表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/42

第三十章 有能すぎる市長

首都アルテリアのとある酒場。

有能すぎる市長、ルドルフ。

彼は今日も、庶民の様子を視察するため、市場の酒場に繰り出す。そこで、風変わりな男が酔ってるのを目にする。


「ヒック!うう……俺は、ダメな男だ……」

大柄でがっしりした体型の中年男が、一人で飲みながらくだをまいている。


やたら、声がでかい。


ひどく酔ってるのか、大声で泣きながら独り言を繰り返している。

「ヒック、おれは〜草原の戦いを生き延び!命からがら……生き延び、ヒック、首都アルテリアに命がけで潜伏してるのだ……」

周りの客は、絡まれないように彼を避ける。


「それがどうだ!姫の場所すらわからない!……ヒック、俺は……ううう……」


勝手に、一人で泣き崩れる。


有能なるルドルフ、彼の発した「姫」という言葉が妙に気になった。酔っぱらいの一人言、と言えばそれまでだが……


ルドルフは彼のテーブルにツカツカと近寄り、隣のイスに座って、酒を注文する。


そして、親しげに話しかける。

「おやじさん、すごく酔ってるね。」

「ヒック、だれだ?……とりあえず、かんぱいだ!」

酒の満ちたグラスがカチンと鳴る。


「さっき姫の場所が……とか言ってたな。誰か探してるのか?」

「そうだ!……今は亡きエレニア王国の姫、クレア姫。おれは、……草原の戦いを辛くも生き延び……、極秘でアルテリアに忍び込み、密かに助け出そうと、、して、ふんとうしてるのだ!」


……

店中に響くほどの大声で、何かものすごくぶっちゃけてるんだけど……!

ルドルフは目を丸くする。

いやいや、計算なのか?周りの人達は、酔っ払いのたわごと、誰も信じてないようだ。


ルドルフは尋ねる。

「さっきの話、本当か?お前は何者だ?」


「おれは、元エレニアの副将、サイラス!」


「!!……草原の戦闘で戦死したはずでは?」

「その通り!俺は一度しんだ……!でも命からがら生き延び、アルテリアで潜伏、してるのだ!、ヒック」


ルドルフは驚きを隠せない。

エレニアの名将ファルカン、その右翼を務める副将サイラス!生きていたのか!

……そして、こんなに酒癖が悪いのか……


「なのに!……なのに、手がかりさえつかめない!なんて俺は……無能なんだ……ヒック、、」

さらに酔っぱらいの一人言は続く。

「おい!お前!、聞いてるのか!」

「あ……ああ」

さすがのルドルフもなんか、圧倒されている。

「いいか!よく聞けよ!……これは、極秘任務なんだ!……ぜーったい、帝国に知られてはいけないんだ……!」


帝国軍幹部、アルテリアの市長ルドルフ。もはや黙ってうなずくしかない……


サイラスがひとしきり語り終えて、落ち着いた所で、ルドルフは席を立つ。

去り際に、そっと耳打ちする。

「……西地区の、道化師たちが住む路地裏、そこの酒場に行け。」

「……!」

サイラスの目に、一瞬鋭さが挿す。


有能すぎる市長ルドルフ。彼はすべて見抜いている。

彼もまた、密かに推しの女王ビアンカのために、あえて見逃す。


酒場から城に戻る帰り道。サイラスに付き合わされて、珍しくほろ酔いのルドルフ、独り言をつぶやく。


「エレニアの戦争はとっくに終わってるんだ。今さら彼女たちを処刑してどうするんだ……ヒック」

千鳥足で、大通りをよたよた進む。


「奴らも、これで準備ができるはず。観光書に見立てた地図まで作った。大祭まで、姫たちの処刑はなんとか食い止める……ヒック」


そして、真剣な顔つきで空に向かって叫ぶ。

「俺ができるのは、そこまでだ。あとは頼むぞ、ファビア!」


そして、いきなり登場した、伝説の副将サイラス!

情報を引き出すための、一世一代の名演技!……なのか、ただ酒癖の悪いおやじなのか、よくわかんないけど……


そして、この出会いとルドルフの計らいは、ファビアたちの計画、最後のピースとなる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ