見るに目の毒触るに煩悩③
天乃は真新しい日記帳に手を掛け、取り出した。その時、視界に入ったのは、古ぼけた人形だった。身代わり人形だ。左眼の釦は取れていた。
『んあ?何で此処に身代わり人形があるんだ?』
其の人形は処処綻びていて、使い込まれているのが理解る。
『どう云う事だ?』
日記帳を開こうとした時だった。天乃のスマホが着信を告げていた。画面には、【七瀬紗希】と表記されている。
『おっ…。きたきた。』
「はい。水無月です。」
「七瀬です。天乃さん。生贄様から逃れられる方法が解りました。其れで明日、都合が合えばお会いしませんか?」
『逃れられる方法が解った?赤羅様な罠だなぁ…。面白そうだから良いけど…。』
「はい。大丈夫ですよ。何処に行けば良いですか?」
「えっと…。とりあえず、此の前の部室倉庫で待ち合わせしましょう。あっ…。出来ればで良いのですけど、一人で来る事は出来ますか?生贄様が他の人に取り憑くのを避けたいので…。」
『信じてる人には有効なんだろうなぁ。』
「解りました。1人で伺います。」
「では。明日、よろしくお願いします。」
「こちらこそお願いします。」
通話が終わる。窓の外は夕焼けに染まっていた…。
『もう、こんな時間か…。日記帳は後で視る事にしようかな…。』
天乃は手にした日記帳を鞄にしまうと、またアクアリウムへと視軸をずらした。
3匹の蘭鋳がユラユラと泳いでいる。
『オランダ獅子頭だったかな…。』
其の頭部の肉瘤は隆起している。水の光に反射して蠢いている様にも視えた。




