第四十ニ話 戦術極まる
冬が訪れ、寒さは厳しさを増す。
ただし、アルテリアは元々温暖な気候。
凍えるような寒さ、という程ではない。
河原でのファビア達、戦術訓練はあの日を境にがらりと様相を変える。
部隊の半分を仮想敵に回し、様々な場所に配置して模擬戦を行う。入場から救出、脱出まで一連の動きを何度も繰り返す。
今日はファビアが全軍、シリウスが仮想敵を率いて模擬戦を行う。
正門からファビアの軍勢が侵入。
「全軍進撃!」「両翼展開!」
一気に左右、正面に展開。
…………
「誰もいないぞ。」
中央の部隊、先頭のルビオがつぶやく。
すばやく、姫たちに見立てた人形を抱えて裏に抜ける。
「戦場は裏庭だ!姫たちを守りながら戦闘準備!」
中央、城の場所には、板組みの仮設小屋が設置され、中は見えないようになっている。
一方、右横から裏庭に抜けたファビア。
「誰もいない……主戦場は地下か?」
しかし、すぐに人形を抱えた中央の部隊、左翼の部隊も合流する。
ファビアが叫ぶ。
「シリウス!どこにいるんだよ!」
ルビオが駆け寄ってファビアに助言する。
「ファビア!よくわかんないけど、裏門までガラ空きだぜ!すぐ脱出しようぜ!」
「おう!全員、裏門へ!」
全部隊、裏門の位置に引かれた白線を越える。
「今回は楽勝だったな!」
先行するルビオが振り返ろうとした時!
「全員進撃!」
ファビアの号令とともに、河原の茂みに隠れていたシリウスの部隊が、一斉にファビアの部隊に襲いかかる。
ファビアは慌てて応戦。
「ち……ちょっと待った!!ここ城の外だぞ!」
「そんなの関係あるか!」
カン!カンッ!
ファビアの部隊は総崩れ、剣も飛ばされ、成すすべなく敗退……
その晩、全員いつもの酒場に集まり、ひとしきり飲んで騒いだ後……
サイラスを中心に、どの場面で、どう動くべきだったか、徹底的に話し合う!
……飲む前に話した方がいい気もするけど。
ファビアがほろ酔いで愚痴る。
「シリウス……あれは反則だよ〜。」
「何言ってんだよ!そこで油断しちゃダメだろ!」
シリウスも反論する。
カルロスが口を挟む。
「シリウスの言う事もわかります。退路を確保するのも、結構きちんとやらないと……」
「そうだ。増援部隊が裏門に駆けつけるかもしれない。」
「サイラス、どうする?」
議論が熱を帯びる!こんな時に頼りになるのは、やはり経験豊富なサイラス!
「う……ううん……ヒック、、」
サイラス、めちゃ酔ってる……
ファビアが肩を揺さぶって、耳元で話す。
「サイラス、退路の確保はどうすればいいんだ?」
…………
「ん……んあ?、たいろ……」
……
「いちいち相手にしてらんねえからよ、馬でも奪って、さっさと逃げればいいんだよ!……ヒック!」
一同、顔を見合わせる。
「おいおい、何か、もうちょっとないのかよ!」
「はははっ違いねえ!」
笑いが起きたあと、ファビアが適当にまとめる。
「よし、決まりだ!プリンセスを奪還したら、すぐに逃げる。」
皆も適当に盛り上がる!
「おおおうっ!」
……
「あ、あと、カルロス!厩舎は右側にあるはず。もし馬がいたら、山車を動かす時に、合わせて確保してくれ。」
「わかりましたぞ、お任せあれ!」
大祭まで、残り30日……!
最後に思い付きで出した指示も、当日、重要な役割を果たします。全ての準備が結果に繋がるのです。
いよいよ物語はクライマックス、もうしばらくお付き合いください。




