表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

第四章 冬枯れの旅団

実りの秋が過ぎ、エレニアは冬を迎える。

蓄えは豊富で、冬でも民が飢える事はない。


「ううう……さむいよお」

祭りはとうの昔におわったが、広場の片隅に、まだ王室のかぼちゃ屋はなぜか店を構えていた。

姉妹も、従者たちに混じって、時折パイを焼き、北風吹き荒ぶ中、店に立つ。


クレア姫とセリーナ姫は、まだまだ遊びたい盛り。


「うう〜っ、どうして祭りも終わったのに、こんなにはたらかなきゃいけないのよ〜」

しっかり者のセリーナ姫は、不満たらたらのクレア姫をなだめる。

「お姉様……母上から聞いたのですが……なんでも、"こっかよさん"っていうのが足りなくて、パイをたくさん売らないといけないんだって」

「それ、いくつくらい売ればいいの?」

「ええと……五万個、くらい?」

「ええ〜っ!そんなの無理、無理!」


女王ビアンカの冗談を間に受けた、トンチンカンなやり取りに、周りの従者たちは思わず吹き出す。


「クレア姫〜、セリーナ姫〜」

そんな時、か細い声で姫を呼ぶ声。

振り返ると、将軍ファルカンの息子、ファビアが立っていて、姫たちに話しかける。

ファビアと姉妹は幼なじみ、なんでも話せる仲だ。


「え……っと、今日、父上がいなくて、1人で国境を見回ってたら、この人たちに出会って……」


ファビアの後ろには……20人くらい、だろうか。

ぼろぼろの服をまとい、寒さに身を震わせる一団がいた。


「ど……どうしたらいいかな……??」

ファビアは頼りなさ気な、か細い声で尋ねる。

「もしかして……冬枯れの旅団!」

セリーナ姫が,思い出したようにつぶやく。


エレニアは東西を大国に囲まれた立地。

南北は、険しい山が立ち並び、人が足を踏み入れるのは容易ではない。

しかし、はるか北めがけて、一本の細い道があった。

そして、その先には、わずかながら、人が住む里もあるという。


北国の生活は厳しく、特に一面が凍てつく冬は、常に飢えの危機にさらされる。

そして、冬を越せないと判断した時、里の一行は命懸けで冬の道を下り、エレニア王国にやってくる。


彼らはエレニアの民ではないが、慈悲深い女王ビアンカは、常に彼らの事を気にかけていた。

そして、彼らを「冬枯れの旅団」と呼び、冬を越せるだけの施しを与えるのだった。


女王ビアンカは、その話を繰り返し娘たちにも聞かせていて、それを思い出したセリーナ姫は、彼らに最大限の敬意をもって接する事を決める!

あ、クレア姫はその話、すっかり忘れてたみたいで、ずっとポカーンとしてたけどね!


そのうち、旅団のリーダーと思われる初老の男が語りかける。

「私の名は、シモンズと申します。北からやって来ました。今年の寒波は例年より激しく、なすすべなく、エレニアにやって参りました……」


セリーナ姫は、一行を城内の暖かい部屋に招き入れ、クレア姫やファビア、従者たちにテキパキと指示を出す。

「暖かいかぼちゃのスープ、それから、日持ちのする食べ物、それからパイも、あるだけ持ってきて!」

皆大忙しで、旅団をもてなす。


シモンズたち北の一行は、暖かいもてなしに涙する。

そして、リヤカーにたっぷりの食料を積んんで、再び北へと帰ってゆく。



もっと後のことですが……

彼らもまた、エレニア王国の運命に関わるのです。

その話は、もう少し、お待ちください。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ