表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/39

3. 初めての二人の朝 (2回戦・ドロー)

「おい、アリーチェ。いい加減起きてくれ」

「……へ?」


せっかくぬくぬくと気持ちよく寝ていたのに起こされてしまった。もう誰よ……


「おはよう。そろそろ放してくれないか」


……はなす……何を……


「あれ、エミディオ様?」


ぎゃ!なんでこんなにくっついてるの?!


「私、襲われてる?」

「違うから。襲ったのは君だ」


確かに。どうやら私が抱きついていたらしい。しっかりと彼に腕を回しているではないか。ぬくぬくの正体がまさかのエミディオ様だとは……


コンコンコン


「旦那様、お目覚めでしょうか」

「あぁ、入ってくれ」


え、なんで?


「失礼致します。洗顔用のお湯を持ってきましたが、お風呂を準備した方がよろしかったでしょうか?」

「そうだな、そうしてもらおう。入浴後に軽い食事を準備してくれ」

「かしこまりました」


私がエミディオ様にくっついたまま固まっていると、侍女さんと目が合う。微笑ましそうにニッコリとされてしまった。


「奥様、お食事は召し上がれそうですか?」


え、どういう意味?


「そうだな、とりあえずはフルーツを用意してやってくれ」

「かしこまりました。お風呂の支度が整いましたら呼びに参ります。失礼致します」


パタン


「……ねぇ、どうして部屋に入れちゃうのよ」

「君が言ったのだろう。既成事実を見せ付けなくてはと」


言った。確かに言ったわ。でも!


「こんな状態を見せなくてもいいじゃない!」


こんな、こんなエミディオ様に抱きついてる所を見られるなんて!

固まっていた体を動かし、エミディオ様から離れる。なぜあんなにしっかりと抱きついていたのか……


「どうみても仲良し夫婦だったから問題ない」

「……そうですね」


何か大切なものを失った気がするわ……


「あ、そうだ。ナイフか何かありませんか?」

「ペーパーナイフならあるが」

「貸して頂いても?」

「もちろん、だが何に使うのだ?」


それはですね、よっと


「ちょっと待て!何をする気だ!」

「え、破瓜の血の偽装工作をしようかと」


チェックするかは分からないけどあった方がいいですよね?


「……貸しなさい」

「え」


え?どうして貴方がやるの?!


「ちょ、どうしてっ」

「どうしてはこちらの台詞だ。女性が簡単に体に傷を付けようとするんじゃない。本当に危なっかしい娘だな」

「別にこれくらい」

「絶対に駄目だ。もっと自分を大切にしなさい」

「……はい」


そんなこと言われた事がない。


「……本当に父親みたい」

「光栄だよ」


「旦那様、お風呂の準備が整いました」

「ありがとう。さて少しだけ我慢してくれ」


え、えぇ~っ?!

なぜお姫様抱っこするの?!


「な、何を!」

「しーっ、初夜の後だ。すたすた歩くのはおかしいだろう」


え、そういうものなの?だからって!


「はは、生意気な君が真っ赤になっているのは可愛らしいな」

「!」


恥ずかしいっ、後で絶対に仕返ししてやる!


「君達は下がっていい。彼女のことは私がやろう」

「かしこまりました」


え、なぜ。あなたが何をするのよ。


「ねぇ、どうして彼女達を下げたの?」

「ん?知らないのか。お風呂も夫婦の楽しむ場のひとつだ」


ギャーッ!大人って不潔!お風呂は体を洗う場所です!!


「君は……そんなに純情で、よく初夜を誘ったな。絶対に無理だったのじゃないか?」

「む、無理じゃないです!全然余裕ですよ!」


本当は無理だったかもしれない。でも売られた喧嘩は買わなければ!


「そうか。ではダメ押しの一手を追加しても大丈夫だね?」


ダメ押しって何?


「イイデスヨ」

「じゃあ、遠慮なく」


え、なんで近寄って……ちょ、首に息が!


ちゅっ


「んっ」


何、首にキスされた?なんかちょっと痛いし!


「へ、変態!娘だって言ったくせに!」

「はいはい、お子ちゃまには手を出しませんよ。とりあえずコレはキスマークな。これくらいやれば愛されている妻だと思われるだろう?」


キスマーク?信じられない!


「う~っ、このエロ伯爵!」

「ハハッ!悪かったよ。これ以上は何もしない。ゆっくり湯に浸かってくれ。あと、残念ながら私はまだ伯爵令息だよ」


悔しい!めっちゃ嬉しそうに出て行った!


鏡をそっと見る。


首すじに赤い跡がついてる。

これがキスマーク……

恥ずかしい、何これ。

こんな所に付けたら皆に見えちゃうじゃない!あ、見せる為なのよね。

妻がこんなに恥ずかしいものだったなんて、完全に誤算だわ……




「悪かった。機嫌を直してくれよ」

「……初心者相手に酷いです」

「すまない、君があんまりにも可愛い反応をするからつい」

「か!可愛いとか言わないで!」

「いや、うちの子は可愛いよ。うん」


なんで?最初の冷たさはどこ行ったの!

強面(こわもて)の癖に娘は溺愛するタイプか。


「もう黙って。コレでも食べてなさいよ!ほら」


エミディオ様の口にフルーツを突き付ける。


「え」

「ほら、あーんして」


……あら?これはおかしな状況になってないか?


侍女さんがキラキラした目で見ている。


ぱくんっ


「……美味しいよ。君も食べなさい」

「……はい」






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あはは仕返ししてるーよいね(((o(*゜▽゜*)o)))
気の強い女の子に振り回される男性、娘のように思い始めているところにほっこりします ただアリーチェさんは契約条項に白い結婚で!と書いてらっしゃったので、破瓜の血を偽装すれば対外的に白い結婚と見做されなく…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ