#3 第七話 自分との対話
秋が迫る、とある日の晩。
訓練と仕事を終えたファビアは、夕闇せまるグラティア湖の湖畔、白樺の木の下で一人たたずむ。
(自分の体との対話……)
サイラスの放った一言を、心の中でなぞる。
スゥーッ
息を整え、静かに剣を、構える。
「はっ!」
シャッ!シャッ!ブオン!
連続して風を切り裂く音。
流れるように、剣を連続して振るう。
サイラスの言葉を頼りに、感覚を研ぎ澄ませる。やがて、自然と体が動く、不思議な感覚に襲われる。
上段、中段、下段、右、左・・丁寧に、空間の隙を埋めるように剣の軌跡が走る。
ファビアの体に流れる、偉大なるファルカンの血が導いてくれるのか……?
…………
出場者たちが鍛錬を繰り返す一方、初めてのトーナメントに向けての準備も、急ピッチで進む。
会場、ルール、司会進行、表彰など、決めなきゃいけない事だらけ!
ユイノ、セリーナ姫、メアリーたちが中心となって、運営委員会を立ち上げ、準備に奔走する。
夜のシベリアでは、サイラス、シリウスも加わって、打ち合わせを重ねる。
まず場所。やはり、それなりの平地が必要だ。グラティア湖のほとり、いつもの草原に決まる。村の建築家ラガルトに、控え室となる小屋や観客席、関係者席など、必要な施設の建設を依頼するよう取り計らう。
続いて、サイラスが慎重にルールを決めていく。安全と、鍛錬を両立できるラインを探る。
「全部で三本勝負。模擬剣の刃がヒットしたら勝負ありだ。俺とファビア、シリウスが交代で審査する。10分以上たっても勝負がつかなければ、判定だ。」
ユイノは段取りを決めていく。
「進行役は私がやるよ!そうそう、メアリー、みんなの色んな事知ってるでしょ?解説役やってよ!」
メアリーもまんざらではないようだ。
「いいけど、何の解説するのよ〜言えないコトも、いっぱいあるからねっ!」
そういう情報を広めまくってるのはメアリーなんだけど……
セリーナ姫も色々口を挟む。
「あとは前夜祭ね!そこで発表する、トーナメント表はできてるの?」
ユイノが答える。
「できてるわよ!エントリーシートも集まったし。あとは……せっかくだし、前日から露店出したいわね〜」
そんなこんなで、ざっくり色々決まってきた!




