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第十六話 サイラスの事情

シベリアに集った、ファビアたちエレニア軍の仲間たちは、シリウスの話でひとしきり盛り上がったあと、それぞれ帰路につく。

新生エレニア軍を取り仕切るリーダー、サイラスも、シリウスの幸せを大いに祝い、上機嫌で帰路につく。


――

サイラスは、集落の南端にある小さな家で、息子ニコラスと、育ての親マリー、一つ屋根の下、慎ましく暮らしている。


ビアンカ村に凱旋してから、息子ニコラスとできるだけ多くの時間を過ごすようにしてきた。そして、ユピテルに散った、妻ニコルに替わってニコラスを育てたマリーに最大限の敬意を払う。


家族であり、家族でない、不思議な関係。そして、ニコラスは10才を過ぎ、徐々に親の手を離れていく。


(この後、私たちどうなるんだろう……)

そんな考えを巡らせながら、サイラスの帰りを待つマリー。玄関に駆け寄って、出迎える。


「ヒック、ただいまっ……」

「お帰りなさい!」

玄関に駆け寄って、サイラスを出迎える。


「マリー!シリウスとクレア姫の話聞いたぞ!」

居間に敷かれたラグの上ににどかっと座り込んで、上機嫌でシリウスの事を、まるで我が事のように喜んで話す。

「……おれは、あいつは、やる男だと思ったよ!……ふが……ヒック」

そのうちに、そのまま眠りこけてしまう。マリーはそっとその大きな体に毛布をかける。



マリー、仲間を思う気持ちにあふれた、サイラスの話を微笑ましく聞く一方、複雑な気持ちにおそわれる。


(……あなたは、どうなの?幸せなの?……そして、私は……?……ニコラスで繋がった、今の関係って、……いつか終わりが来るのよ。)


マリーの頬に、一筋の涙がこぼれる。

(やだ……わたし、どうしたんだろう……)


マリーはどちらかというとおとなしくて、自分の気持ちを表に出すのが苦手。人知れず悩みを抱えてしまう。


そしてまた、サイラスも、相手の思いを察して、自分の思いを伝える事にはまったく鈍感な男。

だから、ファビアやシリウスに、そっち方面の教育が全くできてないのだ……!


その時、マリー、シリウスの話を聞いてふと思いたつ。


(そうだ!ユイノやセリーナ姫に相談しようかな……うまくいった人の話、聞いてみたいな……)





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