表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕送り十万円ですのに、なぜ生活が破綻するのですわ?  作者: 櫻木サヱ
自立とは何かを考えますわ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/26

お金の使い方も学問ですわ

月初め。

エレナは机に正座し、封筒を三つ並べておりました。


「……仕送り、十万円」


声に出すと、やはり重みがあります。


「お金とは、数ではなく……敵ですわね」


まず家賃。

次に光熱費。

そして食費。


計算機を叩くたび、エレナの眉が寄っていきます。


「……余りますの?」


一瞬、希望が灯りました。


しかし次の瞬間、

教材費、交際費、日用品――

小さな出費が雪崩のように襲ってきます。


「……余りませんわ」




エレナは、紙いっぱいに家計簿を書き散らしました。


・食費は削る

・無駄遣いはしない

・贅沢は禁止


「完璧ですわ」


そう言い切った直後、

冷蔵庫を開けて、固まりました。


中には、豆腐と卵と、

なぜか高級そうな紅茶だけ。


「……なぜ、紅茶だけ立派ですの」


昨日、無意識に買っていたのです。

値段を見ずに。


「庶民の節約とは、紅茶を我慢することでは?」



昼休み。

エレナは購買の前で立ち尽くしていました。


「安いパン……ですわ」


手に取って、戻す。

また取って、戻す。


「ですが、これは……」


成分表示を読み込み、

首を傾げます。


「栄養的に、これ一つで一食……?」


結局、何も買わずに教室へ戻りました。


「節約、成功ですわ」


なお、お腹は鳴りました。



放課後。

まんぷく亭。


「今日、まかないあるよ」


山田さんの一言に、

エレナの目がきらりと光ります。


「……ありがたき幸せですわ」


皿に盛られた定食を見て、

エレナは思わず息を呑みました。


「これが……一食……?」


ご飯、味噌汁、主菜、副菜。


「家では、豆腐が主役でしたのに」


箸をつけると、

体の奥に温かさが広がります。


「……」


山田さんが様子を見て笑いました。


「ちゃんと食べないと、節約にならないよ」


「……節約とは、耐えることではありませんの?」


「続けること」


即答でした。


「食べて、動いて、また働く。

 それが一番安上がり」


エレナは、箸を止めました。


「……学問ですわ」



夜。

アパートの廊下で、

大家さんとすれ違います。


「今日は元気そうだね」


「ええ。まかないという文明の利器を得ましたわ」


大家さんは吹き出しました。


「家計簿、つけてる?」


「つけておりますわ。

 ですが、削り方を間違えている気がいたしますの」


「じゃあさ」


大家さんは、壁に貼られたチラシを指さします。


「削るより、整える、かな」


「整える……」


「必要なところには使って、

 無駄なところを見極める」


エレナは、ゆっくり頷きました。




部屋に戻り、

エレナは家計簿を書き直します。


・食費:削りすぎない

・まかない:最大活用

・紅茶:一週間に一度まで


「……紅茶は、嗜みですわ」


そう書き添えて、満足げにペンを置きました。


「お金の使い方は……」


エレナは小さく微笑みます。


「生き方そのもの、ですわね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ