#3 第二十話 二回戦開始!
一回戦全試合が終わり、場内は小休止へ。
闘技場は熱戦の余韻に覆われ、観衆たちのざわめきが、絶え間なく澄んだ青空を駆け巡っていた。
ユイノは、関係者席の脇にある掲示板に貼り出してある、トーナメント表を書き換える。
ブリキ・トーナメント
<二回戦>
ファビア×ライネル
キャシー×サイラス
シリウス×カリュート
リオネル×クレア姫
関係者席で、ユイノが後半戦を振り返る。
「カリュート、凄かったわね!」
メアリーも同意。
「ホント、想定外だったわ!」
「メアリー、カリュートの情報は何か持ってないの?」
「そうね……普段あまり外に出歩かないみたいだし……」
「そうだよね……でも、シモンズとはずっと長く一緒にいるみたいよ。」
さすがのメアリーも、老剣士の素性は伺えない。
「今度、シベリアに来てもらって、色々聞こうよ!」
ユイノが提案する。
「うーん、酒場に来るタイプなのかな?」
いぶかしむメアリーに、ユイノから意外な情報が。
「カリュート、きっと酒好きよ!何度か、配達に行った事あるの。」
「ええっ、そうなの?面白そう!今度呼ぼう!」
……
そして、話題はやっぱり、あの人へ!
メアリーが声を弾ませる。
「いやあ、やっぱり、一番のサプライズはセリーナ姫ね!すんごい盛り上がった!それにしても、どうしてずっと隠してたのかしら?」
「そ……そうね……」
ユイノが目をそらす。
(隠してたんじゃなくて……表に書き忘れてただけなのよ……)
まあ、セリーナ姫も、前夜祭の晩……串焼きに夢中で、トーナメント表が空欄になってるの、全然気づかなかったけどね!
……
その頃、一回戦を終えた控え小屋。
初めてのトーナメント戦、みな高揚感に包まれる!
なんといっても、話題の中心はセリーナ姫!
控え小屋の面々が、次々と声をかける。
サイラスも、セリーナ姫の戦いを絶賛!
「いやあ、凄かったぞ!しかも、誰にも言わずに極秘で鍛錬するとは!」
セリーナ姫、頭をポリポリ書いて、照れる。
(いや、別に隠してたつもり、ないんだけど……)
そのあとは、キャシーとクレア姫を交えて女子トークが花開く。
セリーナ姫、クレア姫にエールを送る!
「優勝したら、教会の無料券使えるわよ〜」
「いやいや、優勝とか無理よ!つぎはあのマッチョ男だし……ていうか、ファビアはどうなのよ?」
ギクリ!
「いや、いや、心配しなくても、どっかで負けるから!」
キャシーが、思わず割り込む!
「二人とも、景品に動揺しすぎです!……と……とにかく、私とクレア姫は、試合に集中しましょう!」
色々と賑やかな控え小屋!
「んぐんぐ、肉団子、うまいな!」
ファビアとシリウスは、出張してきた露店で買ったお弁当をひたすら食べる!
カリュートは、なんやら、小屋の隅でマッチョ兄弟とヒソヒソ話。
昼食を挟んで、午後からいよいよ二回戦!
試合開始の時間が迫り、サイラスが呼びかける。
「一回戦、どれも素晴らしい試合だった!ここにいる全員、力の差はわずか!勝ち残った者は、全力で戦おう!」
「おおおっ!」
賑やかな控え室から一転、ピンとした緊張感が張り詰める。
「ファビア、ライネル、行くぞ!」
「おう!」
セリーナ姫、ファビアに声をかける。
「私負けちゃったから……私の分も頑張ってね!」
「任せとけ!」
第一試合の審判、サイラスの号令で、皆揃って闘技場に向かう。
いよいよトーナメント二回戦、開幕!