輪唱
どうしてもだんだんぐちゃぐちゃになっていく。
それぞれの言葉が、あちこちから聞こえてくる。
まるで聖徳太子になることを求められているような、10人の声どころじゃない人数の声が自分の耳には届いていた。
幻聴だっていうことはわかっている。
ただ、たくさんの人の叫び声が、耳を貫いて心に留まる。
助けたい、でも助けられない。
それが自分の心をさらに引き裂いていく。
何もすることができない無力感は、それでも叫び声で上書きされていく。
ただただ叫ばれる世の中であっても、自分はそれをどうにかしたい。
だからこそ、何かをしたかった。
何もできなかったけれども,志だけはあった。
ただ、それ以上動くことができなかっただけだ。