#3 第十六話 槍と剣の攻防
小休止を挟んで、一回戦、後半戦が始まる!
「第五試合、シリウス対ザガット!」
ユイノの掛け声が響く。
控え小屋から、二人肩を並べて入場。
アルテリアでの特訓から始まり、何度も剣を交えた仲間!花道はエール交換の場。
ザガットが声をかけ、シリウスも応える。
「本気で行くぞ!」
「おう!」
闘技場の中央で、両者向かいあう。
ザガットは大槍を突き出し、重心を低く構える。
シリウスは中型の剣を握り、右足を半歩引いた、オーソドックスな構え。
審判はサイラス。高らかに号令を放つ。
「始めっ!」
「一気カタを付けてやる!」
カンッ!カカカカンッ!
張り切るシリウス、先に仕掛ける。
剣閃が怒涛の速さで炸裂する!
だがザガットも動じない!槍の柄を巧み操り、受け流す。
「うおおおおっ!」
カキインッ!
連続技の後、シリウス、渾身の一撃。ザガット、徐々に後退する!しかし、その代償は大きかった。剣を振り下ろした瞬間、わずかに体制が乱れる。
「とおおおおっ!!」
百戦錬磨のザガットは、その僅かなスキを狙っていた!一気に右足を踏み込んで、渾身の突き、一直線に伸びる!
重心が右に寄っていたシリウス、踏ん張れない!
「うぐあっ!」
脇腹にザガットの槍が食い込む。
「一本!ザガット!!」
「おおおおっ!」
剣と槍、正面からぶつかり合う!
一瞬が勝負を分ける、極限の戦いに観衆沸き立つ。
「やべえ!焦りすぎだ!落ち着けっ!」
シリウス、脇腹を押さえながら自分に言い聞かせる。
「二本目、始め!」
審判サイラスの号令と共に、両者構える。
シリウス、呼吸を整えながらザガットを凝視。仕掛けずに、待つ。
「今度は、しっかり見極める!」
睨み合ったまま、時間が過ぎる。
鮮やかなカウンターを喰らったシリウス、慎重を期して待ちの姿勢。この展開を待っていたザガット、ジリジリと後退して、間合いを広げる。
「……!」
いつの間にか、両者の間には広い空間!
そう、この間合い、リーチの長い槍が有利!
「とおおとっ!」
雄叫びと共に、ザガットが一気に攻めに転じる!
「うおおっ!」
この間合いから剣は届かない!
ザガット、一方的な攻め、連続で槍の雨を降らせる!
なんとか間合いを詰めて、剣の届くところへ……!
しかし、主席で天才のシリウス、必死で槍をさばきながらも、冷静に考える!
カン!カンッ!
シリウスも、槍の雨を捌きながら、わずかに後退を始める。
……?
剣の間合いからますます離れる。
客席のファビアが思わず叫ぶ。
「やばいぞ!離れてる!」
剣の届かない、有利な位置に立つザガット、勝利を確信。
「これで終わりだっ!」
大きく踏み込んで、体重を乗せた渾身の突き!一気に止めをさす!
その瞬間!なんとシリウスも上半身を右にひねりながら、一気に踏み込んで前進!
その瞬間は、まるでスローモーションを見るかのよう!
槍の穂先がシリウスの脇腹すれすれを通り過ぎる。腹を覆う甲冑が吹き飛ぶ。
「……!!」
「もらった!」
飛び込んだシリウス、気がつくと、剣の間合いにザガットの巨体が!
パアアアン!
伸び切った体、無防備な胴体にシリウスの剣が食い込む。
「一本!シリウス、一本っ!」
審判サイラス、号令を発する。
「ウオオオオッ!」
鮮やかなカウンターに、大歓声が上がる。
「うおおおっ、怖かった!」
シリウス、本音を漏らす。
客席のファビアも喝采を送る。
(あのタイミングで踏み込むなんて!)
賭けに勝ったシリウス、これで五分!
「三本目、始めっ!」
わああああっ!
両者、全くの互角!熱戦に観客の熱狂が重なる。
「おおおおっ!」
「とおっ!」
三本目も、全く互角の攻防!
お互い手の内は出し尽くし、小細工なしの正面衝突!
シャッ!
カアン!
駆ける、斬る、突く!剣と槍が激しく交錯する。
間合いを詰めようと斬り込むシリウスと、鋭い槍使いで阻止するザガット。
行き詰まる熱戦が続く。
「両者、そこまでっ!」
時間が過ぎ、審判サイラスが止めに入る。
トーナメント、初の判定!
観衆も固唾を飲んでサイラスの言葉を待つ。
「勝者、シリウス!」
「おおおおおっ!」
シリウス、大歓声に右手を挙げて応える。
リスクを乗り越えて決めた、鮮やかなカウンターに勝利の女神が微笑む!
大歓声の中、シリウスとザガット、健闘を讃えながら控え小屋に戻る。
シリウス、本音を漏らす。
「あのカウンター、めっちゃ怖かったぞ!」
「あんなとこで踏み込むとか……絶対、まぐれだろ!」
「んな訳ねえだろ!」
「サイラスの判定は適当だからな!ほんとは、引き分けだぞ!」
ザガットもまた誇り高きエレニア兵!負け惜しみが止まらない……!




