朝は平等に眠いですわ
目覚まし時計が鳴りました。
「……もう、朝ですの……?」
エレナは、布団の中で身じろぎします。
九条院家では、起こされる側でした。
今は――起きる側。
「……時間……」
時計を見る。
「……早いですわ……」
昨夜のバイト。
立ちっぱなし。
帰宅して、もやしを炒めて、洗い物。
「……眠いですわ……」
ですが。
「遅刻は……いたしません」
気合いで、起きました。
制服問題。
学校の制服と、スーパーの制服。
二種類が、部屋に並んでいます。
「……用途別、ですわね」
朝食は、トースト半分。
「贅沢は……休日に」
登校。
教室に入ると、ざわっとします。
「おはよー」
「おはようございますわ」
いつも通りの口調。
「……あれ?」
クラスメイトが、首を傾げます。
「なんか……雰囲気違わない?」
「そうですの?」
「ちょっと……生活感?」
エレナは、微笑みました。
「気のせいですわ」
授業。
板書。
「……集中……」
ですが、瞼が重い。
「九条院さん」
先生の声。
「はいっ」
「……寝てました?」
「いいえ」
即答でした。
昼休み。
弁当箱。
中身は――
もやし。
もやし。
もやし。
「……もやし率、高くない?」
「栄養は、摂取しておりますわ」
「……それ、信じていいやつ?」
「たぶん」
午後。
体育。
「……」
「九条院さん、顔色悪いよ?」
「問題ありませんわ」
全力で、強がり。
放課後。
友人が声をかけます。
「ねえ、今日どっか寄らない?」
「……申し訳ありませんわ」
エレナは、少しだけ視線を逸らしました。
「予定が……ありますの」
「えー、なにそれー」
「労働、ですわ」
「……え?」
空気が、止まりました。
「……バイト?」
エレナは、しまった、という顔をしました。
「……ええ」
「……ええええ!?」
こうして――
お嬢様の秘密は、
少しずつ、揺らぎ始めたのでした。




