#3 第五話 トーナメント迫る!
時折吹く風に冷たさが混じり、短い夏も終わりを迎えようとしている。
収穫祭に向けて、村の人々は、準備にせわしさを増す。
グラティア湖を望む湖畔の草原では、ブリキ・トーナメントに向けた特訓が行われる。
「全員、集合!」
朝一番、サイラスの号令で、エレニア軍全員が整列する。
「これから、トーナメントにエントリーするメンバーを読み上げるぞ!」
サイラスは、希望者を選別して、トーナメントを組み上げている。今日はまず、参加者の発表。
まずは旧エレニア軍から。
「ファビア、シリウス、ブラント、ザガット、カリオス、ジョスア、そしてサイラス!」
続いて道化師組。
「ルビオ、セレシオ、そしてシラバス!」
さらに女性陣。
「クレア姫、キャシー」
最後に、冬枯れの旅団から。
「リオネル、ライネル」
そして、締めくくる。
「あと軍以外から2名参加の予定だ。組み合わせは前夜祭で発表する。以上!」
名前を読み上げられたシラバス、ルビオと一緒にはしゃぐ。
「やったあ!」
サイラスが声高らかに指示を出す。
「トーナメント参加者は、今日から一対一の模擬戦の特訓に入る!旧エレニア軍のメンバーがついて、徹底的に基本を叩き込むぞ!」
「おおおっ!」
草原のあちこちで剣闘が始まる。
サイラスは、久しぶりにファビアと対峙する。
「いいか、お前の剣は攻撃が単発で、簡単に見切られる。連続して切り付けるパターン、"連撃"を作れ。手本を見せるぞ!」
フーッ
サイラスは呼吸を整えて、上段に構えた剣をゆっくり左下に振り下ろす。
「連撃!」
シュン!
次の瞬間!短い掛け声とともにすばやく手首を返し、左下から右下へ一瞬で剣を走らせる。
シャアアッ!
そう思ったのも束の間、すでにその剣は右下から真上に、すぐさま右上から左下へ!
↑↙︎↘︎↑↙︎
流れるような、連続した太刀筋。体の使い方に全くむだがない!ファビア、頭の中で矢印を思い浮かべて、体の流れを頭に叩き込む。
チャキン!
サイラスが動きを止め、剣を鞘に納める。
「す……すごいっ」
久々に見るサイラスの本気に、身震いする。
「やってみろ。」
ファビアも見よう見真似で、さっき頭に叩き込んだ矢印をなぞって剣を振る。
「全然なっとらん!」
どうしても、どこかで流れがとぎれてしまう。
「俺の真似をしてもだめだぞ。連撃は、決まった型がない。鍛錬を繰り返し、自分の体と対話し、自然と流れる動きを見出すのだ!」
「うう、全然できそうにない……」
思わず弱気になるが……サイラスを超えずして、どうして父ファルカンを越えられるというのだ!
(収穫祭までに、必ず身につけてやる!)
ファビアは決意する。




