第二十三話 カルロスの情報
首都アルテリアから西のはずれ、小さな家がぎっちり立ち並ぶ路地裏に、傾いた日が差し込む。
その一角にある、古びた酒屋も、賑わい始める。
ファビア、シリウス、カルロスの三人は奥の部屋に移り、さらに話し込む。
「ビアンカ女王は、路頭に迷っていた我々に芸の仕事を与え、さらに収穫祭を先導するという、重要な仕事を下さりました。」
カルロスは力を込めて話し続ける。
「我々に仕事だけでなく、誇りまで与えて下さった……その恩に報いなければいけません。」
ファビアが答える。
「私は女王から、エレニアの民を守るという、最後の勅命を、受けている。共に進もう!」
ファビアとカルロスは、再び固い握手を交わす。
プリンセス奪還に向けて!
しかし、北の辺境で過ごしていたファビアたちは、アルテリアの状況がつかめていない。
シリウスが尋ねる。
「俺たちは、何も知らないんだ。カルロス、すまないが色々教えてくれ。」
カルロスはうなずく。ファビアが尋ねる。
「クレア姫たち、囚われた王室の人たちはどこにいるんだ?そもそもだが、生きてるのか?」
息を呑んで、カルロスの言葉を待つ。
「大丈夫、生きてます。アルテリアの北西部、ベルモント城の地下に幽閉されているはず。」
「信頼できる情報か?」
シリウスが尋ねる。
「我々の一座は総勢20名。道化師に扮して、アルテリア中で芸を披露しながら情報を集めています。皆、女王に忠誠を誓う、信頼できる仲間です。」
「20名!そんなにいるのか。」
「そのうちの一人が、ベルモントの商人が毎朝、市場でパンプキンパイを売ってるのを見つけました。」
ファビアが声をあげる。
「パイ!もしや……」
「その通りでございます。それこそが、王国のパイ!クレア姫が焼き上げるパイ!商人に聞くと、彼女たちは、ベルモント城の地下に幽閉され、役務として調理品や工芸品を作っているといいます。」
ファビアが応える。
「その商人に会えるか?ベルモントに行こう!」
「市場に行けば会えるでしょう。明日案内しましょう。くれぐれも怪しまれないようご注意下さい。」
それが一番心配なのよね……
その晩、カルロスの手引きで、ファビアとシリウスは拠点となる小さな小屋を借り、そこで夜を過ごす。
ベッドが二つ並んだ寝室と、同じくらいの大きさの居間。寝る前に、居間のテーブルを囲んで二人は今後の事を話し合う。
シリウスが口を開く。
「まずは情報だ。ベルモント城の構造、警備体制、作業部屋の位置、周辺の地図など、基本的な事が知りたい。」
ファビアが言葉を重ねる。
「その後は戦力だな。最低でも30人くらい必要だろう。どこで手配するか……」
シリウスはうなずき、さらに続ける。
「そうだな。それらが揃った時点で侵入ルート、脱出ルートの計画を立てる。」
ここで、シリウスは提案する。
「基本は二人で動きたいが、あまり時間もかけられない。担当を決めよう。俺は情報を優先して集める。お前は、戦力を探してくれ。」
「それは名案だ。そうしよう。」
「……先は長いな。明日から忙しいぞ。今日はもう寝よう。」
こうして、ファビア達の計画が始まります。
プリンセスたちの処刑が迫る中、様々な運命が再び交わり始め、それが彼らに進む力を与えます。
そのお話は、もうしばらく続きます……




