表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/123

第三十八話 絶望のプリンセス

希望の光差し込むファビア達。

全てのピースが揃い、後は練度を上げるのみ。


その一方……ベルモント城のクレア姫たちには、絶望の闇がさらに迫りつつあった。


「追加注文だ。20個」

看守が告げる。あれからも、パイを届ける日はたまに訪れる。

その度に、胸が高鳴る。

また、ファビアやシリウスが、たっくさん注文して……「一言でいいから、今度こそは、何か気の利いた事言って欲しいよっ!」


しかし、その期待は毎回裏切られる。

訓練に邁進するファビア達には、囚われのプリンセスたちを気遣う余裕も、再びパイを買い占める銀貨もなかった。


もう期待しない。それでも期待する。

カートを押す。取引所の小屋に入る、その一瞬に僅かな希望を乗せて。


すばやく、部屋を隅から隅まで目を走らせる。

そして、この日も、同じように落胆のうちに、小屋を出て地下に戻る道をとぼとぼと歩く。


名残惜しかったのか、ふと、何気なく後ろを振り向こうとした時……

クレア姫も遂に目にしてしまう。

真新しいロープが括られた、絞首台。


今まで、何となく感じていた死の影。

でもそれは漠然としたものだった。


それが今、はっきりと姿を現し、クレア姫を闇の底に引きずり込む。

「!!」

頭で考えるより先に、全身が反応する。

「……あ……あ」

短いうめき声。体がかたかたと震える。

思わず、地面にうずくまってしまう。


「さっさと歩け!」


看守の怒号が飛ぶ。

必死で、体を起こして、ふらつきながら地下へ戻る。


……きらい、だいっきらい!

ファビアも、シリウスも、だいっきらい!

…………なんできてくれないの!


…………こわい、こわい……こわいよ……

……しにたくない!ぜったい、いやだ!


いろんな感情が、津波のように押し寄せる。

必死に耐える、耐える。


シャフタルの大祭まで、140日……!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ