#3 第三話 準備の日々ふたたび
ビアンカ村の季節は春から夏に移ろう。
国防の名の元に、さらにビアンカ村は発展する。ソルバル率いる調査隊は、村周辺の詳細な地図を記す。
ビアンカ村からまっすぐ南に下ると、ファビアたちが辿ってきた、ユピテル山脈に向かう道がある。その道中、細い道が東に伸びていた。
シモンズたちは、多くを語らないが……彼らはこの道を通って、凍てつく大地に辿り着いたのだ。ファビアたちにとっては、全くの未開の地。
東には深い森林地帯が広がり、人の出入りを頑なに拒む。細い道を頼りに、迷わないように、慎重にソルバルたち調査隊は東側の地図を埋めていく。
その地図をもとに、ラガルトがビアンカ村周辺の道を整備する。さらに拠点となる小屋を設けて、いざという時に、自在に移動できるように取り計らう。
そして、調査と並んで国防の柱となる、武の力!
エレニア軍の一同はサイラスを中心に、秋の収穫祭に開催されるトーナメントに向けて、訓練に一層熱が入る。
「模擬戦、始めっ!」
「おおおおっ!」
「やああああっ!」
今日もサイラスの号令で、ファビアとシリウスが率いる軍勢が草原で激突する。
キイイン!カン!
エレニア兵たちの剣撃の音が鳴り響く。
「とおおっ!」
「うおおおおっ!」
ザガット、カリオス、ブラントたち旧エレニア軍の主力兵は、経験に支えられた、確かな技術で戦闘をリードする。
「ふんんっ!」
「とおっ!」
新戦力、マッチョ兄弟も、荒削りだが徐々に技術も身につけ、さらに進化する!
「今日は決着をつけるぞ!」
「望む所だ!」
キイイン!カアン!
草原の中央では、ファビアとシリウスが一騎討ち!
激しく剣が交わる。
「こっちだ!横から切りつけろ!」
「わかりました!」
ルビオは、短剣をふりかざしながら、シラバスと共に戦う。素直なシラバスも、ずいぶん様になってきた!
「今日は敵同士!手加減しませんよ!」
「望むところよっ!」
今日はキャシーとクレア姫が剣と槍を交わす。
カアアン!
「てえいっ!」
キャシーもまた、ビアンカ女王を守りきれなかった、その過去に悩み続けてきた。クレア姫に、その技全てを叩き込む!それがせめてもの贖罪。
思いのこもった太刀筋。クレア姫も必死の応戦。真剣勝負のみが、武の力を高めるのだ!
ひたすら繰り返される、鍛錬の日々。
それは、新生エレニア王国の歴史を切り開いていく。




