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憂鬱な天国 Ⅰ 幽霊  作者: 倉木英知
幽霊 視てはいけないモノ
95/106

見るに目の毒触るに煩悩①


 「我儘を言ってすみません。」

 天乃は頭を下げていた。


 良いのよ。星月さん。貴女が来てくれて、息子も喜んでいると思います。と、笠原かさはら瑞穂みずほは涙を浮かべている。


 「息子が使っていた部屋は、まだその儘にしてあるの。もしかしたら息子がふと帰って来る様な気がしてね…。」


 天乃は笠原の家に来ていた。仏壇に挨拶を済ませると笠原かさはら慎二しんじの部屋で感傷に浸っていた。


 辺りを見渡すと、机の上のアクアリウムが視界に入った…。天乃が以前に訪れた時には、そのアクアリウムは無かったと記憶している。


 『蘭鋳らんちゅうか…。』


 アクアリウムの中で3匹の蘭鋳が優雅に泳いでいた。パクパクと口を開けては閉じて、閉じては開けている。


 『水槽とアクアリウムの違いって何だったっけ?あぁ。そうだ。水槽は【生き物を1番に考えた】より良い環境を追求し、生き物を飼育観察、時に研究する為のモノ。アクアリウムは美しいレイアウトを組み華やかに演出したり、ネイチャーアクアリウムの様に自然界の美しさを再現したり、インテリア性が高い水槽を作り、水槽全体を1つの作品として楽しむモノだったかな…。』


 それにしても…。と天乃はアクアリウムを覗き込む…。


 「このレイアウトのコンセプトは何だろ?何か…。独特だな…。退廃的だ…。」


 天乃の視界に映るアクアリウム。水没都市を再現しているのだろう。廃墟と化したビルの模型が幾つかいびつに建っている。倒れかけた信号機。壊れている自動販売機。硝子が砕けた自動車。


 「あれれ?」

 天乃は少しだけ左に頭を傾げる。


 中央にあるビルの屋上には…。

 小さな小さな人形が置いてあった。


 1つ気付くと意識は変化する。


 ビルの隅にも、自動販売機の裏にも…。

 倒れかけた信号機の傍らにも…。

 そして…。自動車の中にも…。

 小さな小さな人形があった。


 5体のミニチュア人形だ。

 凝視して観察すると…。

 総ての人形の左眼は消されていた。

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