第十六章 ビアンカの名を冠して
北の大地、冬枯れの旅団が拠点とする村に辿り着いたエレニアの旅団。
ファビアとシモンズは今後の事を話し合い、この村で力を合わせて暮らしていく事を確認する。
シリウスはさっそく、生き延びた23名の仲間を再編し、役割ごとのグループとリーダーを決める。
サルバドールと、ニコルを失ったが、半年の旧拠点での生活を経て、二人の知識は十分に受け継がれている。
それから、さらに時が過ぎ……
3回ほど冬を越しただろうか。
エレニアの民の技術と知識は、村の暮らしを劇的に変える。特にヤザン、ルバートの狩猟、農耕の技術は村の食糧事情を改善し、冬でも飢える心配がないくらいの蓄えを得る。
サルバドールの役割を継いだ、ラガルトという青年も建築に奮闘し、冬の嵐に耐える堅牢な住居をこしらえる。
ニコルの役割を継いだ、マリーという女性はエレニアの郷土料理を持ち込み、食卓に彩りを添える。
そして、彼女はニコルに代わって、ニコラスの成長を見守る。
村の長であったシモンズは、エレニアの民の献身に感謝し、ファビアは自分たちを受け入れてくれた事に感謝する。
両者の絆は、村に大いなる発展をもたらす。
そんなある日、シモンズが提案をする。
「この村には、名前がないのです。」
ファビアははっとする。
「そういえば。冬枯れの旅団、は女王ビアンカが勝手に付けた名前だし、村の名前っぽくない…」
「我々は落ち延びてきた日から、その日暮らしに凡殺され、この地への誇りなど全くなく、名前さえ付けてこなかったのです。」
「そ……それは切ない」
「しかし、あなた方のおかげで、見違えるように整備され、我々も、この地への誇りを持ちつつあります。」
「それはよかった!じゃあ……」
「そうです、この村に名前をつけたいのです。」
ファビアは思いつきを口にする。
「ビアンカ!この村の名は、偉大なる女王の名前を勝手に借りて、ビアンカにしよう!」
その会話を聞いてたシリウスが吹き出す。
「マジで?いいのかよ!」
「この村の名はビアンカだ!どっかから文句が来たら、また変えればいいよ。」
「そんな適当な……」
シモンズは恐縮しながらも、答える。
「女王の名前を冠するのは、最大の名誉。村人たちも喜ぶでしょう!」
「よし、決まりだな!」
こうして、エレニアのはるか北、ユピテル山脈を超えた辺境の地に、ビアンカ村が爆誕したのでした。
ずいぶん時が経ちましたが……
この後、舞台を変えまして、アルテリアで暮らすクレア姫たちの話に、少しお付き合いください。