表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕送り十万円ですのに、なぜ生活が破綻するのですわ?  作者: 櫻木サヱ
自立とは何かを考えますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/26

お嬢様は、お嬢様ですわ

朝、鏡の前でエレナは制服の襟を整えていました。

動作はいつもどおり、背筋も伸びている。

それでも、鏡に映る自分に、どこか違和感を覚えます。


「……少し、庶民に寄りすぎましたかしら」


節約。

バイト。

まかない。


それらは確かに生活を助けてくれました。

けれど同時に、

「合わせよう」としている自分がいたのも事実です。


学校の廊下で、数人の生徒がひそひそと話す声が聞こえました。


「相変わらず、あの子の喋り方すごいよね」

「キャラ作ってるのかな」


エレナは足を止めませんでした。

聞こえないふりも、言い返しもしない。


「……事実ですもの」


教室に入り、席につくと、

隣の生徒が少し困った顔をします。


「その……やっぱ、その喋り方、直さないの?」


エレナは首を傾げました。


「なぜ、直す必要がありますの?」


「いや、なんか……浮くっていうか」


エレナは一瞬考えてから、穏やかに答えました。


「浮くことと、間違っていることは、別ですわ」


相手は言葉を失います。


「わたくしは、無理をして庶民になるつもりはありませんの」


それは、初めて口にした宣言でした。


放課後。

まんぷく亭でのこと。


エレナは、無意識に言葉を崩しかけている自分に気づき、

一度、息を整えました。


「……ご注文、承りますわ」


山田さんが、にやりと笑います。


「戻ったね」


「戻る、とは?」


「エレナちゃんらしさ」


エレナは、少しだけ胸を張りました。


「わたくしは、わたくしですもの」


常連のおじさまが頷きます。


「嬢ちゃん、その調子だ。

 無理して変わる必要なんかない」


「ありがとうございますわ」


その言葉は、素直に受け取れました。


夜。

アパートの部屋。


エレナは、ノートを開き、今日の出来事を振り返ります。


節約はする。

働くこともする。

庶民の知恵も学ぶ。


けれど。


「品まで削る必要は、ありませんわ」


そう書き添えて、ペンを置きました。


「ですわ、という言葉は……」


少し考えて、微笑みます。


「わたくしの背骨ですわね」


誰かに合わせるためではなく、

自分を支えるためにあるもの。


灯りを消す前、

エレナはもう一度、鏡を見ました。


「お嬢様は、お嬢様ですわ」


静かにそう言って、

満足そうに頷いたのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ