……」


もやしを置きながら、しみじみ。


「昨日は、お世話になりましたわ」


「自分で並べると、見え方違うでしょ」


「ええ」


「……尊いですわね」


「え?」


「この価格で、この存在感」


山田さんは、少し笑いました。


次は、レジ補助。


「レジは、今日は見学だけ」


「承知しましたわ」


ピッ。


ピッ。


商品の音。


「……この音、心が整いますわ」


「そう?」


「ええ」


途中、客が来ました。


「すみませーん」


「はい」


反射的に、エレナが答えます。


「こちら、どこですの?」


「えっと……」


一瞬、考えて。


「……お豆腐売り場は、あちらですわ」


自然でした。


山田さんが、目を丸くします。


「……接客、向いてるかも」


「当然ですわ」


初日の業務が終わり。


「お疲れさまでした」


「お疲れさまでしたわ」


着替えながら、エレナは呟きました。


「……立っているだけで……少々、疲れますわね」


「慣れますよ」


「慣れる、ですのね……」


帰り道。


夕暮れの中、エレナは思いました。


「ですが」


「悪くありませんわ」


労働は、

確かに、重たくて、

でも、少しだけ誇らしい。

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