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第三十四章 両翼陣形ふたたび

一夜明けた早朝、ファビアたちは酒場に集まる。

大祭まで、およそ180日。

時間がない!歴戦の副将サイラスを中心に、地図を囲んで作戦を立てる。


城の構造は割と単純だ。


正面から先に進み、城内に入ると、すぐに大広間。

その奥に謁見室と玉座、その脇にある階段をおりると、地下室に辿り着く。


階段を降りた先は、短い廊下の突き当たりに扉。

そして、扉の先に大きな地下室。ここが作業場と思われる。祭が始まる時間には、クレア姫たちは、独房から出て、ここに居るはず!


作業場の奥には、もう一つ扉があり、その先には廊下。その両脇に、小さな部屋がいくつか並んでいる。おそらく、そこが独房に改装されてるのだろう。


イラストを見ると、扉はすべて木製のようで、叩き壊して進む事はできそうだ。


そして、さらにその廊下を進むと、再び階段がある。ここを登ると、北側、城の裏手に出る。



裏手には、いくつかの小屋、馬の厩舎、あと北西の壁に沿って絞首台が並ぶ。絞首台はこの地図には描かれてないが、シリウスは鮮明に位置を覚えており、地図に書き加える。


地下はほぼ、2〜3人通れるほどの、それほど広くない廊下、一本道のシンプルな作り。

地上は中央に本丸の城郭、その両脇に広めのスペースがあり、そこから裏に抜ける事ができる。


処刑場を通り過ぎて裏門に辿り着く。

ここから北へ一気に抜ける。


北の山道から東に入れば、アルテリアやエレニアの市街地を避けて、ビアンカ村へ通じる道に合流できる。



ファビアは地図を眺めながら話す。

「単純な構造だ。作戦もシンプルに。全員で一斉に正面から地下に入り、姫たちを救出して、そのまま裏に抜け、裏門から脱出する。」


シリウスも賛同する。

「そうだな。おそらくうちらの方が人数が少ない。固まって一直線に抜けるべきだろう。さらに、厩舎から馬を奪えたら最高だな。」


腕を組み、じっと話を聞くサイラス。

二人の話を一通り聞いた後、口を開く。


「部隊を分けるべきだ。」

ファビアは驚いた表情で顔を上げる。

サイラスは続ける。


「狭いんだ。地下の廊下が。敵も地下に固まると、渋滞する。そうなると、戦局が読めなくなる。」


サイラスは地図を指差して説明する。


「まず、部隊を3つに分ける。右翼、左翼、そして中央だ。両翼は一斉に裏めがけて走り、退路を確保。」

地図を指しながら説明する。


「さらに右翼、左翼の先陣は、裏の階段から地下に入り、中央の部隊に合流、地下にいる敵兵を挟み撃ちにする。」


エレニア伝統の両翼陣形!こんな所でも使えるのか!しかし、シリウスが反論する。


「確かに、方法としてはそれがベストだ。しかし、リスクが高すぎる。俺たちの勢力は、大半が素人の道化師集団だ。彼らは器用だが、集団で複雑な戦術をこなすのは難しいぞ。」


サイラスは静かに二本指を立てる。

「その通りだ。この作戦を成功させるポイントが二つある。一つは、戦力。プロの兵士があと10人は欲しい。左右に3人ずつ、中央に4人。」

「もう一つは?」

「スピードだ。左右の部隊がいかに早く展開できるか。これが、両翼陣形の成否を分ける。」


確かに、ファルカン軍は、右翼サイラスたちの素早い両翼展開で、5万人の帝国軍をわずが8千人で勝利まであとわずか、に迫った。

「しかし、スピードが足りないと、分散した部隊は個別撃破され、失敗に終わる。」


ファビアの背筋が引き締まる。そして、応える。

「この作戦は、絶対に失敗は許されない。確実に実行さえできれば、両翼陣形のほうが成功の確率が高いように思える。」


そこで、カルロスが口を挟む。

「それは私も同意します。しかしサイラス、教えて欲しい。どうやって、二つのポイントをクリアするんですか?」


サイラスは続ける。

「まず一つ、戦力。これは、俺に任せてくれ。心あたりがある。」

カルロスが尋ねる。

「二つめ、スピードはどうしますか?正直、うちの連中にこなせる気がしません……」

サイラスが、力強い口調で答える。

「大祭まであと180日。俺が鍛える。大切なのは、身体能力じゃない。基礎体力だ。」


カルロスは力を込めて応える。

「私たちは、何でもやりますぞ!」


「頼りにしてるぞ!」


カルロスとサイラス、固い握手を交わす!



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