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6.新生活開始 (ブーイング)

「今日は王宮に行くんですか?」


おぉ、正装したエミディオ様は格好良いな。

鍛えてるのかな。筋肉あるものね。


「あぁ、財務局に顔を出してくる」

「あれ?辞めたんじゃなかったの?」

「そのつもりだったんだがなぁ。丁度その頃、仕事がやり辛いから体制を変えようと色々意見を出していて。そしたらそれを局長に気に入られてまとめ上げろと言われたんだ。

なぜ辞める私にとも思ったが、効率化は大事だし。仕方がないから完全には辞めず、体制改革の責任者として残ってるんだ。

それも終わったから解放してほしいんだが、何だかんだとこき使われている状況だ。

今日は定例会に出席してくる。

アリーチェはどうする?」


へぇ、優秀だって聞いてたけど本当だったんだ。

ノーラが言ってたのよね。ぼっちゃまは優秀だけど、中身が残念でモテないから心配しないで下さいって。

いやそれは心配しなくちゃいけないのでは?と言ってしまって笑われたわ。


「私はそろそろ奥様としての仕事を覚えたいかな。誰に教えてもらったらいいの?」

「もう始めるのか。大丈夫か?」


それは何の心配なのさ。


「今は伯爵家の采配は母上がしている。本当に覚えるなら教えを請わないといけないが……。

だが、まずは基本的なマナーを勉強したらどうだ?そのうち客を招いたり、逆に訪問したり。あとは手紙などのやり取りもある。

いきなり実務に入るより、まずは伯爵家の嫁としての振る舞いが出来るようになる方が大切だろう」

「マナーかぁ。やっぱり今のままじゃダメ?」


ちょっと苦手分野だわ。いっそ帳簿付けとかの方が得意なんだけど。


「そうだな。基本的に人は見た目でまずは判断する。次に会話である程度のレベルを見極める。

マナーがなっていないのは損をするぞ。私はあまりパーティーなどには出ないが、最低限の付き合いはあるし。

身に付けておいて損は無いものだ。頑張ってみないか?」


そっか。いつか離婚して平民になったとしても、マナーがしっかりしている方がいい仕事につけるかな。


「分かったわ。教えてくれる人を紹介してもらえるかしら」

「分かった。今日はトビアにこの家の歴史でも習うといい。自分の家の事を何も知らないのはさすがに良くない。まぁ、無理の無い程度に頑張りなさい」

「はーい」

「淑女の返事は?」

「はい、承知いたしました。エミディオ様」


本当に父親か!今日から堅苦しい生活になるのね。未来の自分の為だと思って頑張ろう。


「では行ってくる」


チュッ


「ぎゃ!何するの!?」

「?挨拶だろう。家族でもするよな?父上達はいつもしているぞ。それに母上は私達にもしていた」


えー、挨拶で頬にキスするの?知らなかった。


「ん、じゃあ屈んで。届かないわ」


ちゅっ!


「いってらっしゃい。頑張って来てね!」

「ああ、君もな」

「だから頭を撫でるの下手!どうしても撫でたかったら結ってない場所にしてよ」

「はいはい。じゃあな」


こんなふうに家族のお見送りをするなんて初めてかも。

やっぱりあの家はダメだったんだなぁ。


「若奥様、どうなさいました?」


若奥様……響きがくすぐったいわ。なんだか恥ずかしい。

最初はお義母様が大奥様、私が奥様だったのだけど、年寄りになったみたいで絶対に嫌だと拒否されたのだ。


「何でもないわ。今日はトビアに伯爵家の歴史を習うように言われたのだけど」

「そうなんですね。では準備するように伝えておきます。少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」

「もちろんよ。私はそれまで図書室にいるわ」


ここの図書室はとても立派で嬉しい。

子爵家はお金が無くて王都の学園には通えなかった。私は隣のサルヴォ領にある平民も通う学校に通っていたのだ。それすらも途中で辞めさせられたけど。

だから私は時間さえあればサルヴォにある図書館に通って自力で勉強した。たまに会う友人が学校で学んだ事を教えてくれたりして。

そういえば結婚が急に決まって、色々バタバタしてたから、友人に何も伝えずにここまで来てしまったわ。

心配してるかしら。よし、せっかくなら手紙のマナーを教えてもらったら近況を報告しようかな。


「これはこれは、お義姉様ではないですか」


げ、ガヴィーノだ。この人苦手なのよね。


エミディオ様の弟のガヴィーノ様は、本当に性格が悪かった。

外見は栗色の髪に明るいブルーの瞳。お義父様に似て優しげな顔立ちです。

ちなみにエミディオ様はお義母様似だ。お義母様はとっても美人さんなのに、似ているはずの息子は強面なのが不思議よね。

でもガヴィーノが優しげなのは顔だけ。口を開くと嫌味だし、エミディオ様に劣等感を持っているのがまるわかり。ようするに浅慮なのよね。表に出さなければいいのに。

コレに当主の座を渡したくないのは良く分かる。


「ごきげんよう、ガヴィーノ様。私に何かご用ですか?」

「は!気取ってるなぁ。当主になる為に金で買われただけのくせに」


うざっ、破落戸(ごろつき)かしら。


「用が無いようなので失礼しますね」


馬鹿は相手にしない。時間の無駄だ。


「なんだよ、金じゃなくて体で落としたのか?そんな貧相な体付きが好きなのか、兄上は。幼女趣味かよ!」

「そういうあなたも魅力に欠ける体ですね。もう少し筋肉を付けた方がいいのでは?」

「なんだと!」

「言われて嫌な事を人に言うのは止めなさい。義姉からの忠告です、では失礼します」


火に油を注ぐと分かっていても止められない。このまま行かせてくれるかな。


「待て!ふざけるな!!」


ダメか!こういう時は──

ダッシュで逃げるっ!



「あっ!?おい、逃げるな!」


いや、逃げるよ逃げますって!


「男の足に勝てると思うなよ!」


腕痛っ!どんだけ力を入れてるの!


「きゃーっ!襲われるーっ!助けてえっ、義弟に犯されてしまうわっ!

だ─れ─か─き─てぇ──っつ!!」

「お前!馬鹿か!」


まかせて、大声は得意よ!淑女は小声?身の安全の方が大事です!!


「ほら、人が来ますよ」

「~~っ、覚えてろよ!いつか殺すっ!」


ふん、なんて間抜けな逃げ口上なのよ。

でもとりあえず逃げ切れたわ。疲れた~!






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― 新着の感想 ―
逃げ足と大声は淑女の嗜みですね。
襲われるーっ、で吹き出してしまいました(笑) 酷い環境で育ってきたのに、明るくて強くて救われます
いざというときに大声出せるのは偉い!!でもそれもいざという時が何度もあったってことですよね…。 声を出さなくてはいけない時があった時、喉が詰まって大きな声が全くと言っていいほど出せなかったので、本当に…
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