第四十六話 【曲あり】葬送の隊列
カランカランカラン……
シャフタル中の教会に取り付けられた鐘。
普段は控えめに一度だけ鳴る鐘が、この日だけは朝から何度も、何度も鳴り続ける。
今日はいよいよ、シャフタルの大祭、そして決戦の日!
アルテリアの中心街にある、大きな広場。
広場はまるで色とりどりの絨毯に覆われているかの如く、色彩あふれる隊列、山車、楽団で埋め尽くされている。
中心街を臨んでそびえ立つアルテリア城。
シャフタル帝国、ルーサー王は、広場を見下ろす城壁から、高々と祭りの開始を宣言するのだ。
「ルーサー!ルーサー!」
「偉大なる王!」
喧騒の中、ルーサー王が現れる。今年の大祭は、東の大国と戦禍を交える、国威発揚の場でもある。
ルーサー王は高らかに宣言する。
「今日は、我々シャフタル帝国が、大陸統一に向けて踏み出す、記念すべき日だ!」
「祭りの隊列と共に、シャフタルの兵士は整然と東へ向かう!」
「全ての兵士と、民に祝祭を与えよ!」
「おおおおっー!」
「シャフタル万歳!」「帝国万歳!」
ルーサー王の掛け声に、大衆が湧き上がり、大祭の幕が上がる。楽隊の行進曲が一斉に鳴り響き、色とりどりの隊列と山車が、一斉に動き始める。
今年、いつもと違うのは、大通りを東へと行進するシャフタル軍の隊列。その大軍は東へ向かう大通りを途切れなく連なり、沿線の民たちは惜しみない激励の言葉を投げる。
広場の北西、端っこで息をひそむように構えるエレニアの隊列。
「進め!ベルモントへ!」
カルロスの合図で、楽団の行進曲とともに、山車が北西へと向かう大通りを進み出す。
ファビアたちは、山車の中で息を潜め、小窓から外の様子を伺う。
「戦争だ!東の大国と。」
「うちらには好都合だ。軍の主力は東に向かう。ベルモント城は手薄なはず!」
耳打ちするファビアに、シリウスが応える。
……
その時!ファビアが思わず声を上げる!
カッ、カッ、カッ、カッ
なぜか、20騎ほどの騎兵隊が、東へ向かわずに、カルロス達の祭列を追い抜いてベルモントへ向かう。
「シリウス!ベルモントへ向かう騎兵隊がいる!」
「なんだと!」
シリウスも小窓から騎兵隊の姿を覗き見て、愕然とする。シャフタルの兵装は、群青色でまとめられている。しかし、通り過ぎた兵士は黒装束。
……
それは、罪人を処刑するための、葬送の隊列。実際に目にする事はほとんどないが、それは有名な噂話だった。
ファビアがシリウスとサイラスに耳打ちする。
「まずいぞ、黒装束だ!」
そして、それは、明らかにエレニアの姫たちを処刑するための隊列!
……葬送の隊列!
その噂を聞き、カルロスたちはベルモント城の周辺に見張りを置き、黒装束の隊列が城に入らないか常に監視していた。だがそんな隊列は一度も現れず、それは逆に姫たちが処刑を逃れていることの証明でもあった。
しかし、しかし、よりによってこんな日に!
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
……
祭列の先頭で、ティグレと共に観衆を沸かせながら進むカルロスの横を、黒装束の騎兵隊が通り過ぎる。
即座に状況を察したカルロスも、愕然とする。
急げ!
カルロスは、祭列の速度を、怪しまれないように徐々に上げていく。かぼちゃの山車は音を軋ませながら、遠ざかる騎兵たちの背中を追う。
ーーーー
いよいよ、物語はクライマックスに突入します。
エレニアの民たち、悲願達成なるでしょうか・・!?
この後、クレア姫たちの待つ地下でのお話を挟んで、決戦の幕が開けます。
それから、祭列の進行をイメージしたテーマソングを用意しました。宜しければ、文章と合わせて一聴頂けると幸いです・・!
「プリンセス奪還」
https://suno.com/s/Zoj8rjY0tsCVkcJ4
作詞:さくらまりお
作曲:suno(AI)




