第七話 白樺の木の下で
作戦会議の翌日、その日はちょうど休日。いよいよWデート作戦が幕を明ける!
最初の関門は、ふさぎ込むクレア姫を連れ出すコト。これは、セリーナ姫に秘策があった。
「キャン!キャン!キャン!」
セリーナ姫が腕に抱えるのは、道化師ルビオから借り受けた、白いちっちゃな犬、カール!
「お姉さま!」
勢いよくクレア姫の部屋に飛び込む。
「……?!」
「キャン!クゥーン」
「か……かわいい……」
セリーナ姫の腕の中で目いっぱい甘えるカール。
クレア姫の顔がほころぶ。
「ルビオのトコの子…いきなり、どうしたの??」
セリーナ姫、大げさに困った表情を浮かべる。
「ルビオに頼まれちゃって……このあと、散歩に連れてかないと……お姉さま!一緒に行きましょう!」
「……え…ええっ!?」
「ちょっとは気晴らしになるわよ!行きましょ!」
「……うん!」
クレア姫の表情に明るさが戻る。
ここまでは上出来!
一方、ファビアとシリウスの男性陣。
収穫祭が終わり、時折通り過ぎる冷たい風が、冬の訪れを感じさせる。グラティア湖はいつもと同じく、満面の水をたたえて若者たちを見守る。
そんな湖のほとり、白樺の木の下で、二人並んで湖面を眺める。
ファビアがつぶやく。
「来るの、早すぎたかな……」
約束の時間は、正午の鐘がカランカランと鳴る時。
張り切って、早起きしてやって来た二人、美しい湖面を眺めながらぼんやり過ごす。
ここぞとばかりに、ファビアは質問攻め。
「そもそもさ、どうしていきなりクレア姫の事好きになったんだよ……、」
シリウスが回想する。
「おれも、ただの幼馴染だと思ってた……でも、ベルモントの取引所で、一瞬だけ眼が合った!その時の、彼女の眼が忘れられなくて……」
ファビアが続ける。
「なんていうか……困難に耐え抜く、強い眼!……オレは、あんなに強くなれるのか、ってその後ずっと、自分に言い聞かせて……」
……
「そして、強くなって、絶対にクレア姫を守りたいって……思ったんだ。」
ファビアが言葉を重ねる。
「……お前は主席で天才、十分強いし、クレア姫を守ることもできる。……でも、オレの考えはちょっと違う。」
その言葉に、シリウスは首をかしげる。
「え……?」
ファビアの言葉に力がこもる。
「おれは、自分の不甲斐なさに何度も打ちのめされた……仲間の命さえ、守れなかった。」
……
「でも、みんなが支えてくれて、先に進めたんだ。」
ファビアがさらに、語りかける。
「守ろう、なんて思わなくていい!お互い、支え合う、大事な、特別な人になる!それでいいんじゃない?」
シリウス、深くうなずく。
「……!……ほんと、そのとおりだ……」
ファビアが畳みかける。
「今日は、まず謝って、それから、その気持ちを伝える!それだけだぞ!」
さらに肩を強く叩いて激を入れる。
「こんな北の果てに、立派な村を作って……さらにプリンセスまでやってきて……天才のお前がいなかったら、絶対できなかった!自信もてよっ!」
シリウス、何度もうなずく。
「……ありがとう、ファビア!」
そうこうするうちに、約束の正午が近づく。




