第五十一話 ベルモントからの脱出
エレニア兵、一斉に裏門へ走り抜ける。
門はかぼちゃの山車で塞がれている。
山車の正面にある扉を開けて、中に逃げ込み、扉を閉じる。たちまち中はエレニア兵で一杯になる。
「逃すな!叩き壊せ!」
ガン!ガン!ガンッ!
すぐに追いついた敵兵が山車を囲んで、激しく剣を打ち付ける。しかし、銀貨をはたいて鉄の板を張り巡らした特注の山車、ハリボテではない!
とはいえ、堅牢な山車もそう長くは持たない。
山車を取り囲むエルゲン、業を煮やして命令する。
「ええい!倒してしまえ!!」
「おおおっ、おおっ、おおっ!」
車輪は取り外してあるので、簡単には動かない。残兵総出で、かぼちゃを倒しにかかる。
ガクン!
山車の床が傾き始める。
「おいおい、どうするんだよ!」
薄暗い山車の中でファビアが叫ぶ。
カルロスは暗い中手探りで、何かを探している。
ガチャン!
「魔法をかけたと言いましたよね。」
なんと!反対側にも、小さい扉を仕込んであったのだ。裏側の小さな扉が開き、光が差し込む。
「さあ、逃げましょう!」
カルロス最後の仕掛け、全て計算通り!
どう見ても魔法じゃないけどね!
「そのまま押し倒せ!」
エルゲンの号令のもと、シャフタルの残兵は山車を取り囲んで攻め立てる。
「おおっ、おおっ、おおっ」
ギギギッ!
鈍い音と共に山車の床が浮き上がる。
「うおおおっ!」
ズシャッ!
浮き上がった山車が、元に戻る。堅牢な山車、簡単には倒れない。倒しきれない。
カルロス、ファビア、サイラス率いるエレニア兵全員、扉から出て城の裏に降り立つ。
「ファビア!カルロスーっ!こっちだ!」
「おおっ!ルビオ!」
先に扉から裏に抜けていたルビオたち道化師、楽団員たちは、馬を奪ってかき集め、ファビアたちの脱出を待ち構えていた。
「ファビア!こっちだ!」
「ケガ人は先に乗せろ!」
「カリオス!動けるか?乗れ!」
サイラスの部隊は激しい戦闘で皆負傷している。
手際よく、十数騎ほどの騎馬に全員乗り込む。
ルビオの背につかまりながら、周りを見回して全員の騎乗を確認したファビア、高らかに命じる!
「全員、北へ!北へっ!進めえーーっ!」
「おおっ!」
一斉に北へ抜ける街道を駆ける。
「ティグレ!こっちだ!」
カルロスが叫ぶ。
ティグレも馬と共に疾走する。
プリンセス奪還、そして奇跡の全員脱出!




