第十一話 ビアンカ女王の面影
翌朝、今日もエレニア軍の訓練が始まる。
参加者たちは、思い思いの装備で村から草原へと移動する。
「ふんふんふん〜ドはど根性のド〜、レはレモン汁のレ〜」
そんな中、なんかご機嫌なセリーナ姫は、今日も変な鼻歌を歌いながら道端をほうきでお掃除中。そこに、シリウスがおっきな槍を携えてやってくる。
「セリーナ姫!おはよう!」
「……それは何?」
「女王様の槍!これを、クレア姫に渡そうと思って!」
挨拶を交わした後、早々にシリウスは道の先にある、クレア姫の家を訪れる。
手にするのは……オレンジ色の装飾が施された、立派な大槍。穂には木製の剣が付いているが、取り外して刀剣に差し替える事もできる。
それは、ラガルトに頼み込んで、特別にあしらえた、女王ビアンカの槍!
「おはよう!」
シリウス、クレア姫の部屋に着くなり、ひざまずいて大槍を差し出す。
クレア姫が戸惑いながら尋ねる。
「え……これは……」
「女王様の槍!受け取って、欲しいんだ。」
クレア姫、ひざまずくシリウスに、静かに歩み寄り、大槍を手に取る。遠い記憶が、鮮明に蘇る。
長い柄は、鮮やなオレンジ色をまとう。槍を手に直立する、凛とした母親、偉大なる女王ビアンカの面影が駆け巡る。
「お母さま……」
クレア姫の眼に、涙が浮かぶ。
シリウスが、優しく手を差し出す。
「さあ、行こう。」
「……うん!」
クレア姫、深くうなずいて、シリウスの手を取る。
シリウスとクレア姫、手を取りあって、エレニア軍の訓練に向かう。サイラスが与えた指令、ここに完遂!
「おはよう!」
「おはようございます!」
すれ違う村人と、明るく挨拶を交わす。
「え……と……なんか、はずかしいかも……」
大丈夫、もう、村の人はみんな、知ってるから!




