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第六話 戦禍の草原

帝国軍の残兵は、南側の斜面を散り散りに駆け上がり、後退していく。


「帝国軍が逃げるぞ!」

エレニア兵の1人が歓喜の声を上げる。


しかし、数々の敵を打ち倒して、すり鉢の底に辿り着いたファルカン将軍は、釈然としない。

敵の将軍、エルゲンの姿を全く見ないのだ。

勝利は目前、追撃すべきだが……

何が起きてるのだ?

違和感の正体は?


次の瞬間、ファルカン将軍は叫ぶ。

「全軍!進撃やめい!」


南側の丘の上に、エルゲン将軍率いる1万人ほどの、無傷の軍隊が突然現れ、底にいるエレニア軍を見下ろしていた。


完全に逆を取られた!

エルゲン将軍は、敵の策に備え、あえて一万の兵を動かさずに待機させていたのだ。

 

一斉に、エルゲン将軍率いる帝国軍が坂を駆け降りる。


しかし、戦力差はわずか!

ファルカン将軍、迎え撃つ!


「おおおおおっ!」

「やああああ!」


兵士たちの、咆哮と怒号が怒涛のように押し寄せる。

すり鉢の底で、壮絶な戦いが続く。

もはや戦略も戦術もない。

ただ、目の前の敵を、倒すのみ!


初戦での犠牲を、最小限にとどめたエレニア軍の総勢、7千人。対する帝国軍、1万人。


周りに広がる血の海。

日が落ち始め、空までも赤く染まる。


悲しいかな、最後の最後、このわずか3千人の差が勝敗を決する。


1人、また1人、エレニアの兵と、帝国の兵が倒れてゆく。そして、徐々に帝国軍との人数差が顕著になる。


夕刻、エレニア軍は、もはや数百人。対する帝国軍は2千人。

エレニアの兵士は、敵に囲まれ、加速度的に減っていく。

ファルカン将軍もついに、敵兵に囲まれ、進退極まる。

一斉に帝国軍の刃が体を切り裂く。


「エレニア王国、永遠なれ!女王よ、永遠なれ!」

エレニア軍、歴代最強の将軍ファルカン、壮絶な最期。


将を失ったエレニア軍は、散り散りになって退却する。

エルゲン将軍は、体制を立て直し、残兵2千人を率いてエレニア城に、一気に進軍する。



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