#3 第九話 トーナメント開催!
カランカランカラン……
翌日、晴れ渡る空の下、開会を告げる教会の鐘の音が鳴り響く。それを合図に、グラティア湖畔の草原に村人が集まる。
第一回、収穫祭のメインイベント、ブリキ・トーナメント!
16名の参加者と、80名を超える観衆。村人のほとんどが草原に集う!
ラガルトが突貫でこしらえた会場は、簡素ながら観客席と関係者席を備え、まるで闘技場のような佇まいを見せていた。
その中央で、サイラスが高らかに開会を宣言!
「第一回、ブリキ・トーナメント開催っ!」
「おおおおっ!」
観衆が沸き立つ。
進行役のユイノが声を張る!
「一回戦、ファビア対ルビオ!」
「わあああっ!」
さらに大きな歓声が草原に響きわたる。
観客席のシリウスがファビアに呼びかける。
「ファビア、油断するなよ!どんな仕掛けがあるかわかんないぞ!」
アルテリアで数々の奇跡を起こした、カルロスの弟子たち……。今日もまた何か企んでるに違いない!
ファビアは軽く右手を上げて中央に歩み寄り、剣を構える。
一方、カルロスと、ベテラン揃いの道化師集団に鍛えられてきたルビオ。かつては威勢がいいだけの若者だったが、最近では弟子のシラバスを指導する立場になり、ずいぶんと頼もしさが増していた。その成長を、ここでぶつける!
ファビアより一回り小柄なルビオは短刀を手にして、腰をぐっと低く落として構える。
関係者席には審判のサイラス、進行役ユイノ、サポート役のメアリーが控える。
サイラスが短く号令を放つ。
「始めっ!」
いよいよビアンカ村、初のトーナメント開幕!
ファビアとルビオ、剣を構えて睨み合う。
ザッ!
「それっ!」
先に仕掛けたのはルビオ。
地を這うような低い姿勢から、一瞬で懐に入り込み、跳ね上げるように短刀を一閃!
カイイインッ!
鋭い音が鳴り響く。
ファビアは、その攻撃を冷静に受け、すぐさま横に払いのける。
フーッ!
ファビア、息を整え、一気に攻勢に転じる!
右に払いのけた剣、すかさず手首を返して左に振る!流れるような連続技。
「うおっ!」
ルビオも、素早い身のこなしで攻撃をかわす。
激しい攻防に、観衆は息を飲んで見つめる。
カアン!キイイン!キンッ!
しかし、基本技術で勝るファビアが徐々に押し込んでいく。
シャアッ!
ルビオが必死の抵抗。低い位置から、短刀を振り上げる。ファビア、半歩後退。リーチ外に一旦出て間合いをとり、そこから一気に踏み込んで、連撃で勝負をつける!
パアアアン!
「……え?」
その瞬間、リーチ外に間合いを取ったはずのファビア、鈍い音と共に、ルビオが放った一撃が腹に食い込む!
重い鈍痛とともに、サイラスのコールが響き渡る。
「ルビオ、一本!」
「おおおあっ!」
エレニア軍の指揮官に、道化師の若手ルビオがまさかの一本!
騒然とする観衆。シラバスやセレシオ、道化師たちが歓声をあげる。
「ルビオさん、すごい!」
「いけるぞ!ルビオ!」
シリウスやザガットたち元エレニア兵はファビアに激を飛ばす。
「何やってんだ!ファビア!」
「油断するなっ!押してるぞ!」
しかし、ファビアは何が起きたのか理解できずにいた。
「なぜだ、なぜ当たった……!」
チラリと視線を向けた先、ルビオが手にするのは……長剣!始めに構えた剣の倍ほどの刀身がある。
自在に長さが変わる、仕込み剣!
ルビオ、短刀のリーチを計算して踏み込んだファビアに、鮮やかなカウンターを見舞う。
それは、ベルモント城の正門でカルロスが飲み込んだ剣と同じトリック!
関係者席のユイノ。
「あれ……ルビオの剣が、伸びた……?」
メアリーが答える。
「ルビオに見せてもらった事ある!短刀の内側にも剣が仕込まれてて、自在に長さを変えられるのよ。手品用だと思ってた……!」
いきなり追い込まれたファビア!
挽回なるか!?




