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ラプラスの悪魔②
天乃は瞳を閉じて、記憶を取り出す。
「【ラプラスの悪魔】とは古典物理学の分野で、因果律に基づき、未来の決定性を論じる時に仮想された超越的存在の概念だよ。因果律とは、原因と結果の関係、何事にも原因があるとする原理を指す。簡単に云えば、原因となるであろうモノを完全に把握出来るのであれば自ずと結果を知る事になるって事なんだが…。」
天乃は言葉を遮断した。
「ん?どうしたの?」
「あぁ…。【ラプラスの悪魔】は死んでいるんだよ。」
「死んでるってどう云う事?」
「言葉の儘だよ。生き続ける事は出来なかったんだ。量子論が【ラプラスの悪魔】を殺したんだ。古典物理学では説明出来ない矛盾した現象があったからだよ。量子力学…。ヴェルナー・カール・ハイゼンベルクって云うドイツの理論物理学者が唱えた不確定性原理では、素粒子の正確な速度と位置は同時に決定する事は不可能となっている。確率的な挙動をするからだね。だから…。【ラプラスの悪魔】も正確に予測する事は出来なくなったんだ。完全には把握出来ないからだ。」
少し…。難しいかも…。と神木は言葉を漏らした。
「まぁ。未来を知る事は誰にも出来ないって事だ。誰にもね…。ってな事で振り出しに戻ってしまった訳なんだが…。」
うーん。と、また声は重なった。




