第十四話 プリンセスは、守りたい
「模擬戦、用意!」
実践演習に続いて、模擬戦が始まる。部隊を二つに分けて行う、本格的な戦闘訓練!ファビアとシリウスが、それぞれの部隊を率いる。
「戦闘開始!」
「おおおおっ!」
「突っ込めぇっ!」
カキイイン!カアアンッ!
サイラスの号令で、両陣営が激突する。草原に兵士たちの雄叫びと、模擬剣のこすれあう音が響き渡る。
シリウスは、初の模擬戦となるクレア姫を気遣う。
「クレア姫!俺から離れずに、後方で支援に徹しろ!」
そう叫びながら、迫る敵兵をなぎ倒していく。
さすが歴戦の勇者シリウス!クレア姫の前では普段はグダグダだが、戦場では一味違う!
しかし、ファビア陣営も、一歩も引かない。そして、マッチョ兄弟を全面に立てて、徐々に押し込んでゆく。
「ふんっ!」
ライネルが、巨大な斧を振り回しながら、シリウスに迫る。
ブオン!
そして、風を切る音と共に、シリウスの頭上に斧を振り下ろす!
「うおおっ!あぶねえ!」
ガアアアアン!
シリウスの剣が、鈍い音と共に、斧をすんでの所で受け止める。
ズザザザザッ!
カキイイン!
「くっ……!」
ライネルの恐るべきパワー、シリウスは剣を弾き飛ばされ、バランスを崩して後退する。
ライネルが追撃しようと振りかぶったその瞬間!
「シリウス!あぶないっ!」
クレア姫が、ライネルとの間に割って入る!
「とおっ!」
低く短い掛け声と共に、槍をぶんぶん振り回す!
「おおおっ!」
長いリーチから繰り出される、鋭い攻撃にライネルは対応できず、徐々に押し込まれる。
「退け!いったん下がるぞ!」
ファビアが号令を出す。シリウス陣営、クレア姫の活躍で戦況を再び五分五分に押し戻す!
「そこまで!」
サイラスの号令で、模擬戦終了となる。
ハア、ハア、ハア、
「今回は、引き分けだなっ…!」
死力を尽くしたファビアとシリウス、草原にへたり込んで、健闘をたたえ合う。
「シリウスっ!」
その時!クレア姫がシリウスの前に駆け寄り、槍を構えて声を張りあげる。
「シリウス!……わたし、決めた!わたし、あなたのコト、守りたい!……これからもずっと、守りたい!」
「え……えええ、え!?」
シリウスの目がまん丸に!
「きゃはははは!言っちゃった!……キャシー、帰ろっ!」
タッ、タッ、タッ!
そして、キャシーを従えて村へと駆けていく。
「…………」
シリウスは、瞬く間に小さくなるクレア姫の背を呆然と見送る。
ファビアが、耳打ちする。
「……ええと、なんか…うまくいった…のか?」
シリウス、ぶつぶつと返す。
「確か、俺が……クレア姫を"支える"っていう話だったけど……」
ファビアが問い詰める。
「なんか、クレア姫がお前を"守る"コトになってるぞ!……ぷ……ぷぶっ、情けねえ!」
「うるせえっ!」
「ぶははははっ!」
「わはははっ!」
予想外の展開に、思わず笑いが込み上がる。
それはさておき……エレニア軍に、マッチョ兄弟とクレア姫、強力な戦力がやってきた!




