第二十八章 準備の日々
次の日の朝、拠点でファビアとシリウスは話し合う。
ファビアが口火を切る。
「とにかく、ベルモント城に姫たちがいる事は確実になった。急いで準備を進めよう。」
「ああ、俺はもう少し詳しい情報を集める。特に……侵入するのは至難の業だ。何か方法がないか……」
ファビアははっとして、問う。
「そういえば、クレア姫に話しかけたんだろ?何か有益な情報はなかったか?」
「いや……それは……」
「昨日は動揺してて、あんま詳しく聞いてなかった!どんな話したんだ??」
……
「え……と……このパイ、やきたてですか、って聞いた……」
「え!?え!?」
ファビア、がくんと肩から崩れ落ちる。
「そのあと、少し微笑んで、すぐ奥に連れもどされた。」
「な……なんだよそれ!」
「突然だったんだよ!」
「もっと何かあるだろ!侵入できそうな裏口ない?とか聞けよ!」
「バカか!兵士に囲まれてるのに、そんな事聞けるかよ!」
どうやら、二人とも、年頃の女子にかける言葉のセンスはゼロのようだ……
それ以来、シリウスはパイを食べる時、必ずやきたてですか?って色んな人に聞かれて、いじられる事になる。
気を取り直して、議論を続ける。
ファビアが眉をひそめて話す。
「俺は戦力を当たる…… といいたい所だが、全然心あたりがない。道化師のみんなも助けてくれると思うが、戦争は素人だ。」
「それは難しいな……でも、カルロスのように、エレニアから逃れてる人はもっといるはずだ。」
「そうだな、市場とか探してみるよ。」
こうして、準備の日々が過ぎる。まもなく夏が過ぎ、秋が近づく。次の大祭まで、およそ200日ほど。