生贄様解体新書②
「お前は黒山羊だったのか…。」
あたしは人間だったけど…。と、そんな天乃の言葉を聞いた伶音は弱冠引き笑いをしている。
「そうやって、ある程度イメージされた【生贄様】に、具体的な意味を持たせる為に、あの3枚のカードが必要だったのかもな…。より深く想像させようとして…。」
「3枚のカード…。」
「【殺された後に供えられた物】【供えられた後に殺された物】【殺されずに神域で飼われた物】の3枚のカードだ。生贄は大体、その3つに分けられている…。」
んでだ…。と天乃は云い。伶音の瞳を覗き込む…。
「もしも、お前が生贄にされるとしたのなら、3種類から、どれを選ぶ?」
「そうだとしたのなら…。【殺されずに神域で飼われた物】が良いかな。」
「何で?」
「何でって言われても…。だって死なないんでしょ?生贄にされても殺されないんだから…。」
おっ。偉い偉い。と天乃は手を叩く。
「んじゃぁさ。何で殺されないと思ってんの?」
「ん?だって、そう書いてあるじゃん。」
「んだな。って事は、その言葉の意味が解っているからソレを選んだんだよな?」
「そうだよ。当たり前じゃん。」
天乃はニヤリとする。
「そう。言葉の意味が理解るからこそ選べるんだよ。言葉には魂があるとされている。言霊だな。言霊。ソレこそが【生贄様】の正体だ。」
「ごめんなさい。解らないです…。」
ぐはっ。と天乃は感情を漏らす。
「言葉の意味が理解るのなら其処から想像する事が出来るだろ?想像は軈て創造へと至るんだ。言葉も薬の様なモノなんだよ…。つまり人を生かす事も殺す事も可能って事。んでだ。【生贄様】には姿と名が与えられた。そして…。ソレが禍々しく善くは無いモノと認識されているのだとしたら、人に害を為す存在に成り得るのだよ。」
そして此処からが恐ろしい。
と天乃は1呼吸置き…。
「姿と名を得たモノが恐怖の対象となるのなら、ソレは人の心に取り憑く。そうするとだ…。パニックになったり、意識を失ったりする。」
と云った。
それから辺りを見渡してベンチを見つけると天乃は腰を掛け、鞄から白い紙と黒ペンを取り出し、【生贄様】で使っていた図面を再現したのだった。




