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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
幽霊 視てはいけないモノ
97/106

見るに目の毒触るに煩悩③


 天乃は真新しい日記帳に手を掛け、取り出した。その時、視界に入ったのは、古ぼけた人形だった。身代わり人形だ。左眼のぼたんは取れていた。


 『んあ?何で此処に身代わり人形があるんだ?』


 其の人形は処処ところどころ綻びていて、使い込まれているのが理解る。


 『どう云う事だ?』


 日記帳を開こうとした時だった。天乃のスマホが着信を告げていた。画面には、【七瀬紗希】と表記されている。


 『おっ…。きたきた。』


 「はい。水無月です。」

 「七瀬です。天乃さん。生贄様から逃れられる方法が解りました。其れで明日、都合が合えばお会いしませんか?」


 『逃れられる方法が解った?赤羅様な罠だなぁ…。面白そうだから良いけど…。』


 「はい。大丈夫ですよ。何処に行けば良いですか?」

 「えっと…。とりあえず、此の前の部室倉庫で待ち合わせしましょう。あっ…。出来ればで良いのですけど、一人で来る事は出来ますか?生贄様が他の人に取り憑くのを避けたいので…。」


 『信じてる人には有効なんだろうなぁ。』


 「解りました。1人で伺います。」

 「では。明日、よろしくお願いします。」

 「こちらこそお願いします。」


 通話が終わる。窓の外は夕焼けに染まっていた…。


 『もう、こんな時間か…。日記帳は後で視る事にしようかな…。』


 天乃は手にした日記帳を鞄にしまうと、またアクアリウムへと視軸をずらした。


 3匹の蘭鋳らんちゅうがユラユラと泳いでいる。


 『オランダ獅子頭だったかな…。』


 其の頭部の肉瘤は隆起している。水の光に反射して蠢いている様にも視えた。

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